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2230も2231も設計者は、エド・メイだ。

エド・メイによれば、アクアプラス処理を施したウーファーは、
カットオフ周波数が比較的低い4ウェイ構成においては、問題は発生しないが、
もうすこし高い周波数(たとえば4333の800Hz)になると、
アクアプラスによりダンプされたコーン紙が、中低域より上の帯域で波打つこと、
さらに感度も低下する、らしい。

最低共振周波数はアクアプラス処理したものと同等か、より低い値にまでひろげ、
同時に中低域の改善をはかるためにあみ出したのが、質量制御リングである。

アルミ製のリングを、コーン紙とボイスコイル・ボビンとの接合部に装着するという手法で、
軽くて堅いコーン紙を採用しながら、振動系の質量はこのリングによってふえ、
最低共振周波数も低くすることが可能になっている。

この手法のポイントは、質量を駆動点・振動板のほぼ中心に集中させていることだ。
4344のネットワークは3144だが、JBLのサイトに回路図はない。

ステレオサウンドが1982年に出版した別冊「Sound Connoisseur(サウンドコニサー)」に、
4344のネットワークの回路図は載っている。

4345と4344は、ウーファー以外のユニットは共通とはいうものの、
ベースとなるウーファーそのものが、口径も18インチと15インチで異り、
表面からはわからないが、コーン紙の裏を見比べると、4345のウーファー2245Hは白い。
ランサプラス処理(以前はアクアプラスと呼ばれていた)が施されているからだ。
4350の最初期型に搭載されていたウーファー2230ではじめて採用されたさの手法は、
低域の最低共振周波数を下げるとともに、ダンピング効果もある。
ある種の塗装をコーン紙に施すわけだが、国内メーカーのいくつかが、試みたことがあるという話をきいている。

塗り方にもノウハウがあるため、うまくいった例はほとんどない、らしい。

この処理だけでなく、2245Hは、2231A(H)や2235Hとは、あきらかに異る設計である。

2231A(H)も2235Hも、アクアプラス処理はされていない。
かわりに質量制御リング(Mass Control Ring)を採用している。
もうひとつ目につくことは、タップ付きのコイルの採用である。
2441と2405のレベルを落とすために使われている。

4355のネットワーク3155は、4344のネットワーク3144、4345のネットワーク3145と共通する設計である。

ちなみに4345と4344のネットワークの型番は異るものの、実際にはまったく同じものである。
少なくとも回路図はコイルやコンデンサーの定数すべて同じ。

4344のネットワークが4343のネットワークと比較して語られたことがあったためだろうか、
一部の人のあいだで、JBLがタップ付きのコイルを使い出したのは4344(もしくは4345)から、と言われているようだが、
この手法そのものは新しいものではなく、BBCモニターではよく使われているし、
JBLのスタジオモニターでも、4333、4320などですでに使われていたし、
それ以前のスピーカーシステムにもある。

4320のネットワーク4310のコイルは、タップがひとつだけでなく3つ出ていて、
これらのタップを切り替えることで、レベルをコントロールしている。

こうやって見ていくと、4343(4341)、4350のネットワークのほうが、
JBLの製品のなかでは、やや異色の設計ともいえる。
4350の後継機4355は、ウーファーが2231Aから、4344にも使われている2235Hへ、
ミッドバスは2202であることは同じだが、フェライト仕様の2202Hへ、
ミッドハイは2440からダイアフラムが改良され高域のレスポンスが伸びた2441へ、と変更されている。

トゥイーターの24045は変更なしだが、途中のロットからこれもフェライト仕様の2405Hになっているようだ。

ネットワークは3107から3155に変更されている。

3107と3155の回路図を見比べると、それだけで、4350と4355の開発者が代っていることがわかる。

3155ではレベルコントロールが増えている。ミッドハイの2441用のが増えている。
4350の2202と2440のように、固定はされていない。
さらに通常のネットワークのように、ミッドハイにはローパス(ハイカット)フィルターがはいり、
この部分に関してはバンドパスフィルターになっている。

さらに細かい点を見ていくと、使用されているすべてのコンデンサーに、
小容量(0.01μF)のコンデンサーが並列につながっている。高域特性の改善のためである。
また連続可変のアッテネーターのカバーが、4343、4350に使われていた磁性体ではなくなっている。

ネットワークをおさめていた金属ケースも排除されている。
スピーカーシステムのデヴァイディングネットワークは、
ローパス(ハイカット)、ハイパス(ローカット)、このふたつのフィルターによって構成されている。

スコーカーやミッドバスの帯域には、ローパスとハイパスを組み合わせたバンドパスフィルターが使われる。

2ウェイまでのシステムには存在しない、このバンドパスフィルターは、
ローパスとハイパスの、それぞれの周波数が近接しすぎると互いに影響し合う。

3ウェイでは、通常1つのバンドパスが、4ウェイでは2つのバンドパスフィルターが存在する。
しかも帯域分割数が増えるほど──4ウェイ、5ウェイとなるほどに個々のユニットの受持帯域は狭くなる。
つまりローパスとハイパスの周波数がより近接することになる。

この影響をふせぐために、4ウェイ(特別仕様で5ウェイもあった)のLo-DのHS10000は、
順次2分式型ネットワークを採用している。

4ウェイでバンドパスフィルターが使われるのは、ミッドバスとミッドハイ。
4350では、ミッドバスのハイパス(ローカット)は、バイアンプ仕様により、
エレクトロニック・デヴァイディングネットワークで処理する。
4350のミッドバスのネットワークにはローパス(ハイカット)のみ。

ミッドハイ(2440)は、前述したようにローパス(ハイカット)フィルターはない。
ハイパス(ローカット)のみだから、ここにもバンドパスフィルターは存在しないことになる。

4350は内蔵ネットワークに、バンドパスフィルターを持たない4ウェイシステムである。
2440の再生周波数帯域は、500〜12,000Hzで、
おそらく12kHzでスパッとなくなるわけではないだろう、と書いたが、
JBLの発表した周波数レスポンスのグラフを見ると、ほぼ10kHz以上は急激にレスポンスが低下している。

そのグラフは、水平90°、垂直40°のラジアルホーン2350に取りつけての測定である。
発表値としては、500〜9,500Hz(±3dB)。

4350においては、2392(2308+2311)と組み合わされている。
こちらは水平80°、垂直45°のスラントプレートホーンだから、
10kHz近辺の特性は多少は変化するだろうが、大きな変化ではない。

2440のダイアフラムのエッジを折紙型にした2441では、10kHz以上も、
ややダラ下がりながらも、きれいに伸びている。
2440のカタログ発表値での再生周波数帯域は、500〜12,000Hz。
2420の800〜20,000Hzとくらべると、上限の値は低いけれど、
12kHz以上がスパッとなくなるわけではなく、減衰しながらも、もうすこし上の帯域まで出しているはずだ。

となると、4350についている、ただひとつのレベルコントロール、
つまり2405のレベルコントロールを絞り切って、エレクトロニッククロスオーバーネットワークを通さずに、
つまり2231Aと2405を鳴らさずに、2202と2440だけを鳴らしてみると、
かなりの帯域を再生していることが聴き取れるはずだ。

2202にはローカットがないし、2440にはハイカットフィルターがないわけだから。

こうやってみていくと、4350は、2440と2202のペアで構成される広帯域で強力なスコーカー中心の、
疑似的な3ウェイ・システムととらえることもできる。

4350の改良版としてとらえられている4355の構成と比較してみると、4350の特徴は、よりはっきりとしてくる。
4350を構成するスピーカーユニットの中で、もっとも強力で、能率が高いのは、
トゥイーターの2405ではなく、ミッドハイを受け持つ2440ドライバーである。

この2440とミッドバスの30cm口径ウーファーの2202のあいだには、
前述したように連続可変のレベルコントロールが存在しない。

このふたつのユニットが4350の中核をなしていると考えてもいいように思う。
つい4350をみると、2231Aのダブルウーファーに目が行ってしまいがちだが、
真に注目すべきは、真中のふたつのユニットのはずだ。

2440と2202のペアが受け持つ帯域は、カタログ発表値では250Hzから9kHz。5オクターブにわたっている。
じつは、4350のネットワーク3107の回路図をみれば、さらに広いことがわかる。

2202には、1.8mHのコイルが直列、20μFのコンデンサーが並列にはいっている。
12dBの遮断特性のハイカットフィルターだ。

2440には、8μFのコンデンサーが直列、1.8mHのコイルが並列、そのあとにT型の固定アッテネーターが入っている。
これだけである。つまり12dBの遮断特性のローカットフィルターがあるだけで、
とうぜんあるべきはずのハイカットフィルターが、ない。
ボザークは、この項の(その1)にも書いているように、
スピーカーユニットのラインナップは、4種類だけである。

JBLは、1978年の時点(ステレオサウンド発行のHiFi Stereo Guideに掲載されている単売ユニット)で、
フルレンジユニットが17、トゥイーターが4、ドライバーが9、ウーファーが14種類ある。

スピーカーメーカーとして、JBLとボザークを対比させていくと、
西海岸と東海岸、バスレフ型やホーン型エンクロージュアが主流のJBLと密閉型のボザーク。

スピーカーユニットの数も大きく違うが、その振動板においても、
JBLは、コーン型ユニットだけに絞っても、形状、制振材の塗布の有無、紙の質などが、
それぞれの用途によって使い分けられている。
ボザークは、ウーファーはパルプコーン、それ以外はメタルコーンで、
どちらも不要な振動を抑える工夫がなされている。

JBLのラインナップの多彩さ、派手さのまえでは、ボザークは地味にうつる。

スピーカーユニットの使用法においても、JBLは4350のダブルウーファーを除くと、
基本的にはパラレル使用はほとんどない。
ボザークは、東海岸の他のメーカーと同じように、ダブルウーファーだけでなく、
スコーカーやトゥイーターも、多数使用している。

そして4343は瀬川先生が愛用されたもの、B310は井上先生が愛用されたもの。
このふたつのスピーカーシステムには、ひとつの共通点があり、
それは瀬川先生と井上先生のスピーカーに対する考え方の共通点ともいえるのではないだろうか。
ボザークの音は、いちどしか聴いたことがない。
それも聴いたといっても、耳にしたことがある、といった程度で、決していい状態で鳴っていたとは思えなかったし、
正直、どんな音だったのかは、まったくといってよいほど記憶に残っていない。

しかも型番もなんだったのかはっきりしてない。
エンクロージュアもボザーク純正のシステムだったことは間違いないと記憶しているが......。
ボザークの輸入元は一時期トリオだったことがあり、価格を抑えるために、
エンクロージュアは日本で作っていて、ユニットを組み込んだモデルもある。

だから井上先生の言葉を参考にしたい。
     *
ボザークのサウンド傾向は、重厚で、密度の高い音で、穏やかな、いわば、大人の風格を感じさせる米国東海岸、それも、ニューイングランドと呼ばれるボストン産ならではの音が特徴であった。このサウンドは、同じアメリカでもかつて日本で「カリフォルニアの青い空」と形容された、JBLやアルテックなどの、明るく、小気味よく、シャープで反応の速い音のウェスタン・エレクトリック系の音とは対照的なものであった。
     *
ボザークのよさは、十代の若造がちょい聴きしたぐらいでわかるようなものでないことだけは、はっきりとしている。
もう一度、コントロールアンプ、パワーアンプとも左チャンネルを使った音を聴く。
そしてスピーカーを、右チャンネルに接ぎかえる。

同じ音で鳴ることは、稀である。ここでも、聴こえ方は違ってくる。

ホワイトノイズを聴くのが嫌な人は、音楽を聴いて試してみてほしい。
マルゴリスがいうように、聴きなれたディスクをモノーラルにして聴くのがいいと思う。

コントロールアンプとパワーアンプのあいだに、
グラフィックイコライザーやパラメトリックイコライザーを挿入している場合には、
もちろんそれらの機器の左右チャンネルの音を個別に聴いておく。

そうやってさまざまな組合せの音を聴いて、左右の音の違いが最も少なくなる組合せを選択するだけで、
音場感の再現性に磨きがかかる。

ひとつひとつ接ぎかえて、その音をきちんとメモして、ということをくり返すのに、お金はいらない。
ただひとつ行動するだけである。

音は、確実に変る。これも「使いこなし」である。なにも特別なテクニックは必要としない。
丹念に音を聴いて判断していくだけ、である。

ただ、必ずしも音がよくなるわけではないことも最後につけ加えておく。
左右チャンネルを指定通りに接続している状態がいいということも、当然あるからだ。
このノイズの出方も、注意ぶかく聴くと、左右チャンネルで微妙に違うことがわかるはずだ。

フォノイコライザーがあればそれを接いでノイズを出せばいいが、
CDのみの場合であれば、チェック用CDにホワイトノイズがはいっているものがあるから、それを使えばいい。
ただし音量には気をつけること。

CDプレーヤーの左チャンネル(別に右チャンネルでもいい)から出力を取り出し、
コントロールアンプの左チャンネル、パワーアンプの左チャンネルにいれて、
スピーカーも左チャンネルのみを使い、ノイズの鳴り方を確かめる。

次にコントロールアンプまではそのままで、パワーアンプのみ右チャンネルに信号をいれ、
スピーカーはもちろん左チャンネルで、またノイズを聴く。

パワーアンプによっては、この差はわずかかもしれないし、かなり違った鳴り方をするものもある。
少なくとも、左チャンネルのときと、まったく同一であることは、まずない。

今度はパワーアンプは左チャンネルに戻し、コントロールアンプのみ右チャンネルを使用して、
また同じことをくり返す。やはりノイズの出方は違うはずだ。

さらにコントロールアンプ、パワーアンプとも右チャンネルにする。

これで、4つの組合せの、ノイズの出方をチェックしたことになるわけだ。
モノーラルの状態で音を確認することは、昔ながらの方法なのだが、
いまではすっかり忘れさられているような気がする。

アンプには、入力端子、出力端子にL、Rの指定がある。
とはいえ、なにもこの通りに接続しなければならないわけでは、決してない。
左チャンネルの信号が、最終的に左チャンネルのスピーカーに届けばいいわけで、
そこまでの系路は、どこを通ってもいい。

最新のアンプは、フォノイコライザーを搭載していなかったり、測定上のSN比が向上しているため、
ボリュウムを目いっぱいあげても、スピーカーからノイズがはっきりと聴こえることはほとんどない。
けれど、アナログディスク全盛時代は、入力セレクターをPHONOにして、ボリュウムを最大にすると、
けっこうなノイズがスピーカーから聴こえてきた。

