組合せの最近のブログ記事

いま手もとにあるアルテックの604-8Gは、早瀬さん所有のものだった。
譲ってもらった、というよりも、いただいたものである。

瀬川先生が620Bの組合せをつくられ、
試聴の最後に「俺がほんとうに好きな音は、こういう音なのかもなぁ......」とぽつりとつぶれかれたとき、46歳。

あと数日で今年も終るが、1月生れの私は今年の大半を46歳で過ごした。

同じ46歳のときに、604-8Gが手もとにあることは、単なる偶然であろう。
それでも、そこになんらかの「意味」を見出したい。
それがこじつけであっても、他人には理解されなくても、「意味」があれば、それでいい。

オーディオから離れていた時期が、かなり長くあった。
いまのシステムは、再開したシステムが基になっている。誰にも聴かせてはいないし、
これから先、システムは変っていくが、私ひとりしか、その音を聴く人はいないということは変らない。

まだ先のことだが604-8Gを鳴らした時、エリカ・ケートのAbendempfindungの一曲だけは、早瀬さんに聴いてもらおう。
これだけが唯一の例外となるはずだ。
エリカ・ケートのドイツ歌曲集のCDにある石井不二雄氏による対訳を書き写そう。
     *
夕暮だ、太陽は沈み、
円が銀の輝きを放っている、
こうして人生の最もすばらしい時が消えてゆく、
輪舞の列のように通り過ぎてゆくのだ。

やがて人生の華やかな情景は消えてゆき、
幕が次第に下りてくる。
僕たちの芝居は終り、友の涙が
もう僕たちの墓の上に流れ落ちる。

おそらくもうすぐに──そよかな西風のように、
ひそかな予感が吹き寄せてくる──
僕はこの人生の巡礼の旅を終え、
安息の国へと飛んでゆくのだ。

そして君たちが僕の墓で涙を流し、
灰になった僕を見て悲しむ時には、
おお友たちよ、僕は君たちの前に現われ、
天国の風を君たちに送ろう。

君も僕にひと粒の涙を贈り物にし、
すみれを摘んで僕の墓の上に置いておくれ、
そして心のこもった目で
やさしく僕を見下しておくれ。

涙を僕に捧げておくれ、そしてああ! それを
恥ずかしがらずにやっておくれ。
おお、その涙は僕を飾るものの中で
一番美しい真珠になるだろう!
     *
1981年、瀬川先生はアルテックの620Bで、聴かれたのだろうか......。
この年、瀬川先生はスイングジャーナルの記事で、
604EとマッキントッシュC22、MC275の組合せの再現ともいえることをやられている。

604Eが604-8Hに、612の銀箱のエンクロージュアが620型に、MC275がマイケルソン&オースチンのTVA1に、
C22がアキュフェーズのC240に変ってはいるが、
この組合せは、あきらかにエリカ・ケートのモーツァルトの1曲のためだけに、欲しい、と思われた音を、
もういちど聴きたいと欲されたのではないだろうか。

それが無意識的にであったのか、それとも意識的に行なわれたのかは、誰にもわからないが、
無意識のうちに、この組合せをつくられたように感じるのは、私だけではないだろう。

この歌の歌詞も、偶然とは思えないのだ。

K.523 Abendempfindung(夕暮の想い)

Abend ist's,die Sonne ist verschwunden,
Und der Mond strahlt Silberglanz;
So entfliehn des Lebens schönste Stunden,
Fliehn vorüber wie im Tanz.

Bald entflieht des Lebens bunte Szene,
Und der Vorhang rollt herab;
Aus ist unser Spiel,des Freundes Träne
Fließet schon auf unser Grab.

Bald vielleicht -mir weht,wie Westwind leise,
Eine stille Ahnung zu-
Schließ ich dieses Lebens Pilgerreise,
Fliege in das Land der Ruh.

Werdet ihr dann an meinem Grabe weinen,
Trauernd meine Asche sehn,
Dann,o Freunde,will ich euch erscheinen
Und will himmelauf euch wehn.

Schenk auch du ein Tränchen mir
Und pflücke mir ein Veilchen auf mein Grab,
Und mit deinem seelenvollen Bli cke
Sieh dann sanft auf mich herab.

