いつぞや紹介したメタルテープだが、ぼつぼつマニアに使われだしている。しかしメーカー各社の規格は一応統一されたものの、製品にまだバラつきがあるようで、いますぐメタルテープに切り替えるのはやめたほうがいい。たしかに、メタルの音質は刮目に価するし、とくに高域のダイナミックレンジなど、これがカセットかと目をみはるほどだが、メタルの真価を満喫するには、じつはデッキを替えた程度では意味がなく、そもそもアンプ、スピーカーシステムのダイナミズム駆動が優秀でないと、虻蜂取らずになりかねない。なぜなら、カセットで音を楽しむ程度の装置では、その手軽さ(価格も含めた)にこそコストパフォーマンス的味があるので、その程度――といっても音楽を家庭で楽しむには十分だ――なら、音を増幅するコントロールアンプで高域を操作すれば、メタルとそう大差ない高音は聴けるからだ。
もちろん、メタル対応の高性能ヘッド(センアロイやユニクリスタルなど新素材を用いた特殊なもの)を装備し、どんなテープを装填しても、そのテープの特性(バイアス・レベル・イコライザー)を自動的に検出・調整し、そのテープのもつ最大限の周波数特性、歪率、SN比、ダイナミックレンジなどをマイクロ・コンピューターで引き出すオート・テープセレクター機構を備えた、F特が二十〜二万ヘルツというオープンデッキ並みのすぐれた製品も発売されている。しかしこの価格二十三万円は、いってみればホームユースのオープンデッキでも値の高い部類に入るだろうし、使用するメタルテープも、たとえばMA―Rで二千円となると、なんのための軽便さかということになる。ましてや、重ねていうがこうしたメタルテープの真価を発揮させるには、かなりハイレベルなオーディオ装置が必要だ。
メタルテープ、これに適応するデッキとも、まだ開発されたばかりで、今後いっそう低廉化され、性能もさらに優秀になるだろう。それから使用しても遅くはないので、いま、まったく新たにカセットを聴く人は別だが、そうでないなら、当分、現在つかっているもので十分だろうといっておく。
(製品価格は一九七九年五月現在)