このノイズのおかげで、プログラムソースが何もなくても、それにアース電位を測るテスターがなくても、
AC極性をあわせることが可能だった。

ACの極性をかえると、このノイズの質、量の出方が変化するからで、
とうぜんノイズの質がザラつかず、レベルの低い方が、正しいAC極性というわけだ。
低音を基準にしてレベルコントロールを行なうということは、はっきりと意識していなくても、
ほとんどのひとが、そうしていることであり、このことが、たとえばサブウーファーの導入にあたって、
反対に、難しさになっていく気もする。

サブウーファーを導入したものの、うまく調整できず、結局は元のシステムに戻してしまったという話を、
直接・間接的に聞くことがあるし、インターネットでも、わりと見かけることである。

残念だと思う。良質な低音が鳴りはじめれば、いままで余裕をもって鳴っていたと思っていたのが、
どこか精いっぱいであったかのように、さらなる余裕をもって、伸びやかに響きが部屋に満ちていくのだから。

なぜサブウーファーの調整が難しい、と感じるのか。
それはメインスピーカーのレベルを基準として、サブウーファーのレベルを調整しようとするからではないだろうか。

土台となる低音(ウーファー)を基準とする調整方法に、知らず知らずのうちになれてしまっているのに、
なぜかサブウーファーの調整時には、そのことを忘れてしまいがちになっていないだろうか。

サブウーファーのレベルを基準として、メインスピーカーのレベルを調整してみる、という感覚を意識するだけで、
サブウーファーの使いこなしのコツのひとつだと、私は思っている。
ステレオサウンド 51号で、JBLのマルゴリスは、レベル調整のやり方について語っている。

使うレコードは、もちろんよく知っているもの。それをモノーラルで再生すること、が第一。
だからスピーカーは、片チャンネルずつ鳴らし調整していくことになる。

4343の場合、3つあるレベルコントロールすべて絞り込むこと、が第二。
そして音楽を聴き、ウーファーとミッドバスのバランスをとる。次にミッドハイのレベルを、
最後にトゥイーターを調整していく。

もう片方の4343も、同様に調整したうえで、音像イメージがセンターに明確に定位するように、
左右のスピーカーのバランスをとることが、第三。

音像がセンターにぴしっとあった時点で、ステレオで鳴らし、
レコードを変えながら、微調整していくことが、第四のポイントである。

このやり方は、いうまでもなく、レベルコントロールをもつスピーカーシステムであれば、
なにもJBLのスピーカーシステムでなくても、有効な調整方法だと思う。
マルチアンプで組んでいるシステムの調整にも、もちろん有効だ。

このやり方でもわかるように、スピーカーシステムの基準は、低音(ウーファー)にある、ということ。
音楽のベーシックトーンは、低音であり、まず土台となる低音のレベルを決めたうえで、
その上に、中低音・中高音・高音を構築していくべきである。
現在のJBLの、レベルコントロールに関する考え方は変化しているのかもしれないが、
少なくとも4300シリーズを積極的に展開していた頃のJBLは、レベルコントロールは、
使い手が積極的に調整するためのものと考えていた、と受けとっていいだろう。

ユニットの能率に、±1dBの差があることを前提していた当時のJBLの製品の中にあって、
4350はレベルコントロールがひとつだけで、トゥイーターの2405だけの調整しかできないということは、
何を意味しているのだろうか。

少なくともミッドバス(2202)とミッドハイ(2440)のレベルは、いじるべからず、ということであり、
この二つのユニットに関しては、選別して、能率差がないものを組み込んである、と受けとっていいはずだ。

4350が、他の4300シリーズのスピーカーシステムと決定的に異る点は、
バイアンプ駆動ということよりも、ここにある、と私は考えている。
2405ほどではないが、私の経験では、JBLのユニットは、総じてコーン型ユニットよりも、
ドライバーユニットに、能率差はわりと顕著なことである。

ステレオサウンドの試聴室にあった4344でも、レベルコントロールを追い込んでいくと、
左右で、ミッドハイ(2421)のレベル差が、1dBほどあった。

たとえば4343(4344)の例でいえば、ミッドバスのユニットの能率の差は、左右チャンネルでないとして、
レベルコントロールの0dBの位置で、ミッドハイ(2420もしくは2421)の能率の差があったとしたら、
わずかではあるが、クロスオーバー周波数が左右チャンネルで異ることになる。
単にミッドハイのレベルがすこし高いだけではない。

もちろん2420の能率の差があったところで、
ミッドハイのローカットの周波数はネットワークによって決まるので一定だが、
カットオフ周波数・イコール・クロスオーバー周波数ではない。

ミッドハイのレベルが高くなると、ミッドバスとのクロスオーバー周波数は、すこし下の周波数に移動する。

JBLのマルゴリスは、ステレオサウンド 51号で、レベルコントロールについて、
「アンプのトーンコントロールとは違いますから、これを動かしたからといって歪が増えたりするわけではありません。十分レベルコントロールを活用して、それぞれの部屋に合ったレベルバランスに調整していただきたいと思います。」
と語っている。
4350でふしぎなのは、ミッドバスとミッドハイのレベルコントロールがない点である。

ステレオサウンド 51号に「♯4343研究」という連載の1回目が載っている。
JBLプロフェッショナル・ディヴィジョンのゲーリー・マルゴリス氏とブルース・スクローガン氏に、
ステレオサウンド編集部がきき手として、4343のセッティングとチューニングの説明している。

そこでマルゴリスは、スピーカーのレベルコントロールついて、
「リスニングルーム個々によって全く音響条件が違うわけですから、
それぞれの部屋で最適なバランスが得られるように、充分に活用してください。」と語っている。
さらに「スピーカーユニット自体も、生産上の能率差はプラス・マイナス1dBが許容されていますから、
最大2dBの能率差が出ることもあるわけです」と続けている。

あくまでも最大2dBの能率差ということだから、運がよければ、ほとんど差がないこともあるだろうし、
まあ、1dBぐらいは違っているだろう、と覚悟しておいたほうがいい(と私は思っている)。

とくに能率差がわりと多く発生しているのが、トゥイーターの2405である。

この記事中にある、マルゴリス調整後の4343のレベルコントロールの写真を見ると、
2405のレベルは、左右でかなり差があることがわかる。
自作スピーカーのごく一部の例外を除けば、そして既製のスピーカーシステムは、
ウーファーの能率がいちばん低く、それより上の帯域を受け持つユニット、
トゥイーター、スコーカーのレベルを絞り、能率を合わせている。

言いかえれば、能率の基準はウーファーにあり、
レベルコントロールの調整の基準もウーファーにある、ということだ。

つまり、いちばん低い能率のウーファーのレベルは、当然だが固定されているわけだ。

スピーカーシステムのレベル調整において、この当然すぎることを意識することは、あまりないのかもしれない。

これが、4350には、あてはまらない。

瀬川先生は、ステレオサウンドの43号に、
「使い手がよほど巧みなコントロールを加えないかぎり、
4350Aは、わめき、鳴きさけび、手のつけられないじゃじゃ馬にもなる」と書かれている。

4350のもつ、この性格は、レベルコントロール調整時の意識のなかにも潜んでいる、といえないだろうか。
4ウェイの4341、4343、4344、4345のレベルコントロールは3つ。
3ウェイの4333は2つ、2ウェイの4320、4331は1つ。

当然のことだが、低域(ウーファー)以外のすべての帯域に、
それぞれレベルコントロールがあり、ウーファーを基準に、それぞれのユニットのレベルは変えられる。

4355はバイアンプ駆動だから、低域とそれより上の3つの帯域については、
チャンネルデバイダーのレベルセットでコントロールできる。
そのうえで、ミッドハイとトゥイーターは、4355のレベルコントロールを使えば、
それぞれのユニットのレベルは変えられる。

4350のレベルコントロールはトゥイーターの2405用であって、
つまりチャンネルデバイダーでレベルコントロールしようと、
ミッドバスとミッドハイのふたつのレベルは固定されている。

2202Aと2440の組合せによる2ウェイ・スピーカーが4350の中心にあり、
この2ウェイに関しては、ユーザーはいっさい触れられない設計になっている。
いじることが許されているのは、ウーファーとトゥイーターの、この2ウェイに対する相対的なレベルである。
4350と4355の違いは、ネットワークの回路図を見なくても外観からでもわかることだが、
改めて回路図を比較していて、決定的な違いを思い出した。

4350は、ウーファーが2230(4350Aは2231A)、ミッドバスは2202A、
ミッドハイが2440とホーン2311と音響レンズ2308の組合せ、トゥイーターが2405。バスレフポートは6つ。

4355は、ウーファーが2235H、ミッドバスが2202H、ミッドハイは2241と2311+2308の組合せ、
トゥイーターは2405で、バスレフポートは2つ。

ユニットそのものに大きな変更はない。
外観上の変更で目につくのはバスレフポートの数の違いだが、
それにひっそりと隠れているのが、レベルコントロールの数の違いである。

4350は1つ、4355は2つ。
数の違いとしては「1」だから、それほど大きな違いとは受けとれないかもしれないが、
4350、4355ともにバイアンプ駆動であるから、大きな違いである。
以前書いているが、4343を設計したのは、パット・エヴァリッジ。
彼は、4350、4341(4340)も手がけていることは判っているが、4343以降はJBLを離れてしまったようだ。

4343のネットワーク3143、4350用の3107、4341用の3141
4341のバイアンプ駆動モデル4340用の3140を比較してもらいたい。

まず気がつくのは、3143と3141は、ほとんど同じものだということである。
違いは、4343は切替スイッチにより、ネットワーク駆動とバイアンプ駆動が可能になっている。
そのためのスイッチが加えられたのが4343用の3143で、回路構成、部品の定数は、3143と3141は同一である。

もっとも4341と4343は使用ユニットも共通しているため、ネットワークが同じでも不思議はない。

バイアンプ駆動が前提の4350と4340のネットワークを比較すると、あることに気がつく。
そのことは、4350と4355との、あまり話題になることはないのが不思議だが、決定的な違いともいえることがらだ。
部屋の広さ、最大音圧レベルが特定される条件では、ホーン型でも6dB/oct.での使用は、
充分ありだと、個人的に考えているが、
使用条件が千差万別で、どういう使われ方をされるのかわからない、市販品をつくる側にたてば、
やはりホーン型スピーカーには、6dB/oct.のネットワークは採用しない。

エド・メイが4320のネットワーク3110において、やっていることは至極当然のこと。
彼の凄さは、同時期の4310において、まったく正反対ともいえる、
これ以上部品点数を削ることのできないネットワークを設計し、
4320も4310も、要求通りのものをつくりあげていることである。
この発想の柔軟さは、見事である。

さらに4310のネットワークをつくることもできれば、
マランツに移ってからは、ネットワークによる位相補正まで行なっている。

ひとつの手法に固執することなく、目的・要求に応じて、最適と判断される手法を使い分けてこそ、
オーディオエンジニアリングのあるべき姿といえよう。
4333を、4310(4311)のようなコンデンサーだけによるローカットフィルターによるネットワークで鳴らす場合、
もしくはコイルを使ったハイカットフィルターも使い、いわゆる通常の6dB/oct.のネットワークにしたとする。

ゆるやか減衰特性で、クロスオーバー周波数が同じあれば、トゥイーター(ドライバー)には、
かなり下の帯域まで、そこそこなレベルで入力されることになる。
こう書いていくと、すぐにでも破損しそうで、音量もかなり小さめになると想像されるだろう。

JBLのホーン型ユニットを使ったスタジオモニターを6dB/oct.のネットワークなり、
チャンネルデバイダーを用いて鳴らしたとして、どこまでの音量までいえるのか。

もう20年近く前の話になるが、早瀬さんは、4355を鳴らされていた時に、
パッシヴのチャンネルデバイダー(もちろん6dB/oct.)で、4ウェイのマルチアンプドライブを試みられている。

かなり広いリスニングルームにおいて、4355は不足ない音量まで再生できていたようだ。

爆音というレベルでの再生はおそらく無理だったろうが、その感触からすると、
10畳程度の広さの空間ならば、4ウェイでなくとも、4333でも、意外と6dB/oct.でいけるのかもしれない。

6dB/oct.のネットワークとは直接関係のない話だが、ウェストレイクのスピーカーシステムで、
JBLの2420をホーンなしで、トゥイーターとして使われていた例もある。

意外と丈夫なのかもしれないが、それでも4333や4343で6dB/oct.で鳴らされるのあれば、
注意は、12dBや18dBのネットワークとは違い、それなりに必要になってくる。
同じ時期に、同じ人間が設計したふたつのネットワーク(4310用と4320用の3110)の違いは、
そのまま4311と4320の使用目的の違いでもある。

4310は、アルテック604の音のキャラクターを模倣しようとしたものに対し、
4320は、604ユニットを搭載した612システムにとってかわろう、とJBLが開発した本格的なモニタースピーカーである。

当然中高域にはホーン型を採用している。
すべてコーン型の4310とはユニットの規模が、ウーファーのサイズをはじめ、投入されている物量が大きく異る。
システムとしての規模も、そうだ。

そして想定されるモニタリング時の音量も違いもある。

4320、受け継いだ4331、その3ウェイ仕様の4333のネットワークが、もし6dB/oct.仕様であったとすれば、
ドライバーユニットの破損が、録音スタジオの現場では相次ぐことは容易に想像できる。

いうまでもないことだが、コンプレッションドライバー型ではホーンロードがかからなくなった帯域では、
わずかの過大入力でもダイアフラム破損につながる。
コーン型ユニットのように受持ち帯域もさほど広くはない。

しかも4300シリーズでつかわれているホーンは、それほど大型のものではない。
3110は、ウーファー、トゥイーターともにスロープ特性は12dB/oct.である。

ウーファー側の信号系路には、コイルとコンデンサーが、それぞれ直列と並列にはいり、
そのあとに、10Ωの抵抗と13.5μFのコンデンサーを直列接続したものを、ウーファーに対して並列にいれている。

ホーン側の信号系路には、タップ付きのインダクター(コイル)が使われている。
BBCモニター系のネットワークにもよく使われる手法である。

高域側にホーン型を採用した場合、一般的にウーファーよりも能率が高く、
固定抵抗および連続可変抵抗を入れて、能率の合わせるわけだが、これでは損失が出て、
抵抗器からの発熱もある。