Weih mir eine Träne,und ach! schäme
dich nur nicht,sie mir zu weihn;
Oh,sie wird in meinem Diademe
Dann die schönste Perle sein!
1988年9月号の無線と実験に、伊藤先生製作の7027Aプッシュプルアンプの記事が載っている。
出力トランスはパートリッジのP5201、1次側のインピーダンスが10kΩのもの。

出力段はAB1級のUL接続で、出力はおよそ20W。

RA-1574-Dは五極管接続で、7027Aの規格表をみると、
AB1級で、出力トランスに6.5kΩのものを使えば、76Wの出力となっている。

1次側インピーダンスが6.5kΩのトランスで、70Wを超える出力でも使えるものとなると、まずないと思っていたが、
スウェーデンのトランス専門メーカー、ルンダールのラインナップのなかに、6kΩのものがある。
7027Aは、やはりAB1級で6kΩのトランスを使えば、50Wの出力を取り出せる。

伊藤先生の製作例があること、ウェストレックスのカッターヘッド用のドライブアンプに使われていたこと、
このふたつの理由に、ぴったりのトランスがいまでも入手できることがわかり、
7027Aのプッシュプルアンプをつくるのもよさそうだと、ひとり納得していたところで思い出したことがある。
     *
 しかしその試聴で、もうひとつの魅力ある製品を発見したというのが、これも前述したマッキントッシュのC22とMC275の組合せで、アルテックの604Eを鳴らした音であった。ことに、テストの終った初夏のすがすがしいある日の午後に聴いた、エリカ・ケートの歌うモーツァルトの歌曲 Abendempfindung(夕暮の情緒)の、滑らかに澄んで、ふっくらとやわらかなあの美しい歌声は、いまでも耳の底に焼きついているほどで、この一曲のためにこのアンプを欲しい、とさえ、思ったものだ。
     *
瀬川先生が、1981年に書かれた文章だ。

真空管アンプでは、出力が50Wをこえるあたりから(できれば70W以上はほしい)、
トランジスターアンプにくらべれば小さな値ではあっても、
出力の余裕から生れてくるものが感じとれるような気がする。

70Wクラスのパワーアンプといえば、マッキントッシュのMC275が75W+75W、マランツのModel 9が70W。
もう少し新しいところではマイケルソン&オースチンのTVA1が70W+70W、ジャディスのJA80が80W。

マランツだけが出力管はEL34のパラレルプッシュプルで、あとの3機種はKT88のプッシュプル。

個人的には出力管をパラレル使用はしたくない。
となると使える真空管は限られてくる。

ウェストレックスに、RA-1574-Dというアンプがある。
出力管は7027のプッシュプルで、出力は75W。
このアンプは、WESTREX 3D STEREODISK SYSTEM に使われている。
つまりカッターヘッド用のアンプである。

パワーアンプ部を見ると、初段は12AU7で、次段が12AU7のP-K分割、12BH7で増幅したあと、
7027の固定バイアスの出力段となっている。

RA-1574-Dの回路図を見たときから、これでスピーカーを鳴らしてみたら......と妄想していたのである。
アルテックの604-8Gが来てから、あれこれ考えるのが楽しい。
エンクロージュアをどうするか、ネットワークは、あれを試してみたい、
それにユニットの取り付け方でも試してみたいことがあって、
時間が空くと、とにかく妄想をふくらませている。

パワーアンプについても、妄想している。
やはりいちどは真空管アンプで鳴らしてみたい、とも思っている。

604-8Gは、型番が示すように604Eまでの16Ω仕様から、
トランジスターアンプで鳴らすことを前提に8Ω仕様に変更されている。

最新のトランジスターアンプで鳴らすことも考えながら、真空管アンプまで自作しようかな、などと、
いったいいつ実現するのかわからないくらいに、妄想的計画は大きくなっていく。

出力管は何にしよう、と考えると、たしかにウェスターンの300Bに惹かれるものはあるが、
プッシュプルで20W弱。
604-8Gを鳴らすには、これでも十分といえるものの、最新のプログラムソースに対応するためには、
正直もうすこし出力の余裕がほしい、と思ってしまう。

トランジスターアンプも、真空管アンプにしても、
良質の大出力アンプのもつ余裕から生れる特有の魅力は、
オーディオにとって必然の条件ともいいたくなる。
1970年代の終りに登場したソニーのTA-N88が、コンシューマーオーディオ用のアンプとして、
はじめてD級動作を、そして電源にもスイッチング方式を採用している。

そのあとは続かなかったが、ここ数年、B&OのICEpowerをはじめ、
各社からD級動作のアンプ(俗称デジタルアンプ)がいくつか登場している。
ソニーからも、TA-DR1が出ている。

D級アンプも、従来からのA級、AB級動作のアンプも、最終的には、設計者のセンスと技倆によって、
性能、音は決るわけで、
「デジタルアンプこそ最高」とか、「いやいや、デジタルアンプなんて、まだまだ」とはいえないし、
D級動作のアンプには、これから、といいたくなる点もいくつかある。

