各メーカーの今年(一九七九年)上半期の営業内容をみると、従来はオーディオ市場の主流だったシステム・コンポーネントに代わって、モジュラー・ステレオの進出が目立っている。業界筋がまとめた出荷台数は、前年比約七〇パーセントの伸び率だそうだ。
 モジュラー・ステレオとは、プレーヤー、アンプ、スピーカー、カセットデッキなどを一体化し、昔でいうコンソール型ステレオふうにまとめたもの。操作が簡単で、各パーツの接続コードを間違える心配もないから、専門知識に疎くとも手軽に扱えるし、カセットデッキの内蔵でFMエアチェックなども簡単。さらに各パーツをデザインのうえでも統一してあり、コンポシステムのように異様なアンプやスピーカーが並んでインテリアをぶちこわすことはない。値段も十四、五万円
(一九七九年九月現在)と手ごろ。
 最大の利点は音質のよさにある。モジュラーの場合、アンプやスピーカーをさらにいいものに替えることはできないが、じつはアンプやスピーカーだけをグレードアップしても音質の向上は微々たるもの。よくなったというより、単に変わっただけというケースのほうが多い。レコードやFM音楽にはあらゆる楽器、音程の音が入っていると考えられ、その再生にどのようなスピーカーやアンプでも、その機器特有の美音を出すものであり、機器をグレードアップすれば別な美音を聴けるかわりに前の音の魅力は失せる。
 綜合的には、もちろんグレードアップされたものは美音の音域も広がるものだが、これには全体的なハーモニーや音域のバランスを考慮しなければならず、パーツの一部をよくしたぐらいでは、たとえばピアノであれば、その高い音域だけがよくなるので、極言すれば、高い音と低域ではピアノ自体の音色が違い、二台のピアノを左右片手ずつで弾く感じになる。パーツにも相互の相性があるからで、その点もモジュラーは各メーカーのサウンドポリシーで統一されているから、ハーモニーの美は乱れない。むしろこのほうが音楽を聴くには無難だと思っている。モジュラー賛成である。