コイルの途中からいくつかのタップをもうける、この手法は、
マッキントッシュのトランジスターパワーアンプの出力に設けられているオートフォーマーと同じで、
電圧の低下だけを行ない、電流の損失はほとんどない、といわれているものだ。

各ユニットの能率合わせには好適な手法であるのだが、ひとつのタップならまだしも、
複数のタップとなると製造過程が大変となるため、JBLのスタジオモニターでも、必ずしも採用されているわけではない。
意外とうまく鳴ってくれるかもしれない。ただし音量の制約がつく。

4311は、ウーファー、スコーカー、トゥイーターすべてコーン型ユニットを採用している。
4311の前身4310は、1971年に登場している。
正確に、1968年には登場しており、4310の型番を与えられたのが、3年後である。
開発エンジニアは、のちにマランツに移り、900シリーズのスピーカー設計を主導したエド・メイである。

ステレオサウンド刊行の「JBL 60th Anniversary」によると、4310は、当時スタジオモニターとして最も多く使われていた
「アルテックの604の音のキャラクターを、小さなサイズで模倣しよう」というものであったらしい。

同時期、エド・メイは4320のネットワークも手がけている。
4320に搭載されたネットワークの型番は3110。回路図はJBLのサイトから入手できる。

4310のネットワークの回路図は不明だが、4311、その後継機の4312の回路図から推測するに、
コンデンサーによるローカットのみ、であろう。
4311のネットワーク3111の回路図には、コイルの存在がない。

ウーファーへの配線には、ネットワーク構成部品はなにもない。アンプからの信号はそのまま送り込まれる。
スコーカーとトゥイーターに、ローカット用のコンデンサーがそれぞれにひとつずつはいっているだけで、
あとはレベルコントロールが、やはりそれぞれにひとつずつ記載されているだけ。

部品点数は4つである。

同じJBLの3ウェイでも、4333となると、構成部品は多くなり、スロープ特性も違う。

4311はハイカットはユニットの特性をコントロールすることで行ない、
ローカットのみコンデンサーによる6dB/octのカットとなっている。

3ウェイである以上、4311よりも部品点数を減らすことは、スコーカーとトゥイーターの能率を、
ウーファーはまったく同じに設計すれば、レベルコントロールが省けるぐらいで、無理である。

では4333を4311のようなネットワークで鳴らすことはできないのか。
JBLの古い製品の技術的資料は、JBLのサイトから入手できる。
すべてではないが、知りたいものの多くは公開されているし、JBLが買収したUREIの資料も、ここにある。

早瀬さんが、JBLの4300シリーズのネットワークについて、その考察を書き始められている。

4300シリーズのネットワークの回路図も、上記サイトにある。
4343、4333、4341、4355、4345などの他にも、オリンパスのネットワークの回路図も、
SG520、SE400S、SE408S、SA600、SA660のマニュアルもある。

JBLプロフェッショナル・シリーズのネットワーク、3100シリーズは、下2桁の型番によって、
どのスピーカーシステムに採用されたものかが区別される。

4343用は3143、4355用は3150、4345用は3145というふうに、である。
ただしすべてのネットワークの型番が、システムの下2桁と一致しているわけではない。

4350用は3107で、4301用は3103で、それ以外のネットワークについて簡単に説明すると、
3106はクロスオーバー周波数、 8kHzで、16Ω仕様、
3110Aは、 800Hzのクロスオーバー周波数で、ウーファーは8Ω、トゥイーターは16Ω仕様、
3115Aは、500Hzで、ウーファー・8Ω、トゥイーター・16Ω仕様、
3120Aは、 1250Hzで、ウーファー・8Ω、トゥイーター・16Ω仕様、などである。

3135は、バイラジアルホーンを搭載した4435用だ。
シングルウーファーの4430用も初期のモデルは3135で、のちに61449Pに変更されている。

リストには、3111がある。
型番からわかるように、3ウェイのブックシェルフ型スタジオモニター4311用のネットワークだが、
クリックすると、3110の回路図が表示される。
3110のところをクリックすると、3110が表示されるから、リンクミスだが、
3111はブラウザーに表示されるURLの「3110」を「3111」に変えればダウンロードできる。
B310は、井上先生がメインスピーカーとして愛用されてきたボザークのフロアー型システムで、
30cm口径のウーファーを4発、スコーカーは16cm口径を2発、
トゥイーターは、2個1組のものが4発使われており、すべてコーン型ユニットである。

いまもボザークは存在しているが、1981年だったか、一度倒産している。
そんなこともあって、スピーカーの開発・製造は行なっていない。

ユニット構成の特徴からも判断できるように、東海岸のスピーカーメーカーであり、
最高のスピーカーユニットは、それぞれ1種類のみというポリシーで、
20cm口径のフルレンジユニット、B800、30cm口径ウーファーのB199、16cm口径のスコーカーのB209A、
5cm口径トゥイーターのB200Yの4種類のユニットだけを製造し、
これらの組合せを用途に応じて変え、スピーカーシステムを構築している。
ただし普及機は違う。

ウーファー以外は、ゴム系の制動材を両面に塗布したメタルコーン、
ウーファーは、羊毛を混入したパルプコーンで、どちらも振動板の固有音をできるだけ抑えている。
国産4ウェイ・スピーカーの多くが、ピストニックモーションの追求を徹底していた。

振動板への新素材の積極的な採用、フレームやエンクロージュアの構造を見直し、
不要輻射、雑共振の2次放射を徹底的に抑える。

このふたつは、前に述べたように、聴感上のSN比を高めていくことである。

いまや海外のスピーカーの多くも、4ウェイ構成でなくとも、同じところを目指しているように感じられる。

完全なピストニックモーションの実現は、たしかに理想追求の果てにあるといえるだろう。
けれども、はたしてピストニックモーションの完全な実現だけが、
スピーカーの理想の姿とは思えないし、考えられない。

1930年以前に、シーメンスが、リッフェル型のスピーカーをつくりあげている。
0.05mm厚の、555×120mmのジュラルミン振動板は平面だけに、一見リボン型スピーカーのように勘違いされるが、
このスピーカーこそ、ジャーマンフィジックスのDDDユニットの、もうひとつのルーツである。

ピストニックモーションではなく、ベンディングウェーブのスピーカーユニットが、
ジャーマンフィジックスだけでなく、やはり同じドイツのマンガーからも登場したことは、
約80年前に、すでにこの方式のスピーカーをつくっていた国ということと無関係とは思えない。

シーメンスのリッフェル型スピーカーも、DDDユニットに採用されているチタン箔を使い、
現在のコンピューター解析と技術があれば、スピーカーの新しい可能性を示してくれそうな予感がする。

ピストニックモーションの追求を否定する気は、さらさらない。
だが、ピストニックモーションだけがスピーカーの原理ではないことは、
もう一度、思い返さなければならないことだ。

昨年、パイオニアが、リッフェル型のトゥイーターを採用したスピーカーをつくっている。
最近、ヴァリエーションが増えつつあるハイルドライバーも、ベンディングウェーブの一種といえるだろう。

スピーカーの、これからの展開がどうなっていくのか──、
そこに新しい動きが現われていることは確かである。
ステレオサウンドの50号前半の数号にわたって、JBL 4343研究という記事が連載されていた。
詳細は憶えていないが、JBLのスタッフふたりによる4343の鳴らし込みといった内容の回もあった。

彼らが聴感でレベルコントロールを調整した結果(写真)が載っていたが、
左右でレベルコントロールの位置は、多く違っていた。

部屋の影響ももちろんあっての結果であるし、
4343に搭載されているユニットに、多少の音圧上のバラツキもあるのだろう。
それにレベルコントロールに採用されている巻き線式のアッテネーターの精度も、個人的には疑いたい。
意外にも、ここのバラツキが大きかったのかもしれない。

どこにいちばんの原因があるのかは置いておくとして、
少なくとも完成品としての4343は、一台一台すべての周波数特性が、
ある範囲内にぴったり収まっているわけではない。

4343のミッドバス、ミッドハイ、トゥイーターのレベルコントロールは飾りではない。
積極的に、それぞれのユニットのレベルを揃えるために必要不可欠なものだから、ついている。

彼らの調整が終った後、編集部による、
当時話題になっていたポータブル型のスペクトラムアナライザーのIvieの結果は、
左右の4343のレベルが見事に揃っていることを示していた。

BBCモニターに、4343のような連続可変のレベルコントロールがついている機種はない。
工場出荷時には、左右のペアの特性が揃えられていることも、関係していよう。
JBLの4343のウーファー2231A(フェライトモデルは2231H)は、マスコントロールリング
を採用している。

コーン紙とボイスコイルボビンとの接合部に金属製のリング(アルミ製)を装着することで、
比較的軽いコーン紙を使いながらも、振動板のトータル質量を増すことで、f0を拡張している。

マスコントロールリングなしで、コーン紙を厚くして同等の質量とすると、中低域のレスポンスが低下する。
質量の増加を、ボイスコイル付近に集中させているのが、この方式の特徴である。

というものの、やはり振動系の質量は100gをゆうにこえていたと記憶している。
38cm口径のコーン型スピーカーとしても、その質量は重量級といえる。

これを強力な磁気回路で駆動すれば、能率はそこそこ高くなる。

ロジャースPM510の軽量級のポリプロピレンのコーン紙とほどほどの磁気回路でも、
2231Aとほぼ同じ能率を実現している。

理屈の上では、能率が同じであれば、初動感度は等しい。
だが感覚的には同じとは認識しないのではないだろうか。

低能率のスピーカーをハイパワーアンプで鳴らせば、高能率とスピーカーと同等の音圧を得られる。
だからといって、高能率なスピーカーに共通する特質を、そこに聴くことはできない。

数値上でつじつまは合っていても、感覚的なつじつまはどうなのだろう。
SX1000 Laboratoryのインディペンデントベースを、4343に使ってみたらどうなるだろうか。

4343の底板のサイズは63.5×43.5cm、SX1000 Laboratoryはすこし小さめで、55×37cmだから、
おそらく低域がタイトに締まった感じになる可能性がある。

4343にぴったりのインディペンデントベースがあったとしたら、どうなるだろうか。
4343の良さも悪さも露呈し、そのコントラストがはっきりするような気がする。

インディペンデントベースは、材質の固有音を積極的に音づくりに活かすモノとは正反対だけに、
それまでベースやスタンドの固有音に、うまく覆いかぶされていた欠点は、
よりはっきりと耳につくようになるだろう。
もちろん反対にそういった固有に音にマスキングされていた、良い面もはっきりと浮かび上がってくる。

だから固有音を活かしたベースなりスタンドは、スピーカーとの相性が、ことさら重要になる。
インディペンデントベースは、そんなことはまったくないとはいえないまでも、
ほぼ無視できるくらいに、固有音の少ない材質と構造となっている。

それだけに、スピーカーの使いこなしが、ますます重要になってくるのは、容易に想像できよう。
4343の場合、雑共振、不要輻射などの2次放射を適度に抑えることで、
聴感上のSN比を積極的に向上させていくのも、ひとつの正攻法な手だと言えるだろう。

だからといって、抑え過ぎてしまうくらいなら、いっそ4343ではなく、
他のスピーカーにしてしまったほうがいい、と私は思う。

4343とインディペンデントベースの組合せで使うようになったら、
4343に手を加えることになるだろう。

ここ10年以上、ベースやスタンドといえば、スパイクとの併用が当り前のようになっているだけに、
インディペンデントベースの設計方針、構造こそ、もう一度見直される価値がひじょうに高い。
SX1000 Laboratoryの前作SX1000専用スタンドLS1000だと、スピーカーの底面と床との間に空間ができる。
しかもX字型に組まれているため、この空間が三角形のようになり、
不要輻射に一種のメガホンがついたかたちとなっている。
そのためであろう、吸音材を入れた時の音の変化は、やや大きい。

響きの良い木でつくってあるにも関わらず、個性的な面も、すこし持っていると言えるかもしれない。

SX1000 Laboratoryのインディペンデントベースは、LS1000から、一歩も二歩も、
スピーカーとスタンド(ベース)、スタンドと床、スピーカーと床との相関性を考え、
従来のスタンドの構成から、先に進んでいる。

インディペンデントベースは、まずスピーカー本体と同寸法の、重量級の分厚い木製ベースによって、
床をある程度安定化させようする、一種のアブソーバー的なものであり、
スピーカー底面と床との空間を埋め、定在波の影響を抑えようとしている。

もちろんこのベースそのものの不要輻射(2次放射)を抑えるために、
表面処理も考慮されたものに仕上がっている。

この基本ベースの4隅には、それぞれ円筒型の穴が開けられている。
ここに円柱状の脚を挿し込み、これがスピーカーの底面と接する構造だ。
しかも円筒型の穴の内壁には、厚めのフェルトが貼られている。
それぞれの相互干渉と、脚そのものの共振を抑えるためであろう。

4本の脚は、ある意味フリーな状態で、頼りないと感じられるかもしれないが、
SX1000 Laboratory本体が上にのることで、安定する。

SX1000 Laboratoryと4本の脚、脚とベースをネジや接着剤で固定してしまっては、
このベースの意味はなくなる。

専用ベースとしてSX1000 Laboratoryに付属してきながらも、それぞれが独立している意味を考えてほしい。
ステレオサウンドの試聴室では、JBLの4344の下にダイヤトーンのDK5000をかませて使っていた。
DK5000の一辺は9cmだから、4344の底面と床の間に空間が生じる。この空間が案外厄介である。

こんなわずかな空間でも定在波が発生するし、後ろの壁から回り込んできた音との絡みもあるのだろうが、
この空間に吸音材を入れた音を聴いてみてほしい。
もちろん吸音材はグラスウールではなく、天然素材のものが好ましい。
ウールでもいいし、かなり厚手のフェルトでもいい。その吸音材を、スピーカーの底板に接触しないように置く。

その大きさは試聴を繰り返しながら、最適値を決めていくしかないが、とにかく、まず吸音材がある音とない音を聴く。
聴感上のSN比に注目して聴けば、その差は明らかだろう。

ダイヤトーンのスピーカーDS2000専用のスタンドのDK2000は、これらのことも考慮して作りとなっている。
スピーカー本体とベースが平行にならないようになっているし、
スピーカーを支える脚部も、ハの字にすることで、やはり平行面をなくしている。