とはいえ、あれだけの効率の良さは、十分に魅力的である。

今日ふと思いついたのだが、スレッショルドのステイシス回路、それもプロトタイプの回路構成に、
D級動作のアンプを利用してみる、というのは、意外に有効かもしれない。

ステイシス回路のステイシスセクションは、これまでどおりA級動作のアンプを使い、
電流源となるアンプ部に、D級動作のアンプ(ICEpowerを使ってみたい)をもってくる。
A級アンプとD級アンプの組合せで、ステイシス回路を構成するわけだ。

そうすれば、大出力ながら、かなりコンパクトに仕上げられる。
ジュリアード弦楽四重奏団は、バルトークを、3回録音している。

1950年のモノーラル録音、ステレオ録音になってからの1963年と1981年、それぞれ10年以上のへだたりがある。

音のことをいえば、1981年に録音されたものがすぐれているけれど、
1963年録音のものには、気迫の凄さといいたくなるものが感じとれる。

1963年にバルトークが、どう聴かれていたのかは、この年に生れた私は、
想像するしかないわけだが、すくなくとも18年後の1981年とでは、作品の知名度もかなり違っていただろうし、
1963年には、バルトークの弦楽四重奏曲は、まだ「現代音楽」として聴かれていたのではなかろうか。

だとすれば、1963年録音に感じとれる気迫が、1981録音には薄れていることも納得がいく。

1963年録音と1981年録音、どちらの演奏がすぐれているかということではなく、
時代の変化によって演奏の性格もかわっていく。

アバドとポリーニによる、バルトークのピアノ協奏曲第1番をはじめて聴いたときも、
その気迫の凄さに圧倒されたのを、いまでもはっきりと憶えている。

1977年に録音されたこの演奏には、切れ味の鋭さが感じとれる。

もし当時の若さのままのアバドとポリーニが、今の時代、いたとしても、同じ演奏(表現)はしないだろう。

時代の表現というものがある。

DB1+DB2、KEF・104aBの組合せよりも、いまのオーディオ機器を組み合わせた方が、
ディテールの再現性の高さは、あきらかに上だろう。

それでも、この時代ならではの、神経質なところをどこかに残す、独得の繊細さは、あきらかにある。
DB1の回路図を見ていて気がついたのは、JBLのコントロールアンプSG520も、
+電源ではなく、−電源を採用していたということだ。
SG520は、−21Vの電圧がアンプ部にかかっている。

トランジスターには、NPN型とPNP型がある。
SG520もDB1も、PNP型トランジスターを主として使っている。

SG520のフォノイコライザーはわずか3石しか使っていないが、すべてPNP型である。
トーンコントロールを含むラインアンプは、6石使用(つまり6段構成)。うち4石がPNP型である。

SG520はオシレーターを内蔵しているが、この回路に使われているのもPNP型である。

SG520と似た回路構成のEMTのフォノイコライザーアンプ155stのイコライザー部は、
やはり3石構成だが、こちらはNPN型のみ使用で、+電源となっている。

+電源のみがいいのか、SG520、DB1+DB2のような−電源のみがいいのか、
それとも±2電源が優れているのかは、簡単に結論が出せることではない。

ひとつの要素だけでアンプ音が決定されるわけではないのは重々承知しているが、
それでもSG520とDB1+DB2が、−電源のみであることは、単なる偶然ではないような気がしてならない。
DBシステムズの最初の輸入元は、R.F.エンタープライゼスだった。
その後、1970年代にタンノイ、SME、オルトフォン、
それにマークレビンソンのLNP2のサンプルを最初に輸入したシュリロ貿易に勤務されていた
Hさんが独立されて、取り扱われるようになった。

DBシステムズのために会社をつくったような印象を、受けた。
Hさんは、DBシステムズの音、コントロールアンプのモジュール思想に、心底惚れての、行動だったように思う。

DB1本体は、機能をほとんど省略した構成だが、同サイズのDB5が用意され、
トーンコントロール機能、モード切替も備えている。

DB5のモード切替は、ステレオ/モノーラルだけでなく、L−R信号、−(L+R)信号も取り出せる。

DB5も、DB1同様、ディスクリート構成。ただし上記信号を取り出す回路のみオペアンプを使っている。

型番は忘れてしまったが、やはり同寸法のチャンネルデバイダー、
それにMC型カートリッジ用ヘッドアンプDB4が用意されていたことからわかるように、
シャーシーそのものをモジュールとみなす設計思想だった。

