「ペール・ギュント」といえば、グリーグの作品と知らぬ人でも、おそらくメロディの片端ぐらいは聞いているだろう。まあそれほどポピュラーな曲だが、通俗的と言い棄てるには惜しい名品である。もとはイプセンの詩劇のために作られた音楽で、全二十三曲から成っていたが、後にグリーグはこのなかから最もすぐれた四曲を選んで「第一組曲」とした。T朝の気分UTオーゼの死UTアニトラの踊りUT山の魔王の殿堂でUの四曲だが、いずれも北欧民族の抒情性とその雪景色を彷彿させる名曲だ。また「トゥオネラの白鳥」は、「悲しきワルツ」や「フィンランディア」とともに、シベリウスのものでは最もよく知られている。なかでも「トゥオネラの白鳥」は、これまたフィンランドの民族伝説に基づいてシベリウスの作曲した「四つの伝説曲」中の小曲で、TトゥオネラのレミンカイネンUTレミンカイネンと少女UTトゥオネラの白鳥UTレミンカイネンの帰郷Uから成り立っており、最もシベリウスらしい愁いをたたえた秀作だ。
十四日(一九七九年五月)NHKFM「音楽のすべて」(午後一時)では、そんな「ペール・ギュント」第一組曲と「トゥオネラの白鳥」「英雄レミンカイネンの帰郷」、さらには同じシベリウスで「カレリア」組曲が聴ける。いずれも北欧の音楽家でなくては作れぬ作品で、日本のあわただしい日常にいて北ヨーロッパの雪のなかに生まれた伝承や英雄の物語を聴くのもわるくないだろう。ぜひ耳を傾けてほしい時間である。
ほかにNHKFMでは、今週(一九七九年五月第二週)はライブでルートヴィヒスブルク音楽祭――ベルサイユ宮殿を夢みてドイツの王侯が造らせたというルートヴィヒスブルク宮殿の音楽祭――からT二重奏の夕べUと題してフルートやギターの数曲がオンエアされる。ベートーヴェンのチェロ・ソナタやバッハの作品(これはチェンバロ独奏)も放送されるが、私がすすめたいのは右の北欧の小品集だ。とくに主婦たちに、家事をしながら気楽に聴いてもらいたい。