デジタル・レコーディングによるいわゆるPCM録音のレコードは、すでに日本コロムビアで方式が開発され、日本でも発売されてきた。ダイナミックレンジの広さ、そのSN比において従来の録音方式では望めぬ迫真力と、音の鮮明さを聴かせてくれ、オーディオ愛好家の注目の的ではあったが、憾むべくは演奏家に第一流のアーティストが少なく、これはレコード会社の専属制度にもよるのだが、本当にPCMで聴いてみたいレコードは案外見当たらなかった。
ところが最近、英国デッカが独自にデジタル方式を開発、デッカ専属のアーティストやオーケストラによるレコードの発売に踏み切り、すでにその二枚が国内盤(キングレコード)でもだされて関心を集めている。ウィーン・フィルによる「ニュー・イヤー・コンサート」とメンデルスゾーンの「交響曲イタリア」の二枚だ。さっそく、拙宅で聴いてみたが、こちらの再生システムが管球アンプによる旧式なスピーカー・エンクロージャーのためか、思ったほどによくない。しかし知人宅の最新トランジスターアンプによる米国製スピーカー(JBL4350)あたりで鳴らすと、まことに音ののびといい、ソノリティの自然さといい、従来のレコードではとうてい聴くことのできぬ迫力で鳴った。トランジスターアンプやこれに適合したスピーカーシステムは、いまや米国製をまたずとも国産品で十分その音質を確保できるし、コスト・パフォーマンスという点では、むしろ日本製が優位ともいえるわけだから、今後、デジタルでのすぐれた海外演奏家のレコードをきわめて良質な音で、一般家庭の人にも聴けるようになるだろう。慶賀の至りである。
英国デッカが発売して、これが人気を得たとなれば、いずれはドイツ・グラモフォンや米国RCAあたりもデジタル・レコードを売り出すに相違ないし、つまりはあらゆる世界一流のアーティストのレコードをいま以上に鮮明な音色で鑑賞できるわけだから。オーディオの前途にはまだまだ楽しみが用意されている。