外部電源は、すべてに、DB2が共通で使える。
つまりDB1、DB4、チャンネルデバイダーすべて、±2電源ではなく、−電源のみ、ということだ。
DBシステムズについて書いていたら、同時代の、どのスピーカーと組み合わせたら、
おもしろいだろうか、楽しいだろうか、と考えていたら、KEFの104aBが頭に浮んだ。

小音量で、スピーカーに接近して聴くかぎり、おそろしくデリケートで、細身の音の極致を聴かせてくれそうで、
意外にいい組合せになりそうだと、思えてきた。

そうなるとパワーアンプはなんだろう。

DB1+DB2は、パイオニアのエクスクルーシヴM4の組合せを、
瀬川先生の、熊本での講演のときにリクエストしたことがある。
「なかなか思いつかない面白い組合せだね」と言ってくださった。

M4が、だから真っ先に候補に上がったが、このアンプには冷却ファンがついている。
小音量での再生を前提しているだけに、ファンの音があっては困る。

冷却ファンがなく自然空冷で、ローレベルが美しいアンプで、1970年代後半のパワーアンプとなると、
ラックスのラボラトリーシリーズの5M20があった。

メーター付の5M21もあるが、ほんのわずかでも聴感上のSN比をよくしたいので、
あえてメーターなしの5M20を選ぶ。

ただこのままの組合せだと、艶っぽさに不足するだろうから、
カートリッジには、そこのところをうまく補ってくれるものを選ぶ。

エレクトロ・アクースティック(エラック)のSTS455Eの音の艶は、
人によっては過剰すぎると感じるぐらい濃厚だが、
ここでは、もう少し繊細でデリケートであってほしいから、
455Eの上級機のSTS555Eが、ぴったりのような気がしてくる。

音の艶っぽさを要求せずに、さらに繊細に切れ込む表現を求めるのであれば、
サテンのカートリッジも、おもしろいだろう。
つながっているだけの組合せは、
携帯電話を片時も離さず、ただただ頻繁に連絡をとりあうだけに汲々としている行為に、
似ているような気もする。

簡単に、どこでもいつでも連絡がとれるようになったからといって、
連絡の回数が多いからといって、必ずしも、相手との関係が濃密であるわけではない。
携帯電話でつながっていることは、相手と結びついているわけでもない。

組合せの本質は、つなげることではなく、結びつけることにある、と
これだけは、いまの時点でもはっきりといえる。
「有機的な」組合せと書いてみたものの、まだうまく説明できそうにない。
それでも、なんとなく感じていることを書けば、新しい視点による新しい価値を生むことだ、とは言える。
正直にいえば、使いこなしも「組合せ」の範囲に含まれると考えている。

与えられた機器を与えられた環境で、自身のもつ経験則、手法を、どう組み合わせていくのか。
経験則も、いくつもの経験の積み重ねが組み合わさって生れてくるものだろう。

つまるところ、そういうことではないかと思う。

ある種の組合せに感じるのは、ただ点・線・面を並べて、うまいこと形になったら、それでお終い、という安易さだ。

オーディオにおける「組合せ」とは、そういうものではなく、もっと有機的なもののように、
やや漠然ながらではあるが、そう感じている。
オーディオにおける「組合せ」とは、スピーカーにアンプやCDプレーヤー、アナログプレーヤー、
さらにこまかくケーブルを含めたアクセサリーを選択していくことだけにとどまらないと、私は捉えている。

オーディオは、すべて「組合せ」だと考えている。

スピーカーシステムは、スピーカーユニット、クロスオーバーネットワーク、エンクロージュアから、
おもに構成されている。
こまかくあげていけば、吸音材、内部配線材、入力端子なども含まれ、
つまり、これらの集合体(組合せ)がスピーカーシステムである。

さらに構成部品ひとつをこまかく見ていけば、スピーカーユニットは、主な構成部品としては、
振動板、磁気回路、フレームであり、
これらもこまかく見れば、エッジ、ダンパー、ポールピース、ボイスコイル(およびボビン)などがある。

振動板に紙を選択したコーン型ユニットであれば、どういうエッジを採用し、ダンパーの材質、形状はどうするか、
ボイスコイルはアルミを使うのか銅にするのか、エッジワイズ巻にするのかどうか、
ボビンの素材、厚み、強度は......、など、こまかいパラメーターの組合せであり、
どこかひとつを変えれば、特性も変化し、音も変わっていく。

