アメリカのオーディオ雑誌に、ずいぶん日本メーカーの広告が幅をきかせて載っている話は紹介したが、サンフランシスコで、なにか目新しい品でもあれば買って帰ろうと思い、一流店を教えてくれと知人(アメリカ人)に頼んだら、彼いわく、きみを満足させるほどの製品は現在、アメリカのどんな一流店へ出向いても見いだすことは困難であろう。行くだけ無駄だから止めたまえ、と。しかしわれわれには野次馬根性というものがあり、無いなら無いで、はたしてどんな品物を店頭に並べているか、見ておきたいと私は言った。値段の問題もある。たとえば二年前(一九七七年)渡米した折、ワシントンで、マークレビンソンのプリアンプJC2(邦貨六十万円)が千ドルだった。当時の換算率一ドル=二百九十円としても、日本の半値で入手できる計算で、海外旅行にはそういうタノシミもあるんだから、といったわけだ。そこで知人はサンフランシスコでも一、二といわれる専門店を紹介してくれたが、さて行って驚いた。
なるほどこちらの食指の動くようなものはぜんぜん置いてない。それはいいとして、心外だったのはマークレビンソンのアンプや、デバイダー(ネットワーク)を置いてないどころか、買いたいが取り寄せてもらえるか、といったら、日本人旅行者には売れない、と店主の答えたことである。なんでも、マークレビンソン社から通達があって、アンプの需要が日本で圧倒的に多いので、製品が間に合わない。米国内の需要にすら応じかねる有様だから、小売店から注文があってもいつ発送できるか、予定がたたぬくらいなので、国内(アメリカ人)の需要を優先させる意味からも日本人旅行者には売らないようにしてくれ、そういってきている、というのである。旅行者に安く買われたのではたまらない、そんな意図もあるのかと思うが、聞いて腹が立ってきた。いやらしい商売をするものだ。マークレビンソンという男、もう少し純粋なオーディオ技術者かと考えていたが、右の店主の言葉が本当なら、オーディオ道も地に墜ちたといわねばならない。少なくとも以後、二度とマークレビンソンのアンプを褒めることを私はしないつもりだ。