近ごろ高級マニアのあいだで声価の定まりはじめたものに、米国マークレビンソンのモノラルアンプがある。市販価格八十万円。モノラルだからステレオ用に二台必要で、百六十万円。これで引き出せる出力は二十五ワットだ。ピュア(純)A級アンプといわれるものだが、それにしても二十五ワットのステレオアンプに百六十万円も、どうしてかかるのか。理由はスイッチング歪みにある。
 トランジスターアンプは、スピーカーを駆動するための電力増幅を行なうものだが、シングル動作(トランジスター一本)ではパワーがとれないので、プッシュプル方式(二本以上のトランジスター使用)を採用する。その際、効率を上げようとすると、生じてしまうのがスイッチング歪み。一種のアクのようなもので、熟練した耳にはまことに不快な音色で、私などどうしても、この石(トランジスター)のアクが抜けないからトランジスターアンプは好きになれないのだが、この歪みを除去する方式としてTAクラスUシステムがある。でも効率がいちじるしくわるく、パワー当たりの価格がベラボウに高くなる。すなわちマークレビンソンの高価な所以であるが、最近、これを改善した――効率よく、経済的にスイッチング歪みをとる――方式としてTニューAUクラスアンプが作り出された。
 これだとマークレビンソンのTピュアAUクラスほどでないにせよ、価格もぐんと安くなり、たとえばビクターM7050は、百五十ワットステレオで二十五万円。エクスクルーシヴが百ワットで二十八万円。テクニクスV10だと、これはプリメインアンプだが百二十ワットで十九万八千円。一般家庭でステレオを楽しむのにアンプだけ二十万円以上とは、贅沢かも知れないが、百六十万円にくらべればずいぶん安いといわねばならない。しかもスイッチング歪みは明らかに減少し、その分、確実に音はよくなっている。今後アンプを購入する向きには推奨に足る製品といえる。

(製品価格は一九七九年五月現在)