構成要素の、比較的少ないスピーカーユニットでも、組合せの数は膨大となる。
そのなかから目的に添う組合せを選択するのが、設計ともいえる。

アンプとなると、とくにソリッドステートアンプをディスクリート構成で組むとなると、
その組合せは無数ともいえる。

ありきたりなものを安易に選択して組み合わせていくのか、
それとも細部に至るで綿密に検討し、ときに新しい回路(新しい組合せともいえるだろう)を生み出すのか。

回路が決定したとしても、実際にどうレイアウトするのかも,組合せといえるだろう。

こんなふうに書いて行くときりがないので、このへんでやめておくが、
およそ「組合せ」といえないものは、オーディオには存在しないのではないだろうか。
マグネシウム振動板のコーン型フルレンジ・ユニットは登場していたが、
なかなかコンプレッションドライバーは登場しなかった。

やっと今年、JBLから、これこそ満を持して、と言いたくなるほど、Series Vから20年以上待って、
4インチ・ダイアフラムのマグネシウム振動板を採用したS9900が登場した。

ここから、妄想は始まる。

マグネシウム振動板を、タンノイが採用してくれたら......、そんなことを想っている。

現行のデュアルコンセントリックのトゥイーター部の振動板は、アルミ・マグネシウム合金とある。
ならばマグネシウム合金振動板の採用もあるのではないだろうか。もう一歩、突き進んでくれればいいのだ。

そのとき、もう一度、オートグラフを復刻してくれたら、と妄想はさらにふくらむばかり。

オートグラフまで、とは言わないものの、エンクロージュアにはフロントショートホーンを採用してほしい。

これまで聴いてきたタンノイのスピーカーから出てきた音色にぐらっと心が大きく揺らいだのは、
いずれもフロントショートホーンつきのモノばかりだった。

オートグラフ、ウェストミンスター、
それにステレオサウンドの特別企画で製作されたコーネッタ・エンクロージュア。

タンノイのデュアルコンセントリックは、ご存じのように、ウーファーのコーン紙が、
トゥイーターのホーンの延長をかねている。

アルテックの同軸型ユニット、604シリーズが一貫してストレートコーンなのに対し、
デュアルコンセントリックは1947年のオリジナルモデルからカーブドコーンである。

そのデュアルコンセントリック・ユニットの前面にフロントショートホーンを設けるということは、
さらにホーンを延長することでもあり、トゥイーターのダイアフラムには、
より大きなアコースティックな負荷がかかっているのではないだろうか。

このくらいの負荷が、実は必要なのではないかと思うほど、
フロントショートホーンつきのタンノイの音色は、まことに美しい。

1986年に、創立60周年を記念して発売されたR.H.R. Limitedのエンクロージュアがバックロードホーンだったのには、
この先もタンノイは、ウェストミンスター以外に、
フロントショートホーンを採用することはないんだろうな、と、
勝手に描いていた夢が打ち砕かれたような気がした。

それでもマグネシウム・ダイアフラムのデュアルコンセントリックに、
フロントショートホーンつきエンクロージュアの、
タンノイ純正のスピーカーシステムが登場してくれることを、あきらめきれずにいる。
いまも売られているから、かなりのロングセラーなのが、オーディオテクニカのヘッドシェル、MG10。
型番が示すようにマグネシウム合金を使い、自重が10g。以前は自重の異るモノも用意されていたと記憶している。

写真をみるかぎり、当時のままのつくりのままで、価格も税込みで3780円(私が買ったころは2500円だったか)。

すこし懐かしさも感じるが、音は、というと、その後に買ったオーディオクラフトのAS4PLのほうが、
ずっと好ましかったし、カタチも気にいってたし、指かけの具合が良かった。
そんなことがあったので、実はMG10には、特に悪い印象もないけれど、いい印象も残っていない。

それでもマグネシウムに対する期待だけはずっと持っていて、
やっぱりマグネシウムはスゴイ、と思う日は、SMEのSeries Vの登場まで待つしかなかった。

なにもSeries Vの素晴らしさは、マグネシウムだけでないことは重々承知した上で、
それでも、あの音は、マグネシウムでなければ出ない、と思い込めるほどに、
マグネシウムへの期待は、いまでも大きい。

だから、ずっとコンプレッションドライバーのダイアフラムに、いつ採用されるのか、どこが採用するのかが、
Series Vを聴いてからの期待でもあった。
たしか朝日新聞だったと記憶しているが、時期もちょうど1977年ごろだった。
文化面に、オーディオ雑誌の試聴のありかたを問題にした記事が載ったことがある。

