録音ずみのテープは、オープンリール、カセットを問わず、長らく放置すると、バンドブレーク(無録音状態)の部分やピアニシモのところで、ヘッドの当たる個所とは関係ない、その一回転前後の音がかすかに、混信状態で聞こえることがある。何様、テープが厚さ数ミクロンというきわめて薄いベース面に磁性粉がふってあり、これが、いわゆる転写現象を起こすからだろう。このため録音したテープは時折、巻き戻してから聴く必要がある。私も十年余、海外の有名な音楽祭はほとんどエアチェック。こんど古いのを聴き直してみたのだが、意外なことを発見した。
転写ではない。録音当時とは別のデッキで再生してみると、信じられないくらいうまくとれているのだ。いま使用しているのはプロ機種のスチューダーC37。さすがに世界の名機で、レコーディングされた音は実に鮮明に鳴る。ところで、録音したもののなかには国産デッキを使用したものがあり、その後、テレフンケンやルボックスでとったのとくらべると、かなり音色に差があった。やっぱり国産はあかんなあと思ったのだが、それがスチューダーで聴くとまことにスッキリとしたいい音なのだ。明らかにルボックスよりまさっていた。
本来、テープサウンドは録音した同じデッキで再生するのが最も歪みなく、うまく鳴るというのが通説。しかしデッキが高級になると、イコライゼーション、ヘッドタッチ、ワウ・フラッターなどすぐれているためもあるが、元のデッキで聴くことだけがいいとはかぎらない。それはデッキをグレードアップするたびに痛感した。でも今回ほどその差に驚いたことはない。
つまり、諸君はデッキをグレードアップしたからといって、前のデッキで録音したのをすぐ消したりしないことだ。前のといまのと、味の違ういい音が聴けないのだから。デッキというものは有名メーカーが市販しているものなら総じて、まあ録音の音質はいい機械だと知っておくことだ。