台輪(ハカマ)付きのスピーカーでも、この定在波は発生している。
ビクターのZero-L10とSX1000 Laboratoryの間には、SX1000が存在する。

SX1000の登場は1988年、SX1000 Laboratoryは1990年。
この5年の間に、個々のユニット、エンクロージュアは細部が見直され、さらに聴感上のSN比は向上している。
エンクロージュアの仕上げも、カナディアンメイプル材をイタリアで染色するという、
凝ったツキ板の採用で、日本のスピーカーには珍しい雰囲気をまとっている。

だが、これ以上に外観の変化で目につくのは、スタンドにおいて、である。

SX1000は、LS1000という専用スタンドが別売りされていた。
このスタンドの構造は、基本的にはZero-L10のものは同じだ。

それがSX1000 laboratoryではインディペンデントベースという名の専用スタンドが、最初から付属している。
SX1000 laboratoryは、エンクロージュアの底面も、他の面と同じ仕上げが施されている。
いわゆる6面化粧仕上げで、大型のブックシェルフ型に分類されるだろうが、
実際にはインディペンデントベースと一体で開発されたものだけに、
この専用ベース込みでの、中型フロアー型と見るべきだ。

このインディペンデントベースの構造は、LS1000とは、まったく異っている。
ビクターのZero-L10とSX1000 Laboratoryを比較する。

Zero-L10は口径39cmコーン型ウーファー、21cmコーン型ミッドバス、6.5cmドーム型ミッドハイ、
3cmドーム型トゥイーターからなり、クロスオーバー周波数は230、950、6600Hz。

SX1000 Laboratoryは、31.5cmコーン型ウーファー、8cmドーム型スコーカー、3cmドーム型トゥイーターで、
クロスオーバー周波数は440、5000Hz。

Zero-L10のミッドハイとトゥイーターの振動板はピュアファインセラミックス、
SX1000 Laboratoryのスコーカーは、ダイヤモンドをコーティングしたピュアファインセラミックス、
トゥイーターはダイヤモンドになっている。

SX1000 Laboratoryの振動板は、より精確なピストニックモーションに必要な条件を、
Zero-L10のそれよりも高い次元で満たしている。

注目すべきはSX1000 Laboratoryのスコーカーで、
Zero-L10のミッドバスとミッドハイが受け持っていた帯域を、
このユニットひとつで、ほぼカバーしている。

ウーファーもひとまわり小さくすることで、指向性を犠牲にすることなく、440Hzまで受け持たせている。
これがZero-L10と同じ39cm口径なら、指向性がやや狭くなりはじめる帯域になってしまったであろう。

SX1000 Laboratoryのインピーダンスは4Ω。ウーファーに直列に入るコイルの値も、
8Ωにくらべて小さくて済む。
4343は、トゥイーターの2405は、ミッドハイの横に配置されているが、
基本的なユニット配置は、インラインになっている。

ダイヤトーンのDS5000とビクターのZero-L10は、どちらもインライン配置を取っていない。

ビクターはG (Gliding) ラインと名付けられた、独自の配置で、上3つのユニットが弧を描くようになっている。
ダイヤトーンの配置は、できるだけ4つのユニットが近接するようになっている。

4ウェイ構成で特に問題となる、垂直方向の指向性を、どれだけ均等に保てるかに対する、
それぞれの、その時点での答えであろう。

この問題に関しては、ユニットの数を減らすのも答えである。

スピーカーユニットの振動板に、より高剛性、より内部音速の速い素材を採用し、
ピストニックモーション領域を、さらに可能な限り広くしていくことで、3ウェイ構成へと、進化していける。

ビクターの解答が、SX1000であり、SX1000 Laboratoryである。
分割振動が起きる周波数をできるだけ高いほうに移動させ、
ピストニックモーションの領域の拡大、より精確な動きを実現、
さらに4ウェイにして、それぞれのスピーカーユニットの、優れている領域のみを使う。

そうすることで浮かび上がってきたのが、エンクロージュアの鳴きだった。
箱鳴りである。

響きのいい素材でエンクロージュアをつくろうと、板厚を増し補強桟をさらに入れ、強度を高めようと、
スピーカーユニットがピストニックモーションなのに対して、
エンクロージュアの鳴きは、ピストニックモーションで振動することは、まずない。

このふたつの響きは、性質の異るものである。
だからこそスピーカーユニットの性能が高くなればなるほど、異質の鳴りだけに、
エンクロージュアの鳴きが、以前よりも耳につくようになってきた。そう言えないだろうか。

ならば、どうするか。
エンクロージュアを、というよりも、エンクロージュアを構成するそれぞれの面──
左右の側板、天板、裏板などをピストニックモーションで振動するような構造にすればいい。

少なくとも、面積の大きい左右の側板だけでも、そういう構造にするだけで、効果はかなり期待できるような気がする。

具体的にどうするか、2つほど考えている。
ただ作るのがどうやって面倒なので、もうすこし簡略化できる構造を考えつくまでは、
手がける気が起きない。
雑共振、不要輻射をひとつひとつできるだけ抑えていく。
その結果、確かに聴感上のSN比は、少しずつ確実に高くなっていく。

けれど、同時に、世の中に存在する、すべての物質には固有音がつきまとう。
どんなに高剛性で内部音速が速い素材であろうが、固有音から逃れることは出来ない。

その固有音が、いままで雑共振や不要輻射にマスキングされていたのだろうか、
ダイヤトーンでいえば DS5000の6年後に登場したDS-V9000は、より徹底した高SN比を実現したためであろう、
特にドーム型振動板に採用されたB4Cの固有の音が、際立って聴こえる。

これはビクターのZero-L10にもいえる。
やはりDS5000より3年後に登場した分だけ、DS5000よりも、高SN比化の手法が随所に見られる。
そして、その分だけ、やはりドーム型振動板のセラミック特有の音が、際立つようになった、と私は受けとめている。

いま思うと、DS5000は、なかなかバランスのとれたスピーカーだったのかもしれない。

そういえば、早瀬さんが、昔、吉祥寺に住んでいたときのスピーカーがDS5000だった。
意外に小さめな音量で鳴っていたように記憶している。
しかも、そういう音量でも、音が痩せるということはなく、余裕があって、静かに鳴っていた。
雑共振を抑えるだけでなく、不要輻射も抑えることで聴感上のSN比は、確実に向上していく。

振動板から出るより先に、スピーカーのフレームから音が出ることは以前書いたとおりだ。
フレームの表面処理も重要になってくるし、フレームをフロントバッフルに固定しているネジにも言える。
ダイヤトーンのDS10000、DS9Zのネジの頭にゴム製のキャップをかぶせていた。
ネジの頭の凹みから不要輻射を抑えるためである。このキャップにも、DIATONEの文字が入っていた。

ラウンドバッフルの採用も、不要輻射を抑えるためで、
DS5000は曲線ではないけれど、両サイドを斜めにカットすることで、鋭角な箇所をなくしている。

4343も、後継機の4344、4344 MkIIも、フロントバッフルはすこし奥に付いている。
その分、直角のコーナーが増えることになり、不要輻射の箇所も増しているわけだ。

4348が、音響レンズの採用をやめたのも、フロントバッフルも引っ込ませていないのも、
聴感上のSN比向上のためであろうし、実際に早瀬さんのところで4343Bと直接比較した際にも、
はっきりと、そのことが確認できたし、
おそらく今後JBLは音響レンズ付きのモデルを開発することはないであろう。

ダイヤトーンのスピーカーは、DS5000までは、フロントバッフルにレベルコントロールがついていたが、
その後に出た機種、DS1000から、レベルコントロールそのものがなくなってしまう。

レベルコントロールを廃したことに賛否あったが、これも不要輻射をなくすための手法である。
レベルコントロールのツマミも、そのまわりのパネル部分も雑共振と不要輻射の元である。
聴感上のSN比を高めるために、井上先生が4343に施されたことを一言で表せば、雑共振を抑えることである。

このことはダイヤトーンのDS5000やビクターのZero-L10を仔細に見ていけば、納得されるだろう。
ひとつひとつ具体例をあげていこうと思ったが、そうすると、この項がいつまでも終らないので省かせていただく。

それでもいくつかあげれば、吸音材はどちらもウール100%の天然素材だし、
エンクロージュアのどの部分を叩いてみても、雑共振を感じさせるところはない。
Zero-L10はドーム型振動板の保護用の金属網を着脱できるようになっていた。
ダイヤトーンもDS5000ではないが、DS1000あたりから鉄と銅の異種金属を使い、
少しでも影響を少なくしようとしていた。

異論もあるだろうが、スピーカーユニットの分割振動も、ある種の雑共振といえるだろう。

国内メーカーが、スピーカーの振動板に高剛性の素材を使いはじめたころから、
聴感上のSN比の向上が始まっていた、といえるし、
ピストニックモーションの追求は、SN比の追求でもあった。
アンプは何も複雑な回路構成のものでなくてもいい。
アナログディスク全盛の時には、FET1石のゼロバイアスのヘッドアンプの自作記事がよく載っていた。
私も作ったことがある。電源は006P角形9V乾電池でいい。コンデンサー、抵抗の使用も僅かだ。
配線さえ間違えなければ、調整箇所もない。

ゼロバイアス・ヘッドアンプの音が優れているかどうかはおいておくが、
こんなアンプでも、プリント基板の音の違いははっきりと出す。

アンプをつくるのが面倒な人は、ガラスエポキシ基板とベークライト基板だけを買ってきて、
親指と人さし指で基板をはさみ、指で弾いた音を聞いてほしい。

テフロン基板単体を手にしたことはないので、弾いたことはないけれど、
ガラスエポキシともベークライトとも違う音なのは確かだ。

プリント基板は、トランジスター、FET、OPアンプ、真空管などの能動素子、
コンデンサー、抵抗、半固定抵抗などの受動素子を支えるベース(基板)である。

こんなことがあったのを思い出す。
DATが登場したときのことだ。ステレオサウンドの試聴室で、各社のDATデッキ、テープの試聴が終った後、
「振ってみろ」と言いながら、井上先生が、使用テープをこちらに渡された。

親指と人さし指ではさみ数回振ってみる。無音ではない。テープ機構の音がする。
カチャカチャという音、カシャカシャという感じに近い音、ガチャガチャと濁る音......、
まったく同じ音がするものはひとつもなかった。

「いましがた聴いた音と、いまのその音、似てるだろう」とも言われた。
そのとおりなのだ。

そのテープにはデジタルで記録される。にも関わらず、アナログ的な要素が音と関係してくる。
スピーカーの聴感上のSN比には、ネットワークの処理も、もちろん大きく関係してくる。

回路が同じ、コンデンサー、コイル、抵抗などの使用パーツも同じでも、
個々のパーツの配置や取りつけ方法が異れば、音は変るし、聴感上のSN比も良くなれば悪くなることもある。

私がステレオサウンドにいた頃のスピーカーは、海外製品でネットワークの構成に、
プリント基板を使っていないものは、ほとんどなかった。
一方国産スピーカーは、いわゆる598のスピーカー(スピーカー1本の価格が59800円のもの)でも、
ネットワークにプリント基板を使ったものは見たことがない。
たいていが木のベースにパーツを固定して、パーツのリード線同士をハンダ付けもしくは圧着している。

エンクロージュア内部の音圧は高い。ネットワークは振動に取り囲まれている。

プリント基板の採用は絶対悪だと言いたいわけではない。
ただ細心の注意が求められる。
ネットワークの設置場所は、エンクロージュア内のどこなのか。またプリント基板の向きはどうなのか。
こんなことでも、聴感上のSN比には影響する。
プリント基板の材質も、もちろん影響する。

スピーカーのネットワークだけでなく、アンプ、CDプレーヤーの大半に使われているのは、
ガラスエポキシ基板である。

20年ほど前に、マークレビンソンが、No.26Lのプリント基板を、
ガラスエポキシからテフロン製のものに交換したNo.26SLを出し、その音の違いが話題になった。
プリント基板が異るだけで、回路もその他の使用パーツはまったく同一なのに、
大きく音が変化したからだ。

このときテフロン基板の電気的特性の良さが注目されたが、理由はこれだけだろうか。

アンプの自作経験がある方のなかには、
プリント基板の材質によって音が違うのは経験されているだろう。
テフロン基板なんてものは入手が容易でないため比較対象に入らなかったが、
少なくともベークライト基板とガラスエポキシ基板の音を較べると、
電気的特性、信頼性ではガラスエポキシが基板が上だし、価格も高いが、
こと音に関しては、ガラスエポキシ基板がいいとは言い切れない。
エンクロージュアの仕上げで、スピーカーの音は変る。
ツキ板と塗装の違いもなあるし、
塗装にしても、一回だけの塗装と2回、3回と重ね塗りしたものも違うし、
一般的なウレタン塗装と、ダイヤトーンがDS10000で採用した漆黒塗装でも、大きな違いがある。

エンクロージュア表面の仕上げが音に影響することは、具体例を細かく挙げなくても周知のことだろう。

エンクロージュアの表面は、なにも表から見えているだけではなく、
エンクロージュア内部から見れば、内側もまた表面である。

外側の表面を丁寧に仕上げているスピーカーでも、エンクロージュア内部、
内側の表面を仕上げているものは、おそらくほとんど存在しないだろう。

けれど、エンクロージュア内部の音は、吸音材の違いが音となって表われるように、封じ込められるものではない。

手間もお金もかかるのはわかっている──。
聴感上のSN比をさらに高めるためには、内側の表面も仕上げたほうがいい。
聴感上のSN比に関係するものとして、エンクロージュア内部の吸音材もあげられる。

ダイヤトーンのDS5000は、SN比の劣化を嫌い、グラスウールではなく100%のウールを採用している。
ビクターのZero-L10もそうだ。

グラウスウールは工業製品で、繊維の一本一本がほぼ同じ太さで同じ長さ。
つまりグラスウールが立てる音、いいかえれば雑音はある帯域に集中する。
帯域が分散してれば、それぞれのレベルも低く、それほど聴感上のSN比を劣化させないが、
なまじ均一なものをつくるのが得意な日本製だと、それが裏目に出てしまう。

4343当時のアメリカのグラスウールは、日本製ほど繊維の太さも長さもそれほど揃っていない。
工業製品としては、出来が悪いということになるのだが、このことがかえって聴感上のSN比を、
国産グラスウールほどは劣化させなかった。

グラスウールを押しつぶしたときの音を聴いてみるとわかる。
その音がエンクロージュア内で発生しているのだ。
ステレオサウンド 63号の記事で井上先生がやられていることは、
4343の聴感上のSN比を高めることである。