カートリッジの試聴記事で、誌面では、その出版社の試聴室において、ふたりの筆者が聴いたことになっていたが、
実際は、スケジュールがうまく調整できず、ひとりは試聴室で、もうひとりは自宅での試聴となったらしい。

そのことを問題として取りあげていた(すこし記憶違いがあるかも)。

自宅で聴いた人が、テスト機種のうち半分は試聴室で聴いて、のこりを自宅でという、
試聴条件がバラバラというのであれば、たしかに問題といえるだろうが、
ひとりが自宅、ひとりが試聴室というのは、新聞紙上で取りあげるほどの問題なのだろうかと思ったことがある。

それだけ、当時はオーディオに注目が集まっていたからだろうし、
朝日新聞の文化面の記者のなかに、オーディオマニアの方がいたのかもしれない。

素材の話に戻ろう。

各素材の物性値をながめていると、マグネシウムが、かなり理想に近いように思えてくる。
けれど理科の実験でやったように、マグネシウムは燃えやすいし、加工も難しい。

オーディオにおいて、まず採用されたのはヘッドシェルではなかろう。
1970年代後半のオーディオ雑誌には、よく素材の比較表が掲載されていた。
鉄、アルミ、チタン、マグネシウム、紙などの、それぞれの剛性、内部音速、内部損失といった項目があり、
スピーカーの振動板に求められる条件──、
軽くて内部音速が速く、剛性も高いという難しいバランスを満たしているものは、
そうそうないことがわかった。

それにしても、スピーカーの振動板に求められる条件は、そのまま自転車のフレームにもあてはまる。
鉄全盛時代から、カーボン、アルミ、チタンが登場し、
数年前にマグネシウム、いまはステンレスのフレームもある。

自転車といえば、朝日新聞社が1976年暮、77年夏、77年暮に「世界のステレオ」という、
縦横30cmという、ほぼレコードジャケットサイズのムックを出していたことがある。

77年の No.2と78年のNo.3に、傅さんが「オーディオ・マニアのための自宅録音のすすめ」という記事を書かれている。

この中で傅さんが着ているのは、ganチームのチームジャージ。
かつてグレッグ・レモンが属していたチームのジャージ。

ステレオサウンドの「レコード演奏家訪問」に傅さんが登場されたとき、
壁に、赤いフレームのロードバイクがかかっていたことに、
自転車好きの方ならば気づかれているはず。

あの写真ではわからなかったが、フレームはコルナゴで、パーツはカンパニョーロということだ。

セレッションの輸入元だった成川商会は、1980年代ぐらいまで、コルナゴの輸入元でもあった。

話がずれてきたまま書くと、意外に思われるかもしれないが、
瀬川先生も、実は録音の経験をお持ちだった、ということを1ヵ月ほど前に、友人のKさんに聞いた。

詳細は話されなかったそうだが、それでも「録音は難しい......」と呟かれた、とのこと。
別項でマークレビンソンのアンプについて書いているうちに、
ふとシーメンスのスピーカーと、LNP2LとML2Lを組み合わせたら、どんなに音になるんだろう、と思った。

シーメンスのスピーカーは、オイロダインもコアキシャルも、硬質に磨き上げられた音。
周波数レンジこそ広くはないが、帯域内の密度は高く浸透力がある。
聴いていると、音楽がはっきりと記憶に残る。

シーメンスのスピーカーを聴く機会があったら、聴き終った後に、ぜひふり返ってほしい。
はじめて聴いた音楽がもしあれば、他のスピーカーで聴くよりも、つよく記憶に残っていることに気づかれるはずだ。

聴いている時は「なんだかいい音だなぁ」と思っていても、いざ聴き終ってみると、
さきほどまで聴いていた音楽のことが、ほとんど心に残っていない。
そんな音が、最近増えてきてないだろうか。

どういう聴き方をしようと、どういう音を好もうと、それは個人個人の自由だ。
それでも、あえて言いたい。
折角聴くのであれば、やはり心に音楽が刻まれる音で聴きたいではないか。
それがオーディオの醍醐味であり、大袈裟な、と受けとられるだろうが、真髄のような気もする。

マークレビンソンで鳴らすシーメンスの音は、ある種強烈な音だろう。
最初は、聴くに耐えない音になるかもしれない。
それでも神経細やかに調整を施せば、絶対にピントが合うと確信している。

オイロダインとはいわない、コアキシャル1本で十分だ。
和室で正座して聴く。できうることなら茶室で聴きたい。

音楽と真剣に向かう合うことがどういうことなのかを想い起こさせてくれるはずだ。
ビクターのSX1000 Laboratoryを、たとえばゴールドムンドのMIMESIS22 SignatureとTELOS2500のペアだったら、
どんなふうに鳴るのかは、やはり、多少ならずとも興味がある。

