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2345、つまりツウー、スリー、フォー、ファイブ、というカッコいい型番を与えられているホーンを読者はご存知だろうか。23ナンバーで始まる四ケタ番号は、JBL・プロ用の中高音ホーンだ。そのあらゆるホーンの中で2345という名は、決して偶然につけられたものではなかろう。このナンバーのもつ響きの良さ、語呂のスムーズさは、それだけでも商品としての魅力を持ってしまうに違いない。名前が良くて得をするのはなにも人間だけではない。オーディオファンがJBLにあこがれ、プロフェッショナル・シリーズに目をつけ、そのあげく2345という型番、名前のホーンに魅せられるのは少しも変なところはあるまい。マランツ7と並べるべくして、マッキントッシュのMR77というチューナーを買ってみたり、さらにその横にルボックスのA77を置くのを夢みるマニアだっているのだ(実はこれは僕自身なのだが)。理由はその呼び名の快さだけだが、道楽というのは、そうした遊びが入りやすい。
※
「ベスト・サウンドを求めて」で、こんなことを書かれている岩崎先生は、
真空管時代からトランジスターの初期の時代のマランツのモデルナンバーに、
#11と#17が欠けているのを、とても気にされていた、と沼田さんがレコパルに書いている。
#13も欠番なのだが、欧米では凶数だから、なくて当然だろう。
私が気になるのは、マークレビンソンのMLナンバーの欠番である。
レヴィンソンは、型番を順番通りにつけている。
LNP2にしても、その前に4台しかつくられなかったLNP1というモデルが存在しているし、
MLシリーズにしても、JC2からモデルチェンジしたML1からはじまり、ML2、ML3......とつづき、
ML12までラインナップされているが、ML4、ML8が欠番になっている??、
そう思い込んでいただけで、ML8は存在している。
ML8は、Brüel & Kjaerの測定用マイクロフォン・カプセル、4133/2619用につくられたプリアンプである。
ML5の資料に書いてあった。
日本ではあまり知られていないようだが、ML5は、
スチューダーのオープンリールテープレコーダーA80のエレクトロニクス部を、マークレビンソンでつくりかえたもの。
このML5には、ML5Aという改良モデルがあったようで、これに搭載されているアンプが、L1カードである。
L1カードは、ML7のラインアンプでもある。とうぜん設計者は、トム・コランジェロ。
ただML5の設計者がコランジェロかどうかははっきりとしない。
ジョン・カールの可能性も捨てきれない。
ジョン・カールは、マークレビンソンのアンプを設計する以前は、アンペックスのエンジニアだった。
テープレコーダーの設計にも携わっていた。
だからジョン・カールがML5を設計し、ML5Aに採用されたL1はコランジェロということなのかもしれない。
ML4が存在していたのか、それともほんとうに欠番だったのかは、まだはっきりとしない。
日本が大きな市場だったマークレビンソンにとって、4は日本では嫌われているのを知っていて、避けたのか。
MLシリーズが12で終ってしまったのは、やはり13が凶数だからなのか。
この他にR1というモデルが存在していたこともわかった。
マランツ#10Bやセクエラのmodel1の設計者と知られるリチャード・セクエラによる
リボン型トゥイーターT1の、マークレビンソンによるモディファイ版である。
HQDシステムに採用されたデッカのリボン型トゥイーターは7kHzからの使用なのに対し、
磁気回路もリボン・ダイアフラムもひとまわり近く大きいT1(R1)は、5kHzから、となっている。
JC2のINSTRUCTION MANUAL には、こうある。
A System
Two UP-1A cards are normally supplied with the JC-2 unless otherwise specified. This system accepts Input impedance: 47kOhms.
B System
The UP-1B system offers lower sensitivity but increased headroom for the highest output magnetic phono cartridges.
C System
This set provides exact equalization for the Brüel & Kjaer series of cartridge measurement records. Information on request.
D System
This system includes two UP-1D cards and a JC-1SM module. It offers DIRECT moving coil cartridge input.
E System
Provides equalization and DC current source for certain gauge cartridges. Information on request.
F System
Flat response amplification. Specify application and requirements.
