FMエアチェックの普及で、いちばん困っているのはレコード会社。放送されるいい曲は片っ端からカセットに録音、さらにこれをダビングしてエアチェックできなかった友人に与え合うのがヤングのあいだで最近はやっているので、ますますレコードは売れない。この傾向は英国あたりでも同じらしく、この春だか、家庭でFMをエアチェックする者からも著作権料を徴収すべし、といった意見がおこり、邦貨に換算して年額何億円だかがこれでレコード会社に還元されるはずだと、くわしい数字をあげて論じた記事が出ていた。
その後、まだ実現をみないようなのは、いつどのように徴収するかという方法論に問題があるためらしいが、何にせよレコード会社は、いまやつらい立場に置かれている。もちろん、好きな曲の好きな部分は、レコードならそこへ針をおろせば直ぐ鳴りだす軽便さにくらべ、テープは「頭出し」がいかに精巧につくられたデッキでも、巻きもどしや早送りにまだるっこい手間をかけねばならない。また放送されようとされまいと、本当に好きなミュージシャンやアーティストのレコードはファンは買うものだから、まったくレコードが売れぬわけではないが、そういうのは爆発的人気のある歌手もしくは演奏団体のレコードに限られてしまい、平均にならすと、売れないレコードの数のほうが圧倒的に多くなる。
レコード会社はそこで、まずミリオンセラーのレコードを作り出さねばならず、クラシックでいえば、それはすぐれた演奏であるよりは何か話題を提供してくれるレコード、ということになる。LP初期の素敵だったころにくらべると、いまや堕落しきった俗物でしかないのに、話題に富むカラヤンのレコードなら売れる、というわけだ。テレビの普及で、歌唱力はド素人に近いピンクレディーのレコードが爆発的に売れたのと現象は似ている。そういうレコードにかぎって、しばしばFMでも放送される。となると、FMによってぼくらはいまや下手くそな、あるいは堕落した音楽に耳を毒され、真にすぐれたアーティストの演奏からどんどん遠いところに置かれることになりはしないか。これは喜ぶべきか悲しむべきか。