そのために音響レンズ2308のフィンの間に消しゴムを小さく刻んだものをはめていく、
2405の取付け穴のメクラ板の鳴きを抑えるためにブチルゴムを、ほんのすこし貼る、などである。

大事なのは、雑共振を適度に抑えられていること。

たとえばメクラ板全面にベタッとたっぷりのブチルゴムを貼れば、ほとんど鳴きを抑えることは出来るが、
音が必ずしも良くなるものではないことは、言うまでもないことだろう。

しかも重要なのは、井上先生がやられていることは、気に喰わなければすぐに原状復帰できる点である。

だからハンダ付けを必要とするパーツの交換については、いっさい語られていない。

ネットワークのコンデンサーを、違う銘柄のモノに交換する場合、
まず既存のパーツを取り外すためにハンダゴテを当てる。
当然熱が加わる。取り外すパーツにも、それ以外のパーツにも、である。
この熱が、少なからずパーツに影響をあたえる。しかもその影響を取り除くことはできない。

井上先生が言われていたのは、アンプでもスピーカーでもいい、
パーツに熱を加えたら、それだけ音は変化(劣化)する。決して元には戻せない、ということだ。

交換したコンデンサーをまた外して元のコンデンサーを取りつけても、
以前のまったく同じ音にはならないことは肝に銘じておきたい。

このことは修理にも言える。
音をよく理解しているメーカーは、アンプの修理の場合、片チャンネルのあるパーツを交換した際、
異常がなくても、反対チャンネルの同じパーツを交換する。
片チャンネルだけのパーツの交換では、熱による影響によって、微妙とはいえ、
左右チャンネルの音に無視できない音の差が生じるためである。

ブチルゴムは、貼った音が気に喰わなければ剥がせばいい。
全面的に気にいらなくても、すこしでもいい点を感じとることが出来たら、
ブチルゴムの大きさや貼り方を工夫してみる。
さらにはメクラ板を、いろんな材質で、厚みを変えて作ってみるという手もある。

そうやって経験を、ひとつひとつ積み重ねていくことは、いずれ宝となる。
ステレオサウンドの63号の記事で、井上先生が、4343の鳴らし込みをやられている。
そこでもバスレフダクトに、すこし手を加えられている。

バスレフダクトに手を突っ込んで、ダクトの縁(もちろん外側)に、
ブチルゴムか布製の粘着テープを少量貼り、鳴きをコントロールするというもの。

たったこれだけのことなのに、確実に音は変化する。
貼った音か、オリジナルそのままの音を採るかは、その人次第だが、
一度は試してみてほしい。そして、バスレフダクトに、わずかに手を加えただけで、
どういうところが変化するのを経験しておくのは、決して無駄にはならない。

バスレフダクトの問題点は、他にもある。固定方法だ。
ほぼすべてのバスレフ型スピーカーは、フロントバッフル(もしくはリアバッフル)側だけで固定している。
つまりバスレフダクトは片側がフリーの、片持ち状態である。
長いダクトであるほど、片持ちは避けたい。

さらにダクトは通常切りっぱなしで、両端の縁は直角になっている。
ここにアール(丸み)をつければ、もちろん音は変化する。
カーヴを大きくすれば、さらに変わる。

材質も金属が、つねに最良というわけではない。
すこし柔らかい材質の方がいい結果が得られることもあるし、
金属でも、ダンプするかしないか、
ウィルソン・ベネッシュのディスカヴァリーのように、
チーンという金属の鳴きを積極的に活かしているスピーカーもある。

バスレフダクトの長さや径を変化させなくても、バスレフダクトをどう処理するかで、
おもしろいくらいに遊べるのである。
DS5000について書くために記憶を辿っているうちに、ひとつ思い出したことがある。
おそらくDS5000が、バイワイヤリング対応の最初のスピーカーではないか、ということだ。

入力端子は2組あり、下がウーファー専用の端子、上がミッドバス、ミッドハイ、トゥイーター用の端子で、
上下の端子は金メッキが施された無酸素銅のバーで結ばれていた。

バイワイヤリング方式は、イギリスから始まったように言われているようだが、
少なくとも1982年にDS5000はバイワイヤリング方式を採用していた。

ただし当時は、バイワイヤリングという言葉がまだ使われていなかった。
DS503のネットワークには、いっさいハンダが使われていない。
コイルやコンデンサーなどのパーツは、すべてスリーブによる圧着で接いでいる。

ハンダによる抵抗分のロス、異種金属同士によるダイオード効果が及ぼす
ローレベルへの悪影響を嫌って、の圧着の全面採用である。

アルミ製のバスレフダクト、圧着によるネットワーク、
これらがどのくらいローレベルのクォリティを向上させているか──、
ステレオサウンドにいたとはいえ、試作品を聴くことは稀である。

けれどDS503に関しては、紙ダクトとハンダ付けネットワークの音を聴いている。

1982年にステレオサウンド別冊として出たサウンドコニサー(Sound Connoisseur)で、
DS503を取りあげている。

紙ダクトのDS503の音は、ずいぶん違っていた。
完成品のDS503(アルミダクト)では、耳をそれほど聳てなくても聴き取れる音が、
あきらかにかすれて、かなりここでこの音が鳴るとわかって集中するからなんとか聴き取れる、
そんな感じになってしまう。あきらかにマスキングされている音になる。

バスレフダクトの材質が変るだけで、これだけの変化である。
アンプの性能を表すSN比が、聴感上という枕詞がつくようになったとはいえ、
スピーカーについても語られるようになったのは、
ダイヤトーンの3ウェイ・ブックシェルフ型DS1000からだったと、私は思っている。

とはいえそれ以前から高SN比の試みは少しずつではあるが、為されていた。
ダイヤトーンのスピーカーでいえば、DS505とDS5000の間に登場した3ウェイ・ブックシェルフ型のDS503である。

DS503は、DS505同様、ウーファーにはアラミドハニカム振動板、
スコーカーとトゥイーターはボロン採用のDUD構造のドーム型を採用。
DS505が密閉型に対し、DS503はバスレフ型となっている。

ペアで25万円の普及クラスのスピーカーであるが、たとえばバスレフダクトは、
通常のスピーカーが紙ダクトを使用しているのに──4343ですら紙ダクトである──、
DS503のダクトは、3mm厚のアルミ引抜きパイプである。

ダイヤトーンによると、紙ダクトだと約400Hz付近に一次共振が表われる。
DS503は3ウェイなので、ウーファーのクロスオーバー周波数は500Hz。
ウーファーの受持ち帯域内で、バスレフダクトの一次共振が起こることになる。
アルミダクトの一次共振は1500Hzと、2オクターブほど高くなっている。

さらにダクト内は塗装仕上げとなっている。
気がつき難い、こんなところまで仕上げているのは、やはりローレベルのクォリティを向上させるため、
聴感上のSN比を向上させるためである。

バスレフダクトを通って出てくる空気は、ダクト内の表面がざらついていると風切り音を発生させる。
DS503の塗装を、それを抑えるためである。

ヤマハが1988年に発表した、負性インピーダンス駆動とバスレフ型エンクロージュアを
組み合せたYST方式(発表当時はAST方式と呼んでいた)のバスレフダクト内には、
風切り音を抑えるためにフェルトが貼られていた。
しかもただフェルトを使うだけでなく、柔軟剤でさらに柔らかくすることで、
徹底して風切り音を抑えるよう工夫されていた。

余談だが、柔軟剤も市販されているものすべて集めて試したと聞いている。
テクニクスのSB-E500を除いて、国産の4ウェイ・スピーカーは、
すべてコーン型とドーム型もしくはリボン型などのダイレクトラジエーターのユニットを採用しているだけでなく、
平面振動板、ハニカム素材やボロン、セラミック系など、高剛性で内部音速の速い素材を積極的にとり入れている。

もちろん4343もピストニックモーションの良好な帯域で、それぞれのユニットを使うために、
帯域を4分割しているのだろうが、JBLの場合、ピストニックモーションの積極的な追求よりも、
むしろ全帯域にわたってエネルギーレスポンスの充実・フラット化と
水平方向の指向性のワイドレンジ化を優先しているように思える。

同じ4ウェイという形態でも、優先的に追求している点は異っている。

もう1点違うのは、聴感上のSN比向上がある。
ダイヤトーンのDS5000がそうだし、ビクターのZero-L10では、さらにはっきりしている。
ビクターZero-L10の専用置き台ST-L10は、ダイヤトーンのDK5000とは違い、調整代(しろ)がない。
2本の角材をX字型の桟で連結した構造で、寸法もZero-L10にぴったりくるようになっている。

ST-L10上で、Zero-L10を多少前後させることで、調整できないことはないけれど、
見た目を考えると、面を揃えたほうがしっくりくる。
もちろん置き台とスピーカーとの間に、スペーサーを挿むこともできるが、
メーカーと主張としては、置き台とスピーカー底面の接触面積を決めておくことで、
音を仕上げているわけで、まずは何も挿むことなく取り組むべきだろう。

Zero-L10は、Zero1000の3ウェイ・プラス・スーパートゥイーター的構成ではなく、
DS5000同様、中低域の再現能力を高めるための本格的な4ウェイである。

ウーファーとミッドバスは、セラミック・ファイバーとクロスカーボンの複合素材を、
ミッドハイとトゥイーターは、ピュアファインセラミックを振動板に採用している。
振動板を剛性を高め、内部音速の速い素材を使うことで、
分割振動をできるだけ上の帯域に移動させ、ピストニックモーション領域の拡大を図っている。

ピストニックモーションの追求こそ、4343と国産4ウェイ・スピーカーとの、
もっとも大きな違いだと、私は考えている。
ダイヤトーンが、アコースティックキューブと呼んでいたDK5000は、
カナダ産カエデを使い、ブロックを12分割したランバーコア構成にしたもので、
先に述べたように上部センターに無酸素銅のピンが打ち込まれている。
アクセサリーとして直径25mm、厚み1.6mmの無酸素銅のスペーサーが8枚ついている。

通常の銅よりも無酸素銅は振動の減衰が早い。
同じ直径、厚みのものを弾くと、チーンという音の鳴りの時間が無酸素銅は短いことからもわかる。

このスペーサーを利用することで、スピーカー底面への接触面積は減り、より自由な鳴り方になるとともに、
当然、この銅スペーサーの音も、わずかとはいえ、音にのる。

DK5000の後には、ヤマハからスペーサー・セットが発売された。
無酸素銅のスペーサーの他に、セーム革やフェルトなど、素材の異る円状のスペーサーの詰め合わせだった。

DS5000(DK5000)が登場した1982年ごろから、置き台、スタンドに、専用のモノがぼつぼつ出てくるようになった。

セレッションのSL6も、木製の専用スタンドが用意されていたし、
SL600ではクリフストーンスタンドと呼ばれる鉄製で、パイプの中に石が詰め込まれたものになっている。
ダイヤトーンからも自社製ブックシェルフ・スピーカー用に、DK5、DK10などが用意されていた。
ビクターやヤマハからも、木製のスタンドが登場している。

それまでのキャスター付きの、間に合わせ的なつくりのモノから、
しっかりとしたつくりで、組み合せるスピーカーとのことを配慮しはじめたモノへと変化していっている。

そして国産4ウェイ・スピーカーで、1985年と遅くに登場したビクターのZero-L10には、
専用の置き台ST-L10が用意されていた。
DK5000は、何もDS5000専用というわけではない。
ステレオサウンドの試聴室では、リファレンス・スピーカーとして使ってきたJBLの4344は、
常時DK5000の4点支持だった。

床にベタ置きとDK5000を使ったときで何か異るのか。
まずスピーカーの底板の鳴りが大きく変化する。
ベタ置きでは、底板を床でダンプするようなもので、
底板の鳴りが減った分、主に天板、その他の部分の鳴りが大きくなる。
このことはスーパートゥイーターのところで触れている。

DK5000や角材でスピーカーを浮かすと、底板の鳴りは、いくぶんフリーになる。
さらに4点支持でも、DK5000をどの程度、スピーカーの底板にかませるかによって、
底板の鳴りをコントロールできる。

ためしにDK5000がスピーカーからはみ出ないように、四隅をきちんと揃えた音と、
DK5000のセンターピンが、スピーカーの四隅ぎりぎりになるまで外側にはみ出させた音、
まずはこのふたつの状態の音を聴いてみてほしい。

低音の鳴り方、締まり具合の変化が大きいはずだ。

DK5000を四隅に揃えた状態とは半分かかった状態では、底板がフリーになっている面積が違う。
当然底板の鳴り方が変化し、エンクロージュア全体の鳴り方も変化している。

一般的にスピーカーユニットは前面に取りつけてあるため、スピーカーの重心は前面寄りにある。

だから、さらなる調整として、前側2つのDK5000と後ろ側2つのDK5000のかませ具合を変えてみる。
前側は四隅からはみ出ないようにして、後ろ側は半分だけかませてみる。
このへんは自由に試してみてほしい。

DK5000にかかる荷重が変化するということは、おそらく床の振動モードも変化しているはずである。

スピーカーの設置場所は、壁からの距離だけの関係だけでなく、床との相関関係も大きい。
4343とDS5000のいちばんの大きな違いは、ともにエンクロージュア底面も仕上げされたフロアー型スピーカーだが、
DS5000には、DK5000という専用のベース(脚)が用意されていることだ。

フロアー型スピーカーだから床に直接設置して、それでいい音が得られるわけではない。
台輪(ハカマ)付きであっても、多少持ちあげて鳴らしたほうが好結果のことが多い。

床からの反射ということだけでなく、スピーカーと床との相関関係は、
スピーカーの重量が重く、エンクロージュア底部の面積が広いモノほど、密接なものとなる。
この関係をどう捉え、どうコントロールするかが、スピーカー設置、
特にフロアー型スピーカーの使いこなしの最大のポイントといえよう。

DK5000は一辺9cmの、良質の木の立方体のブロックで、上面センターに金属のピンが打ち込まれている。
8個1組のDK5000で、DS5000を4点支持、もしくは3点支持で持ちあげる。
アンプやCDプレーヤーもふくめて、3点支持だと音の輪郭がくっきりする傾向がある。
4点支持では、安定した、しなやかな音になる。

スピーカーの場合、床が完全にフラットのことは稀なため、
3点支持の方がガタツキなくセットしやすい。
4点支持だと、ガタつかないまでも、4つすべてのDK5000の上に、均等に荷重がかからないことが多々あり、
ひとつだけ手が容易に動かせてしまうものが出てきたりする。

