九月末(一九七九年)に来日して、東京文化会館小ホールでリサイタルを開いたソ連の若手ヴァイオリニスト、ウラジミール・スビバコフの演奏曲目――シューベルトの「幻想曲ハ長調」が、伴奏者も同じボリス・ベフティエレフで昨年(一九七八)秋、ブダペスト音楽週間にリスト音楽アカデミー大ホールで演奏された。その収録テープが八日(一九七九年十月)のNHKFM(夜八時五分)の「海外の音楽」でオンエアされる。スビバコフといえば、いま一人の新進クレメルにまさるとも劣らぬ音色のきわめて優美で品のいいヴァイオリニストだと私は思っているし、シューベルトの「幻想曲ハ長調」は大変わかりやすい佳品だから、来日リサイタルを聴きのがした人にもぜひ聴いてもらいたい。初来日したヴァイオリニストの演目を、一年前のコンサートの演奏で楽しめるというのも、想えばFMの有難さだ。
もう一つ、十日の同じNHKFM「ライブハウス」でルドルフ・ゼルキンの弾く「ピアノ協奏曲第五番皇帝」が聴けるのもクラシック愛好家には楽しみな時間。ゼルキンはかつてアドルフ・ブッシュ(ヴァイオリン)とともに純正ドイツ的ともいうべきベートーヴェンを聴かせてくれた。もうかなりの高齢(七十六歳)で、この巨匠のタッチにも、衰えはかくせないが、またいまさら、「皇帝」でもあるまいという気もするが、ケンプとともに現存する最後のベートーヴェン弾きが「皇帝」をどう演奏するか、野次馬根性でもいいから一聴をすすめる。ついでにいうと、この日の番組で、先に同じベートーヴェンの「交響曲第二番」がある。あのフルトヴェングラーでさえ第二番を指揮することは滅多になかった。(ウィン・フィルを振ったフルトヴェングラーの「ベートーヴェン全集」でこの第二番だけはやっと最近、レコードになって全集は完了した。)
ドイツですらあまり演奏される機会のないのは、要するに他のベートーヴェンの交響曲ほど傑出していないからだが、一度はどんな曲か聴いておくのもいいだろう。
NHKFMのそれは指揮が来日中のギュンター・ヴィッヒ。たいへん現代的な感覚でクラシックを聴かせる指揮者と老巨匠の組合せ、あるいは傑出しない交響曲がどんなふうに鳴るか、これまた楽しみ。