LNP2とほぼ同時期に、アメリカのQUADEIGHT(クワドエイト)からLM6200Rというコントロールアンプが出ていた。
LM6200は、ポータブル用ミキサーで、6チャンネルの入力、それぞれにレベルコントロールをもつ。
末尾にRのつくモデルは、1、2チャンネルにRIAAイコライザーカードを搭載したモデルである。
LM6200Rだと、ライン入力はのこり4チャンネル、つまり左右で2チャンネル必要だから、ライン入力は2系統となる。
LM6200Rと便宜上呼んでいるが、正確にはミキサー部がLM6200であり、VUメーター部はVU6200で、
独立した筐体をトランクケースにラックマウントしている。
ライン入力がさらに必要な場合には、LM6200を足すことで対応できる。
入出力はXLR端子を使い、プロ用機器という性格上、すべてバランス対応なのは言うまでもない。
質実剛健なつくりのプロ用機器として、LM6200Rは、岩崎先生が愛用されていたし、
山中先生も所有されていた。
マークレビンソン(Mark Levinson)というブランドが、
他のオーディオ・ブランドと異なる点は、
ブランドに、自分の名前をフルネームでつけたことではないだろうか。
マークレビンソン以前にも、マランツ、マッキントッシュなど
創立者、中心人物の名前をブランドにしたメーカーはいくつもある。
けれど、どれもファミリーネームだけで、
創立者のフルネームをそのままブランドにはしていない。
フルネームをブランドにしたメーカーは、
マークレビンソン以外にも、JR、JBLなどがあるが、
創立者のフルネームのイニシャルどまり。
最近ではジェフ・ロゥランド・デザイン・グループが、
創立者のフルネームを使っているが、
これは最初ローランド・リサーチだった。
けれど、日本のローランド社からのクレームで、
日本語表記がロゥランド・リサーチになり、
それでもまだ紛わしいというクレームのため、
現在の社名になったわけで、
マークレビンソン(Mark Levinson)とは異なる。
バウエン製モジュールのLNP2と
自社製モジュールのLNP2の音の違いは、
このことは大きく関係しているように思えてならない。
2005年夏、ある人から、瀬川先生に関する話をきいた。
1981年(亡くなられた年)の春、
スイングジャーナルの組合せの取材でのこと。
当時スイングジャーナルの編集部にいたその人が、
取材前に、瀬川先生に組合せに必要な器材をたずねたところ、
「スピーカーはアルテックの620Bを用意してほしい、
アンプはマークレビンソンはもういい、
マイケルソン&オースチンのTVA1とアキュフェーズのC240がいい、
プレーヤーはエクスクルーシヴのP3を」ということだったとのこと。
そして取材当日、620Bのレベルコントロールを、大胆に積極的にいじられたりしながら、
最終的に音をまとめ終わり、満足できる音が出たのか、
「俺がほんとうに好きな音は、こういう音なのかもなぁ......」と
ぽつりとつぶやかれた、ときいた。
そのすこし前に使われていたのは、JBLの4343に、
マークレビンソンのアンプのペア、
そしてアナログプレーヤーは、EMTの927DstかマイクロのRX5000+RY5500(それも二連仕様)。
JBLの組合せとアルテックの組合せの違い、
表面的な違いではなく、本質に関わってくる違いを、どう受けとめるか。
MLAS(Mark Levinson Audio Systems)を主宰していたマーク・レヴィンソンは、
ミュージシャンであり、録音エンジニアでもあり、
そしてすぐれたアンプ・エンジニア──、
憧れであり、スーパースターのような存在でもあり、
マーク・レヴィンソンに追いつき、追い越せ、が、じつは目標だった。
LNP2やJC2をこえるアンプを、自分の手でつくり上げる。
もっと魅力的なアンプをつくりあげる。
そのために必要なことはすべて自分でやらなければ、
マーク・レヴィンソンは越えられない。
とにかくアンプを設計するためには電子回路の勉強、
これもはじめたが、一朝一夕にマスターできるものじゃない。
(中学生の私にも)いますぐカタチになるのは、パネル・フェイスだな、
かっこいいパネルだったら、なんとかなるんじゃないかと思って、
夜な夜なアンプのパネルのスケッチを何枚も書いていた時期がある。
フリーハンドでスケッチ(というよりも落書きにちかい)を描いたり、
定規とコンパス使って、2分の1サイズに縮小した図を描いたことも。
横幅19インチのJC2を原寸で描くための紙がなかったもので、
2分の1サイズで描いていたわけだ。
(とにかく薄型のかっこいいアンプにしたかった)
「手本」を用意して、いろいろツマミの形や大きさ、数を変えたりしながら、
中学生の頭で考えつくことは、とにかくやったつもりになっていた。
1977〜78年、中学3年の1年間、飽きずにやっていた。
けれども......。
※
そんなことをやっていたことは、すっかり忘れていた。
当時はまじめにやっていたのに、きれいさっぱり忘れていた、このことを、
ある時、ステージ上のスクリーンに映し出されている写真を見て思い出し、 驚いた。
このときのことは、ここ
(http://
1994年の草月ホールでの川崎先生の講演で、
スクリーンに映し出されたSZ1000を見た時に、
中学時代の、そのことを思い出した。
当時、私が「手本」としたアンプのひとつが、そこに映っていたからだ。
デザインの勉強なんて何もしたことがない中学生が、
アンプのデザインをしようと思い立っても、なにか手本がないと無理、
その手本を元にあれこれやれば、きっとかっこよくなるはず、と信じて、
落書きの域を出ないスケッチを、それこそ何枚と書いていた。
当時、薄型のコントロールアンプ各社から出ていた。
ヤマハのC2、パイオニアのC21、ラックスのCL32などがあったなかで、
選んだのはオーレックスのSZ1000、そしてもう一機種、同じくオーレックスのSY77。
SZ1000のパネルの横幅は、比較的小さめだったので、
まずこれを1U・19インチ・サイズにしたらどうなるか。
ツマミの位置と大きさを広告の写真から計算して、
19インチのパネルサイズだと、どの位置になり、どのくらいの径になるのか。
そんなことから初めて、ツマミの形を変えてみたり、位置をすこしずつずらしてみたり、
思いつく限りいろんなことをやっても、手本を越えることができない。
SY77に関しても、同じようなことをやっていた。
SY77は、オプションのラックハンドルをつけると、 19インチ・サイズになる。
1年間やっても、カッコよくならない。
「なぜ? こんなにやっているのに......」と当時は思っていた。
その答えが、十数年後の、1994年に判明。
同時に、われながら、中学生にしてはモノを見る目があったな、と
すこしだけ自惚れるとともに、
敗北に似たものを感じたため、やめたことも思い出していた。
あらためて言うまでもSZ1000もSY77も、川崎先生の手によるデザインだ。