そのままにしておくと、4点支持の良さは活きてこない。
なんらかのスペーサーを、床とDK5000の間に挿し込み調整する必要がある。
当然、スペーサーの素材によっても音は違ってくる。
私の経験では、和紙の使用がいい結果をもたらしてくれることが多かった。

最近では「レベラー」というコンクリートがある。
通常のコンクリートよりも、水のようにさらさらしたもので、
水は自然に水平が出るように、このレベラーも、流し込むだけいい。
ただし通常のコンクリートよりもかなり高価だけど。
DS5000が、4343を意識しているのは外形寸法の他に、ソニーのSS-G7、G9同様、
フロントバッフルに、ウーファーとミッドバス以上3つのユニットの間に、スリットをいれている。

もっとも4343の場合は、横向きで使うことを考慮して、上3つのユニットを取りつけたバッフルの向きを
90度変えられるように、フロントバッフルを2分割したため生じたスリットだが、
DS5000は、エンクロージュア表面を伝わる振動をカットするためのスリットという違いはある。

この他にも違いはいくつもある。
ウーファーの位置も、4343がエンクロージュア下部ぎりぎりまで下げているのに対し、
DS5000のウーファーの位置はできるだけ上に取りつけようと、
他の3つのユニット配置も考慮されている。
4つのユニットは、4343と異りぎりぎりまで近接している。
おそらくこれ以上近づけたらフロントバッフルの強度が不足するのだろう。

レベルコントロールも、4343は、上3つの帯域がそれぞれ可変なのに対し、
DS5000はウーファーとミッドバスのレベルは固定され、ミッドハイとトゥイーターのみ可変だ。
これはDS505もそうで、ミッドバス帯域のレベル設定に自信があることの現われだろうし、
中低域再生能力を高めるための4ウェイ構成であると語っている。

DS5000の音は、ダイヤトーンのスピーカーの中で(すべて聴いたわけではないが)、
意外に新しさは少なく、そのかわり、もっともゆとりある音を聴かせてくれたように記憶している。
どこかに試作品っぽいところを残している4S-4002P、
4S-4002Pの経験を活かして、売れ筋の価格帯で腕試しをしたともいえるDS3000、
この2機種開発の経験があるからこそ、DS5000の完成度は高いものになっているといえよう。

いわば力作である。それを、なにも4343と同寸法に作ることはないではないか。
もっと自信をもって、最良と考えられるサイズにすればいいのに......、
それともあえて4343と同寸法という制約を自ら設けて、挑んだということか。

モノは試作品を経て製品になり、そして商品になることで完成する。
資本主義というよりも、商業主義の世の中では、製品のままでは、会社は成り立っていかない。

だから売るため売れるために、4343と同寸法にしたことも理解できないことはないといいつつも、
DS5000と同じようなユニット構成で、6年後(1988年)に登場したDS-V9000のエンクロージュアの寸法は、
W65.2×H108×D49.7cmで、4343よりも奥行きが長く、背が低くなっている。

だからDS-V9000の完成度は、DS5000よりも高い、と言えないところがスピーカーの面白いところだ。

DS-V9000のトゥイーターとミッドハイのドーム型ユニットの振動板は、新開発のB4Cである。
DS5000も、ボロンを採用しているが、
ダイヤトーンにとってボロンの採用はこれがはじめてではなく、DS505に搭載している。
その後、3ウェイのブックシェルフ型DS501にも使うなど、
DS5000開発時には、ダイヤトーン技術者にとって、ボロンは新素材ではなく、
手なれた素材だったのかもしれない。

DS-V9000は、ステレオサウンドの試聴室で何度か聴いている。
DS5000とDS-V9000のあいだに、ダイヤトーンは、
DS1000やDS2000、これらのHR板、それにDS10000も開発している。
それらの成果が活きているのだろう、スピーカーとしては、DS5000よりも高性能になっている、
そんな印象とともに、新素材振動板の音が際立っているとも受けとめた。
ダイヤトーンは、DS5000の5年前(1977年)に、フロアー型の4ウェイ・スピーカーを発表している。
ただしコンシュマー・モデルではなく、放送局用として開発されたモデルで、
型番も4S-4002Pと、2S305の流れを汲むものとなっている。

40cm口径のウーファー(ハニカム振動板)、18cm口径のミッドバス(これもハニカム振動板)、
5cm口径のミッドハイ、トゥイーターのみドーム型で口径は2.3cm。
エンクロージュアはバスレフでも密閉型でもなく、ウーファーと同口径のパッシヴラジエーターを採用している。
そのため、かなり大型といえ、高さは133.6cm、重量は135kg。
上3つのユニットは両端にハンドル付きのサブバッフルに取りつけられている。
エンクロージュアのサイドはウォールナット仕上げにはなっているが、
全体的な雰囲気は素っ気無い、やや冷たい感じを受ける。

ステレオサウンド 45号のモニタースピーカー特集で取りあげられているから、
一般にも市販されたと思われるが、いままで見たことはない。

同じ4ウェイでも、4S-4002PとDS5000はずいぶん雰囲気が違う。
DS5000からは、つくり込まれているという印象が伝わってくる。

資料や写真のみでの判断するしかないが、
4S-4002Pは、とりあえず4ウェイ・スピーカーを作ってみました、という感じを、
(私だけだろうが)どうしても受けてしまう。
ダイヤトーンのDS505は見た目からして、
アラミドハニカムの振動板をウーファーとミッドバスに採用したとで、
それまで紙コーンが黒色に対して、山吹色といったらいいか、色合いからして、それまでと異る。
ミッドハイ、トゥイーターのドーム型も振動板とボイスコイルボビンを一体化したDUD構造とするなど、
いわばダイヤトーンとしての新世代のスタートを切るスピーカーでもあった。

それをブックシェルフ型で、価格も38万円(ペア)というところで出してきて、
市場の反応を見るというのが、日本のメーカーらしいといえよう。

DS505の音だが、実は一度も聴いたことがない。なかなか聴く機会がないまま、
ステレオサウンドで働くことになり、しばらくしたら、DS5000が登場してきた。

ダイヤトーン新世代スピーカーの頂点にあたるモデルとして開発されたDS5000が、
ステレオサウンド試聴室に搬入されたとき、
ダイヤトーンの技術者が、
「4343が置いてあった場所にそのまま置けます」と言ったのをはっきりと憶えている。

4343の横幅は63.5cm、DS5000の横幅も63.5cmは同じで、
4343からの買い替えを狙って、この横幅に決定した、とのことだった。
奥行きは、4343が43.5cm、DS5000が46cmとすこしだけ大きいが、
4343はサランネット装着すると、奥行きは46cmくらいになる。
高さは、4343が105.1cm、DS5000が105cmと、徹底して4343を意識した寸法となっている。
スレッショルドの800Aは、1976年当時、118万円だった。
価格的に4343とほぼ同じだが、まったく無名の新興ブランドということもあってか、
実物を見たこともないという人も少なくない。

けれど、800Aが、国産ブランドのアンプの技術者に与えた影響は、4343のそれと匹敵するかもしれない。
800Aの登場以降、国産アンプの謳い文句に「Aクラス」の文字が増えている。
思いつくまま挙げれば、テクニクスのクラスA+(SE-A1に採用されている)と
ニュークラスA(SE-A3などプリメインアンプにも採用)、
ビクターのスーパーAクラス、デンオンのリアルバイアスサーキットによるAクラス、
Lo-DのノンカットオフA動作、などがある。

800Aも登場したばかりのころは、正確な情報がなかったため、純Aクラス・アンプのように思われたが、
実際は基本動作はABクラスで、出力が増えてBクラス動作に移行したとき、
通常ならば発生するスイッチング歪、クロスオーバー歪を、
特殊なバイアス回路の採用で発生そのものを抑えている。

これに刺激されて、各社から、独自のノンスイッチングアンプが登場したわけだ。

このとき、ステレオサウンドは、国産メーカー各社のアンプ技術者にアンケート調査を行なっている。
自社の技術の特徴と、他社の同様の技術の違いについて回答させたものをまとめた記事で、
技術者が自社製品の技術について語るだけとは異り、ひじょうに興味深い内容だった。

無線と実験やラジオ技術誌がやらなかった記事を、
ステレオサウンドが、わかりやすく、しかもつっこんだ内容で、まとめてくれていた。

同様のアンケートを、4ウェイ・スピーカーを発表したメーカーの技術者に対して
行なってくれていたら、と思う。
4343をどう捉えていたのかが、はっきりとわかり、ひじょうに面白い記事になったであろう。
4343でコヒーレントフェイズを実現するのは相当に困難なことだが、
4ウェイ・スピーカーでコヒーレンスフェイズに近づける、ということになれば、
ホーン型ユニットを使わずに、ダイレクトラジエーター(ドーム型、コーン型、リボン型など)のユニットで構成すれば、
それぞれのユニットの音源の位置関係のズレは、かなり小さいものとなる。

4343を意識した4ウェイ・スピーカーが、国産ブランドからいくつも登場した。
それらのスピーカーを見ていくことは、それぞれのブランドのスピーカー技術者が、
4343をどう捉えていたのか──長所はどこで、そして欠点はどこなのか、を間接的に知ることといえよう。

1976年、高効率Aクラス・アンプを謳い、
Aクラスで100Wの出力を可能としたスレッショルドのパワーアンプ、800Aが登場した。
当時のAクラス・アンプといえば、パイオニア/エクスクルーシヴのM4が代表的製品で、
出力は50W+50Wだった。空冷ファンを備えていたが、発熱量はかなりのものだった。

それが同じステレオ機で、出力が4倍の200W+200W。800Aもファンによる冷却だが、
発熱量はM4の4倍の出力をもつアンプとは思えないほど少なく、
筐体がカチンカチンに熱くなるということはなかった。

800Aは、二段構えの電源スイッチで、通常はスタンバイスイッチを入れっぱなしにしておき、
使用時にオペレートスイッチをいれるという仕組みで、
冷却ファンも風量を2段階で切り換え可能にするなど、家庭で使うことを配慮した、
アメリカのハイパワーアンプとは思えない面ももっていた。

800Aはそれほど日本には入荷していないそうだが、
私がよく通っていた熊本のオーディオ店には、800Aがなぜか置いてあり、音を聴く機会にもめぐまれた。

800AかSAEのMark2500か──、LNP2Lに組み合せるパワーアンプはどちらかよいか、
買えもしないのに、そんなことを迷っていたりした。

800Aはいいアンプだと思っていた。
おそらく、いま聴いてもなかなかのアンプのように思う。
当時のアメリカのアンプとは思えないような、清楚な印象の音は新鮮だったし、
しかも秘めた底力も持ち合わせている、どこか、そんな凄みがあった。

「800A、いいなぁ」、と思っていたところに、
五味先生が、ステレオサウンドで再開されたオーディオ巡礼の一回目に、
「スレッショールド800がトランジスターアンプにはめずらしく、
オートグラフと相性のいいことは以前拙宅で試みて知っていた」と書かれていたので、
ますます800Aの印象は、私の中でふくらんでいった時期がある。
JBLの4343と同時代のスピーカーのなかには、ユニットの位置合わせにはじまり、
ネットワークの位相特性にまで配慮した、いわゆるリニアフェイズ、
KEFの言葉を借りればコヒーレントフェイズ指向のスピーカーが登場している。

KEFの#105がそうだし、UREIの813は、特許取得のタイムアライメント・ネットワークで、
同軸型ユニットのメリットを最大限に引き出そうとしていた。

それらのスピーカーと見比べると、4343のユニット配置は、コヒーレントフェイズの観点からは、
考慮されているようには思えない。

瀬川先生の4ウェイ・スピーカー構想をあれこれ妄想・空想していた私は、
4343でコヒーレンとフェイズを実現するには、どういうユニット配置にしたらいいのか、
そんなことも考えていた。

高校生が考えつくことは、やはり限られていて、
思いついたものといえば、ウーファーとミッドバスの前面にフロントショートホーンを設けることだった。

UREIの813のネットワークに関する技術的な資料が、当時あれば、
ネットワークによる補正も考えられるのだが、インターネットなどない時代だから、無理である。

となると、フロントショートホーンということになるのだが、
これを4343のスタイルを崩さずにうまくまとめることは、不可能といってもいいだろう。

スケッチという名の落書きを何枚も描いてみたけど、4343のようにカッコよくは、どうしてもならない。
それに、ホーンがついた分、どうしてもサイズが大きくなる。
4343のスマートさとは、正反対のモノになってしまう。

1976年発表の4343を、21世紀のいま、メインスピーカーとして使うために、どうしたらいいのか。
そのためには、4343というスピーカーについて、とことん知る必要がある。
それが、4343を4343足らしめている要素をいっさい損なうことなく、につながる。

4343を現代スピーカーとして甦らせることについては、いずれまとめて書きたいと思っている。
JBLの4343に憧れていて、瀬川先生の4ウェイ・スピーカー構想をあれこれ空想・妄想していた時期に、
ダイヤトーンのDS505は登場したから、個人的な衝撃は、意外なほどあった。

38cm口径のウーファーをベースとするならば、4ウェイ・スピーカーはかなり大型となるが、
30cm口径ならば、ミッドバスも大きくて16cm、10cm口径のフルレンジ一発でもいける、
うまくすれば、ブックシェルフ型の4ウェイもできるんじゃないか、そんなことも考えたことがあっただけに、
DS505は、アラミドハニカム振動板の特有の色とともに、
当時、高校生だった私には、現実的な4ウェイ・スピーカーであった。

クロスオーバー周波数の、500、1500、5000Hzからも、3ウェイ・プラス・スーパートゥイーターという構成ではなく、
本格的な4ウェイ・スピーカーとして開発されていることがうかがえる。
ウーファーとミッドバスが小口径になった分、クロスオーバー周波数も高くなり、
コイルの値も小さくなる。
このことも、当時、現実的と受けとめたことのひとつでもある。

ステレオサウンドの新製品の記事は、井上先生が書かれていた。
カラーページだった、その記事を何度もくり返し読んだ。
瀬川先生の4ウェイ・スピーカー構想は、フルレンジから始めるか、
2ウェイから、なのかによって、ユニットの選択肢が変わってくる。

2ウェイからはじめるのであれば、タンノイやアルテックの同軸型ユニットも候補となる。
タンノイだと25cm口径のモノ、当時だとHPD295Aだ。
アルテックだと......、残念ながら30cm口径の605Bもラインナップから消えていたし、
25cm口径の同軸型は最初から存在しない。