とは言え、このペア、2000万円でも足りない。
別格の音がして当り前だろうから、組合せとしては面白さを感じない。

SX1000 Laboratoryを鳴らしてみたいアンプの第一候補は、オラクルのSi3000だ。

Si3000も手頃な価格のアンプではない。それでもゴールドムンドのペアの10分の1だ。
このアンプの面構えと存在感の圧倒的なところが、SX1000 Laboratoryにぴったりのような気がしてならない。

形式上はインテグレーテッドアンプだが、
どう見ても、これは、ボリューム、セレクター付きのパワーアンプだろう。

だから最初はSi3000だけで鳴らしてみて、
しばらくして、ぴったりのコントロールアンプが見つかったら......、そんなことも考えている。
こういう設定そのものが妄想だということは言われなくてもわかっている。
それでも、もし歴代の国産スピーカーの中から、メインスピーカーを選ぶとしたら、
私は、ためらうことなく、ビクターのSX1000 Laboratoryを選ぶ。

ダイヤトーンの2S305こそ、日本的なスピーカーだと言われる人もいるだろう、
いや、ダイヤトーンでも、私はDS10000を選ぶという人、
海外ではじめて認められた国産スピーカーはヤマハのNS1000Mだから、
これを選ぶという人もいてもいい。

価値観も、オーディオへの取り組み方も、人の数だけ違う。

それでも、メインスピーカーとして、これからしばらく、そのスピーカーだけを使うことが前提なら、
スピーカーシステムとしての完成度の高さだけでなく、可能性の大きさも考慮した選択の結果が、
私にとってはSX1000 Laboratoryであり、程度のいい出物があれば、いまも欲しいとさえ思っている。

そのSX1000 Laboratoryを、いま鳴らすとしたら、どういう組合せだろうかと、あれこれ想いをめぐらしている。
ハーベスのHL Compact 7ES-3の組合せは、その1で書いているように、
スペンドールのBCIIとラックスのLX38、ピカリングのXUV4500Qの組合せが奏でてくれた音を、
いまの時代に、いまのクォリティで再現したいという想いから、あれこれ考えていたもの。
だから、最初からアンプは、真空管式のモノに限定していた。

そういう個人的な想いを抜きにすれば、組み合わせるアンプは違ってくる。

第一候補は、というよりも、これしかないと思っているのが、ボウ・テクノロジーのWAZOO-XLだ。
最近では、オーディオ誌にまったく登場しなくなったが、
粋なプリメインアンプであることに、変わりはない。

聴いたばかりのオーディオ機器が好ましいモノであれば、
古いモノよりも、そのオーディオ機器に惹かれがちなのが人間なのだろう。
それに誌面には限りがある。古いモノが、徐々に登場しなくなるのは仕方のないこととわかっている。
いったい去年1年でどれだけの数の新製品が登場したことか。

このアンプの肌合いの良さと、小気味よいリズミカルで躍動感のある音は、
ユニゾンリサーチのP40、P70で鳴らす音よりも、いくぶん年齢的に若くなるだろう。

CDプレーヤーは、ヘーゲルのCDP4Aがぴったりくるだろう。
背筋がもっとしゃんと伸びて、涼しげな雰囲気が加わると想像する。

この組合せにもっとも期待しているのは、HL Compact 7ES-3から、
ハーベスのデビュー作であるMonitor HLを初めて聴いた時の新鮮な驚きと、
ふたたび出合えそうなことである。

ベテランのスピーカー・エンジニアがつくりあげた、
新鮮で瑞々しい響きのBBCモニターであったMonitor HLの印象が強かっただけに、
つづくMonitor ML、HL Compactの音に、惹かれることはなかった。

そんな私が、HL Compact 7ES-3の音には惹かれる。

ヘーゲルはノルウェー、ボウ・テクノロジーはデンマーク、
北欧の国のペアで鳴らすHL Compact 7ES-3からは、新鮮で、格別な音が聴けそうな気がする。

どちらもパネルフェイスは、大きな、ふたつのツマミが特徴的だけに、
並べて置いても、面白いだろう。
ハーベスのHL Compact 7ES-3に組み合せるアンプは、ユニゾンリサーチのP40かP70と、
私の心の中では決っている。