もっとも6041の例があるから、システム全体は大型化するものの、604-8G (8H)からのスタートもあり、だろう。

もっとも、この場合、タンノイにしてもアルテックにしても、
同軸型のトゥイーターは最終的には、ミッドハイとなる。

こんなふうに、当時はHiFi Setero Guide を眺めながら、いろんなプランを、私なりに考えていた、
というよりも妄想していた。

スピーカー・システムというように、ひとつのパーツから成り立っているわけでなく、
いくつかのユニットとエンクロージュア、ネットワークなどの、「組合せ」である。

アナログ、CDのプレーヤー、アンプ、スピーカー・システムの組合せからオーディオが成り立っているのと同じように、
スピーカー・システムもアンプそれぞれも、すべて組合せである。

アンプは、増幅素子(真空管やトランジスター、ICなど)、コンデンサー、抵抗などの組合せから成り立っているし、
回路構成にしても、ひとつの組合せである。

さらに言うならば、スピーカー・ユニットにしても、振動板、エッジやダンパー、
マグネットを含む磁気回路、フレームなどからの組合せである。

オーディオに求められるセンスのひとつは、この「組合せ」に対するものではないだろうか。
瀬川先生の4ウェイ・スピーカーの構想で、ウーファーを加えた時点でマルチアンプ駆動にするのは、
ウーファーに直列に入るコイルの悪影響を嫌ってのことである。

同時に、同じブランドのユニットでシステムを構成するのではなく、
ブランドもインピーダンスも能率も大きく異る点も含まれる混成システムでは、
マルチアンプにしたほうが、ネットワークの設計・組立てよりも、ある面、労力が少なくてすむ。
もちろん多少出費は、どうしても増えてしまうけれども。

出発点だったフルレンジ用にミッドバス用のキャビネットを用意すれば、エンクロージュアの無駄も出ない。

最後に、ミッドハイを加えて、4ウェイ・システムが組み上がる。

もちろんステップを踏まずに一気に4ウェイに取り組んでもいいし、
最初は2ウェイで始めてもいいだろう。

とはいえ、最初にフルレンジだけの、つまりネットワークを通さない音を聴いておくことが、
この瀬川先生の4ウェイ構想の大事なところだと、記事を読んで10年後くらいに気がついた。
ネットワークにおけるコイルの、音質に与える影響は、
クロスオーバー周波数が下がれば下がるほどコイルの値も大きくなり、それに比例していく。
直流抵抗値も増えていく。

コイルの値は、スピーカーのインピーダンスと関係し、インピーダンスが低くなれば、
同じクロスオーバー周波数でも、小さい値ですむ。

いまでこそパワーアンプの安定度が高くなったため、4Ωのスピーカーがかなり増えているが、
4343の時代(1976年から80年にかけて)は、スピーカーのインピーダンスといえば8Ωであったし、
4Ωのものは、極端に少なかった。

現代の4343といえる4348のウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数は、
4343と同じ300Hzだが、インピーダンスは6Ωと、すこし低くなっている。

4348の弟機にあたり、4348と同じウーファー1500FEを搭載している4338は、
ミッドレンジとのクロスオーバー周波数が700Hzと高めになっているため、
システムとしてのインピーダンスは8Ωだ。

4343が6Ωだとしたら、コイルの値も小さくなり、
4343の評価もかなり違ったものになっていた可能性もあるように思う。

4343登場と相前後して、アメリカのパワーアンプは、SAEのMark2500、GASのAmpzilla、
マランツのModel 510M、マークレビンソンのML2Lなどが登場しているから、
6Ωとして設計されていたとしても、アンプの選択に困ることはなかっただろう。
コイルの性質には、いくつかある。

まず挙げたいのがレンツの法則と呼ばれているもので、コイルは、電流の変化を安定化する働きをもつ。
それまで無信号状態のところに信号が流れようとすると、それを流させまいと働くし、
反対に信号が流れていて、信号がなくなる、もしくは減ろうとすると、流しつづけようとする。
この現象は、中学か高校の授業で習っているはず。

このとき何が起こっているかというと、コイルからパルスが発生している。
このパルスは、ある種のノイズでもあり、他のパーツに影響をあたえる。

2つ目の性質は、相互誘導作用。
2つ以上のコイルが近距離にある場合、ひとつのコイルに流れる電力が他のコイルにも伝わる。
この性質を利用したものが、トランスだ。

3つ目は、共振。
コンデンサーと組み合せることで、電気的な共振がおこり、
ある周波数でインピーダンスが下がったり上がったりして、
電流が流れにくくなったり流れやすくなったりする。

コイルの性質とは言えないが、共振には機械的な共振もある。
音声信号が流れれば、少なからず振動する。

真空管アンプ全盛時代はそうでもなかったが、トランジスターアンプに移行してからは、
コイルの使用は、アンプでは敬遠されがちである。

やっかいな性質をもっているのは確かだが、コンデンサー型やリボン型などをのぞくと、
ほとんどのスピーカーの動作はコイルによって成り立っているのも忘れてはならない。
コイルが、どう音に影響をあたえるのか。
両端にコイルが巻きつけてあるRCAケーブルがあれば、それを容易に確認できる。

高額な、最近の、アクセサリーという範疇を超えつつあるケーブルには、
よもや、こんなものはついていないだろうが、
以前は、意外に、ついているモノが多かった。
SMEのトーンアームに付属するケーブルにも、このコイルが巻きつけてあった。

RCAプラグの金属のエッジがケーブルの外被にあたり、ひどいときには断線にもつながるため、
ケーブル保護のためについていた。

SMEの場合、このコイルは鉄製(磁性体)でだった。つまりコイルであり、バネでもあったわけだ。

このコイルに、布製の粘着テープもしくはアセテートテープを一巻き貼るだけでも、
もちろん音は変化する。
さらにこのコイルを、少々苦労するが取り外してみる。

ステレオサウンドのアナログプレーヤーは、私が入社したころは、
パイオニア/エクスクルーシヴのP3だったが、
マイクロのSX8000IIの発表とともに、SMEの3012-R Proとの組合せに変わった。
トーンアームケーブルは、付属の銀線をそのまま使用していた。
つまり両端のコイルもそのままの状態で使っていたわけだ。

あるとき、井上先生から、
「ちょっとめんどうだけど、そのコイルをはずしてみろ」と言われた。
左右両チャンネル、ケーブルの両端にあるので、計4つのコイルをはずす。

面倒な作業だったことは、確かだ。
やっている最中は、「もうやりたくないな、こんな作業は」、と思っていたのに、
その音を聴くと、またやろうと思っていたし、実際、三度やっていた。
そのくらいの十分過ぎる変化だった。
トゥイーターを追加した次のステップは、ウーファーの選択、追加、そしてマルチアンプ化である。

3ウェイにスーパートゥイーターを追加した4ウェイと、
ミッドバス専用ユニット搭載の4ウェイの大きな違いは、ウーファーのカットオフ周波数にある。

4343の、ウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数は300Hz、
3ウェイ・プラス・スーパートゥイーターの4ウェイだと、
ウーファーとスコーカーのクロスオーバー周波数は低くても500Hzより上、600だったり800Hzだったりする。

4333A(3ウェイ)の、ウーファーのカットオフ周波数は800Hzだ。
4350Aは、250Hzに設定されている。

どれも同じウーファー(2231A)なのに、3ウェイか4ウェイかで違うし、
4ウェイでもネットワークなのかバイアンプ駆動なのか、で異ってくる。

ウーファーのカットオフ周波数を低くしたとき、
ネットワークのコイルの値が大きくなることが問題となってくる。

4343では5.4mHのコイルが、ウーファーに対して直列にはいる。

空心コイルの場合、5.4mHのコイルに使用する線材の長さは、
コイルの内径、厚みによって多少変動するが、60m前後必要となり、
直流抵抗値は、線径が16AWG(1.02mm)だと、おおよそ1Ω、
すこし太い16AWG(1.29mm)で0.7Ω、14AWG(1.63mm)で0.5Ω弱となる。

鉄芯入りだともうすこしワイヤー長が短くできるが、今度は磁気歪みの問題がかわりに出てくる。
瀬川先生の4ウェイ自作スピーカー計画は、次にトゥイーターを足して2ウェイにする。
トゥイーターもいくつか候補を挙げられていた。
JBLの2405、075、KEFのT27、フィリップスのソフトドームなど、いろいろだ。

フルレンジユニットで、LE8Tにした人ならば、2405を選ぶだろう。
2405とLE8Tの能率の違いは、意外に大きい。
通常なら、2405にアッテネーターをかましてLE8Tとの音圧を調整するわけだが、
2405にコンデンサー(もちろん良質のものに限る)を1個だけ直列に接ぎ、
いちばん簡単なローカットフィルターをつくる。レベルコントロールは挿入しない。
2405の推奨クロスオーバー周波数は7kHz以上だから、8kHzから10kHzあたりでローカットするのが通常だが、
コンデンサー1個で、しかも能率差が大きいときは、あえて20kHz以上に設定する。
コンデンサーの容量は、けっこう小さいな値になる。

-6db/oct.というゆるやかなカーブでも、カットオフ周波数が高いおかげで、2405でも問題なく使える。

このテクニックについては、「HIGH TECHNIC SERIES」のvol.1に、瀬川先生が書かれている。
瀬川先生の、4ウェイの自作スピーカー計画の記事のオリジナルは、かなり以前に発表されたもので、
私が読んだのは、「HIGH TECHNIC SERIES」のvol.1のマルチアンプ特集のなかで、再度触れられていたものである。

フルレンジユニットを鳴らすことから始まるこの計画は、ステップを踏んで、
2ウェイ、3ウェイとすすみ、最後にマルチアンプ化とともに4ウェイとなるものだ。

フルレンジは、ヴォーカルの再現性に優れるものが多い、20cm口径前後のものを選択する。JBLのLE8T、
アルテックの755E、フィリップスのユニット、ダイヤトーンのP610、
2発使用を前提にジョーダンワッツのモジュールユニットなどをあげられている。

これらのユニットを、最終段階でウーファーを収める、要するに大型のエンクロージュアに取りつけるわけだ。

このフルレンジユニットは、最終的に、4ウェイに発展時にはミッドバスユニットにあたるわけだ。
だからといって、ミッドバスのバックキャビティの内容積(4343だと約14ℓ)だと、
最初の音が貧弱になることもある。
中途半端な大きさのエンクロージュアをつくると、無駄になることもある。
それらのことをふまえて、
横置きの、フロントバッフルが傾斜しているエンクロージュアをすすめられている。
バスレフ型である。

フルレンジからスタートすることは、ネットワークを通していない音に馴染む意味でも、
いちど経験しておきたいことである。
ダイヤトーンのDS505が登場した1980年、
瀬川先生の4ウェイ自作スピーカーの記事を読んでしばらくしてのころということもあって、
高校3年だった若造にとって、このスピーカーは、かなり魅力的に感じていた。

憧れであり、目標だったスピーカーは、もちろん4343だったが、高校生がバイトに精を出したところで、
たやすく買える金額のものではない。
何事にも例外はあって、友人のAさんは、高校生の時、土方のバイトをがんばり、4343を現金で購入している。
アンプ、プレーヤーは予算不足で購入できず、
しばらくはシャープのダブルラジオカセットに接いでいたというエピソードつきだ。

4343は、そこまで駆り立てる魅力をもっていたスピーカーともいえよう。

熊本の片田舎では、高校生ができるアルバイトといえば新聞配達ぐらいで、しかも朝刊のみ。
それで稼げるお金は、上限が決っている。

私にとっては、サンスイのAU-D907 Limited が精いっぱいだった。
それも新聞配達のバイト代だけでは足りず、修学旅行を旅行を休んで、
その積立金を加えて、やっとこさ購入できたのだった。
ビクターは、ずいぶんと早い時期に4ウェイ・スピーカーを開発している。
1970年前後に発売されていたBLA405とBLA-E40だ。
とはいえ、ビクターにとって、本格的な4ウェイ・スピーカーは、Zero1000が最初といっていいだろう。
Zero1000はブックシェルフ型というサイズの制限もあってだろう、ミッドバスユニットを備えた4ウェイではなく、
3ウェイ・スピーカーにスーパートゥイーターを追加した4ウェイ・スピーカーである。

このことは、Zero1000の1、2年後に出た3ウェイのZero100を見ても明らかだし、
ビクターのカタログにも、ミッドバスという表記はなく、
ウーファー、スコーカー、トゥイーター、スーパートゥイーターとある。
クロスオーバー周波数を見ても、そのことは明らかだ。

同じブックシェルフ型ながら、ミッドバス搭載の4ウェイ・スピーカーが、ダイヤトーンのDS505だ。

ダイヤトーンは1970年にDS301、74年にDS303を出している。
どちらも、3ウェイにスーパートゥイーターを追加した4ウェイ構成であり、
中低域の充実を図った4ウェイは、ダイヤトーンにとってDS505が最初である。
APM8の型番は、Accurate Pistonic Motion を表している。

外観的には、SS-G9をそのまま平面振動板ユニットに置き換えたかのように見えるが、
このスピーカーの開発には約3年かかったときいている。

ハニカム振動板の平面型ユニットは、優秀な特性を示しているが、どうしても音的に満足できずに、
技術者は試行錯誤をくり返し、マイカ製のボイスコイルボビンを、
当初は裏側のハニカムスキンに接着していたものを、ハニカム素材を貫通させることで
表側のハニカムスキンを含め、振動板全体と接着することで、満足できる音が得られた、
と当時のソニーの広告には書いてあったのを思い出す。

高剛性のハニカム振動板だから、裏側だけで接着してもよさそうなものだし、
この違いは測定では検出できないにも関わらず、大きな違いとなってくる。
音とはそういうものだろう。

SS-G7、SS-G9、APM8で、AGバッフル採用のスピーカーは終ってしまう。
APMシリーズの第二弾APM6から、エンクロージュア全体がスーパー楕円へと変化し、
ソニーの4ウェイ・スピーカーは、SS-GR1(1991年登場)へと引き継がれる。

APM (Accurate Pistonic Motion) ──、これはソニーだけではない、
当時の国産スピーカーが懸命に目指していたものだ。
ソニーはSS-G7を発売した1976年の、第25回オーディオフェアに、PCMオーディオユニットを展示、
翌77年に、コンシュマー機としては世界初のPCMプロセッサーPCM-F1を発表・発売している。