今日まで悩んできたのは、CDプレーヤーに、何を持ってくるかである。

妄想組合せとはいえ、価格のバランスを極端に無視したものは選びたくない。
それから実際に設置したときの見た目のバランス、雰囲気も疎かにはできない。
現行製品の中から選ぶのは、当然のことだ。

EMTの986とかリンのCDプレーヤーなどが候補として頭に浮かんだが、ピンとこない、私の中でしっくりとこない。

実は、第一候補は別にあった。コードのCODAとQBD76のペアなのだが、価格的にバランスしない。

なぜだか、QBD76がぴったりだという確信があって、これだけははずしたくない。
CODAを、他のモノと取り換えるとしたら......、ひとつあった、ワディアの170 iTransportがあった。
iPodと170 iTransportにすれば、組合せのトータル価格をぐんと抑えられる。

心の中で、なにかがぴたっと収まった気がして、すっきりしている。
それに、この組合せ、かなりいいのではないか、と自負している。
デレク・ヒューズ設計の、HL Compact 7ES-3にぴったりのアンプが、
どんな感じに仕上がるのか、勝手に妄想するのも楽しいけれど、
現実の組合せを妄想するのは、もっと楽しい。

HL Compact 7ES-3を中心とした組合せを考えるとなると、
個人的に意識するのは、スペンドールBCII、ラックスLX38、ピカリングXUV4500/Qの音である。

この組合せの特質を、HL Compact 7ES-3の組合せにも求めたい。

友人のAさんは、販売店で聴いた、
ラックスのAクラスのプリメインアンプとの組合せの音に、まいってしまった。
こういう話をきくと、ラックスの真空管式のプリメインアンプもいいだろうな、と思いながらも、
第一に試してみたいのは、ユニゾンリサーチのP70かP40である。

EL34のシングルアンプのS2の、余計なものを感じさせない音に魅力を感じるだけに、
ユニゾンリサーチ久しぶりのプッシュプルアンプの音は、いちばん興味のある音でもある。

別にS2でもいいような気もするが、パワーがすこし足りないだろうし、
音、というよりも響きの豊かさを求めるとき、すこし物足りなさを感じるだろう......。
それにP70、P40のガラスのフロントパネルを見ていると、
ラックスの過去の真空管アンプSQ5Bを思い出すのも、個人的に気にいっているところ。
BBCモニター系列の音には、つよく惹かれるものがある。 

瀬川先生は、BBCモニターの音を、
コンフォータブルサウンド(快適な、心地よい音)と言われていた。
同じモニタースピーカーでも、ある種の厳しさをもつJBLの4300シリーズとは異る。

スペンドールのBCII、ロジャースのLS3/5AやLS5/8(できればチャートウェルのPM450)、
もしくはPM510、ハーベスのモニターHLなどは、
程度のいいモノがあれば、 いまでもなんとか手に入れたい気持ちが、どこかにある。 

LS3/5AとPM510、それからLS5/1(Aがつかない初期のモデル)は、使っていた時期もある。 

もちろん、過去のスピーカーではなく、現行製品のなかから選べればいいのだが、
ロジャースもスペンドールも昔の面影はそうとう薄れてしまったし、
ハーベスも、告白すれば、創立者のハーウッドがリタイアし
アラン・ショウの時代になってからの一連のスピーカーには、まったく魅力を感じなかった。 

だから、もう良質のBBCモニターの音は、聴けない、とここ10年ほど思っていたところに、
ハーベスのHL Compact 7ES-3が登場した。 

ハーベスには魅力を感じない、という先入観たっぷりの耳にも、
HL Compact 7ES-3の音は素晴らしく魅力的だった。
すこし大げさに表現すれば、やっと21世紀のBBCモニターの音が聴けた、と感じた。

調べてみると、いまBBCモニターと呼べるのは、ハーベスのスピーカーであり、
2003年1月からスペンドールのデレク・ヒューズ(創立者スペンサー・ヒューズの息子)が、
ハーベスに参画しているし、昔のBBCモニターの開発に携わっていたスタッフも協力している。
勝手にワクワクしている(笑)。 

デレク・ヒューズは、スペンドール時代に、プリメインアンプのD40を設計している。
D40は、ボリューム、セレクターとバランサーの3つのツマミだけというそっけない顔つき、
サイズも小型で、スペンドール・ブランドでなければ、まったく期待しないつくりだが、
BCIIと組み合せたときの音は、見事。BCIIの中域の弱さをおぎなって、しかも品位を失わない。
デレク・ヒューズがふたたびアンプを設計してくれないかと願っている。 
もちろんHL Compact 7ES-3専用の、小型で粋なプリメインアンプを。

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