ビデオデッキと組み合せることで、14ビットとはいえ、デジタル録音・再生を可能にしただけでなく、
マイクロフォン入力端子も備え、電源も交流/直流でも使える、可搬型という意欲作だった。
そして、ソニーは、フィリップスとともにCDを開発している。

推測でしかないが、SS-G7の開発のころから、
デジタル録音のプログラムソースを試聴に使っていたと考えても間違いないだろう。
さらにソニーは、新しいスピーカー解析技術も開発している。

この2つの事柄がなかったら、SS-G7は、
それまでの同社のスピーカーとそれほど変わらないもので終っていたかもしれない。

AGバッフル、ウーファーを前面に突き出させたプラムライン配置は、
デジタル時代の予測から生れてきたものかもしれない。

1979年に、ソニーはエスプリ・ブランドを誕生させ、APM8を発売する。
3ウェイ・システムにミッドバスを加え、
4ウェイにまとめあげたシステムとして適例なのが、ソニーのSS-G9である。

4343とほぼ同じころに、ソニーから3ウェイのフロアー型のSS-G7が出ている。
38cm口径のウーファーに、
10cm口径のスコーカーと3.5cm口径のトゥイーター(ソニー独自のどちらもバランスドライブ型)の組合せ。
クロスオーバー周波数は、550Hzと4.5kHz。

型番的にもSS-G7の上級機にあたるSS-G9は、20cm口径のミッドバスを追加している。
ウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数は300Hzになり、1.2kHzまで受け持つ。
クロスオーバー周波数が550Hzから1.2kHzへと高くなったことから、
スコーカーの口径を、8cmと小さくしている。
トゥイーターとのクロスオーバー周波数も4.5kHzから5kHzとなり、
それぞれのユニットの帯域幅を小さくしている。

SS-G7はトゥイーターとスコーカーをサブバッフルにマウントすることで、
わずかでも、ふたつのユニットを近接させようとしていた。

SS-G9ではスコーカー(4ウェイになったのでミッドハイ)の口径が小さくなったことで、
SS-G7以上に、ふたつのユニットの中心は近接している。

SS-G9が4343を意識していることは、フロントバッフルにスリットからも明らかだろう。

SS−G7とG9は、縦横溝が刻まれたフロントバッフル
(ソニーはアコースティカル・グルーブド・ボード、略してAGボードと呼んでいる)を採用している。
ソニーの説明では、このスリットは、波長の短い中高域を拡散させるものだ。

SS-G7では、このスリットがフロントバッフル全面に均等に刻まれている。
4343の2年後に登場したSS-G9では、ウーファーとミッドバスのあいだに、
水平に、他のスリットよりも深くて広く、はっきりと目立つスリットが刻まれて、
見た目のアクセントになっている。

またバスレフポートもSS-G7ではひとつだったが、ふたつになり、
4343と同様にウーファー下部の左右に設けられている。

レベルコントロールの位置も、SS-G7ではスコーカー、トゥイーターの横に縦方向にあったのが、
SS-G9ではミッドバスとウーファーの間に、横方向へと変更されている。

4343以降登場した国産4ウェイ・スピーカーのなかでも、
SS-G9は、4343を相当意識してつくられたスピーカーといえよう。
4ウェイ・スピーカーシステムといっても、開発の方向性はいくつかある。

3ウェイ・システムをベースにして、スーパートゥイーターもしくはサブウーファーを加えたもの、
同じく3ウェイ・システムのベースでも、中低域に専用ユニットを加えたもの、
2ウェイ・システムを中心にして、スーパートゥイーターとサブウーファーを加えたもの、などがある。

スペンドールのBCシリーズを参考例としてあげる。
スペンドールは、1969年に第一作のBCIを開発した。
ウーファーは、BBCがBC2/8MKIIと呼ぶ20cm口径のベクストレン振動板のコーン型。
トゥイーターはセレッション製のドーム型HF1300。
型番のBCはベクストレン(Bextrene) の頭文字Bとセレッション(Celestion) の頭文字Cを組合せを表している。

このBCIをベースに、ウーファーの耐入力を向上させ、
スーパートゥイーターとして、当時ITT参加にあったSTCの4001を追加し、3ウェイとしたのが、
1973年に発表され、日本でもロングセラーモデルとなったBCIIである。

BCIIの成功は、BCIIIの開発へとつながる。
BCIIIは、BCIIの低域のワイドレンジ化を図ったモデルで、BCIIと同じユニットに、
30cm口径のベクストレン・コーン型ウーファーを追加し、
エンクロージュアもひとまわり大きなものとなっている。

BCIIのクロスオーバー周波数は、3kHzと13kHz。BCIIIは、これに700Hzが加わる。

BCI(2ウェイ)から始まり、BCII(3ウェイ)、BCIII(4ウェイ)へと、BCシリーズは発展し完結している。
1978年から80年ごろにかけて4ウェイ・スピーカーを開発・発売してきたソニー、テクニクス、
ビクター、Lo-D、パイオニア、ダイヤトーンで、その後も4ウェイシステムを継続して開発したのは、
ダイヤトーン、一社だけと言ってもいいだろう。

テクニクスも4ウェイ・システムをいくつか開発しているが、そのたびに製品コンセプトは変わっていき、
ひとつの製品をじっくり発展していっているとは、私は思っていない。

その点、ダイヤトーンはDS5000(1982年)をベースに、
88年にDS-V9000、翌89年にDS-V5000と発展させ、
84年には、すこし小型化したDS3000というヴァリエーションも出すなど、
4ウェイ・システムの完成度を高めていこうという姿勢があった。

テクニクスは、1978年にSB-E500、1981年にSB-M1 (Monitor 1) を出している。
SB-E500は、38cmコーン型ウーファー、25cmコーン型ミッドバス、ミッドハイとトゥイーターはホーン型という、
4343と同じユニット構成となっている。
クロスオーバー周波数は、350、1500、8500Hz。
外形寸法は、W72×H103×D56cm。価格は70万円(ペア)。

SB-M1はmonitor 1の名称がつけられていること、
エンクロージュアの仕上げがグレイ塗装とウォールナットの2つが用意されているなど、
4343をかなり意識した製品づくりといっていいだろう。

ユニットはすべて丸形の平面振動板で、口径はそれぞれ38、22、8、2.8cmとなっている。
クロスオーバー周波数は、280、900、4000Hz。
外形寸法は、W63×H105×D43.9cm。価格は70万円(ペア)。

ウォールナット仕上げのSB-M1 (M)は、エンクロージュア下部に台輪がついているため、
高さが112cmとすこし大きい。価格はちょうど2倍の140万円(ペア)。

ビクターは、1981年にZero-1000を、85年にZero-L10を発表。

Zero-1000は、ブックシェルフ型の4ウェイスピーカーで、
ユニット構成は、ウーファー32cmコーン型、ミッドバス7.5cmドーム型、
ミッドハイ3.5cmドーム型、トゥイーターはリボン型。

色合いは異るが、フロントバッフルはブルー、側板、天板はウォールナット仕上げと、
言葉だけで表すと4343WXの仕上げと同じ。
とはいえ、フロントバッフルはカーブしているし、どちらかといえば水色ということもあり、
見た目の印象はずいぶん違う。
クロスオーバー周波数は、500、5000、12000Hz。
外形寸法は、W44×H79.3×D37.1cm。価格は42万円(ペア)。

Zero-L10は、1985年と、発売が遅いこともあって、専用ベースST-L10が別売りで用意されている。
フロアー型なのに? と思われる方もいるだろうが、
この考えが発展して、90年発売のSX1000 Laboratoryの専用ベースへとつながっている。
Zero-L10のユニット構成は、ウーファー39cmコーン型、ミッドバス21cmコーン型で、
振動板は紙ではなく、セラミックとカーボンの複合素材を使用している。
ミッドハイとトゥイーターは、セラミック振動板のドーム型で、口径は6.5、3cm。
クロスオーバー周波数は、230、950、6600Hz。
外形寸法は、W58×H100.5×D47cm。価格は160万円(ペア)。

ダイヤトーンもビクター同様、ブックシェルフ型の4ウェイを先に出している。
1980年発売のDS505は、ウーファー32cmコーン型、ミッドバス16cmコーン型で、
アラミドハニカム振動板を採用している。ミッドバス4cm、トゥイーター2.3cmのドーム型。
クロスオーバー周波数は、350、1500、5000Hz。
外形寸法は、W44.2×H72×D42.5cm。価格は38万円(ペア)。

フロアー型のDS5000は、1982年に登場した。
ユニット構成は、ウーファー40cmコーン型、ミッドバス25cmコーン型で、
アラミドハニカム振動板採用はDS505と同じだが、
成型の難しい、この素材で、ミッドバスはカーブドコーンとしている。
ミッドハイ、トゥイーターは6.5、2.3cmドーム型。
クロスオーバー周波数は、30、1250、4000Hz。
外形寸法は、W63.5×H105×D46cm。価格は99万円(ペア)。

ヤマハからもGF-1が登場しているが、1991年と、ずいぶん後になってのことなので除外した。
4343は、ペアで140万円超えるスピーカーとして驚異的な売行きと言われる。
これだけ売れたスピーカーは、いわゆる売れ筋の価格帯のスピーカーでも、そう多くはない。

そのため、といってもいいだろう、4343の成功に触発されて,
国産メーカーからも4ウェイ・スピーカーシステムが登場しはじめた。

それらのスピーカーとの対比で4343を見ていくと、
当時の国産メーカーのスピーカー技術者が4343をどう捉えていたのかが、わかってくるというものだろう。

どういう4ウェイ・スピーカーが出ていたのか、ざっと振り返ってみる。

ソニーからは、1978年にSS-G9が登場した。4343と同じ38cm口径のウーファー、20cmのミッドバス、
8cmのミッドハイ、3.5cmのトゥイーターという構成。
ミッドハイとトゥイーターは、ソニーが新たに開発した、
ドーム型とコーン型を一体化した形状の振動板のバランスドライブ型。
クロスオーバー周波数は、300、1200、5000Hz。
外形寸法はW60×H108×D45.5cm。価格は57万6千円(ペア)だ。

さらにソニーは翌年、エスプリ・ブランドで、平面振動板の4ウェイ・システム、APM8を出す。
クロスオーバー周波数は、320、1250、4500Hz。
外形寸法はW65×H110.5×D45cm。価格は200万円(ペア)だ。

パイオニアからは、平面振動板の4ウェイ同軸ユニットを搭載したS-F1が、1980年に出ている。
クロスオーバー周波数は、500、2500、8000Hz。
外形寸法はW70×H117×D47cm。価格は170万円(ペア)だ。

Lo-Dは、1978年に、コーン型、ドーム型ユニットの凹みに発泡樹脂を充填した
平面型4ウェイのHS10000を発表している。
HS10000には、スーパートゥイーターを追加した5ウェイ・モデルも用意されていた。
使用ユニットは、30、6、3.5、1.8cm口径(0.9cm:5ウェイ仕様のスーパートゥイーター)。
クロスオーバー周波数は、630、2500、4500Hz(9000Hz:5ウェイ時)。
外形寸法はW90×H180×D60cm。価格は360万円(ペア)だ。

このスピーカーは、いわゆる2π空間使用前提の設計は、4343と共通しているし、
コンセプトからして、プロトタイプ的性格が強い。
早瀬(文雄)さんは、2405のことを「清潔感のある音」とよく言う。

瀬川先生の言われる「切り絵的」な描写が、早瀬さんには清潔感として聴こえてくるのだろう。

4343と4343Bを聴く限りで言えば、アルニコの、ソリッドで引き締った音が、
2405の特長とうまく作用し、見事な切り絵を表現してくれるのかとも思う。
フェライトのまろやかで柔らかい感じは、2405の魅力を損なう方向に働くのか。

いまもし新品同様の4343と4343Bがあったとして、どちらを選択するかとなったら、
メインスヒーカーとして4343だけ、というのなら、フェライト仕様の4343Bにする。
他のメインスピーカーを使っていて、もう一台というのであれば、アルニコの4343を、
どちらもためらうことなく選ぶだろう。

そして仕上げは、アルニコならばグレイ塗装にブラックのフロントバッフルのスタジオ仕様を、
フェライトならウォールナット貼りにブルーバッフルのWX仕様にする。

スピーカーを選択するということは、そういうことではないだろうか。
1978年79年にかけて、ステレオサウンドから別冊として「HIGH TECHNIC SERIES」が出た。
Vol.1がマルチアンプ、Vol.2が長島先生によるMCカートリッジの詳細な解説、
Vol.3がトゥイーター、Vol.4がフルレンジの特集だった。

Vol.3の巻頭記事で、4343のトゥイーターを2405を含めて、
他社製のトゥイーターに交換しての試聴が行なわれている。

試聴方法は、それぞれのトゥイーターの能率も異るし、
4343の内蔵ネットワークは2405に有利に働くこともあるということで、
トゥイーター用に専用アンプを用意して行なわれていた。

試聴者は、井上先生、黒田先生、瀬川先生の3人。

私が何度も読み返したのは、ピラミッド社のリボントゥイーターT1と2405のところだ。

井上先生と黒田先生は、T1をひじょうに高く評価されこのとき聴いた中ではもちろんベストの存在だし、
当時4343をお使いだった黒田先生はT1に心を動かされていたと記憶している。

瀬川先生は、というと、T1のポテンシャルの高さは充分認めながらも、
「2405の切り絵的な表現に騙されていたい」ということを言われていた。
このことが、いまでも強い印象として残っている。

T1に置き換えたときの音像を立体的とすれば、2405の音像は平面で切り絵的。
T1にすることで、4343がより自然な音に変化することよりも、
2405が演出する世界に騙されることで、レコード音楽にワクワクドキドキしていたい、
そう私は受けとめた。

2405のフェライト仕様は、おそらくその切り絵的世界が、ずいぶんと失われているのではなかろうか。
他のトゥイーターは比較すれば、それでも切り絵的世界の音だろうが、
切り絵ならば、その切り口がスパッと見事であってほしい。
迷いながらの未熟な切り口では、そんな切り絵には騙されたくない。

騙されていたいと思うのは、それが見事なものであるからだ。
4343にはアルニコ仕様とフェライト仕様の4343Bがある。
ときどきアルニコ仕様の4343のことを4343Aと書く人がいるが、4343Aというモデルは存在しない。

4350、4331、4333には改良モデルのAが存在する。
型番末尾の「A」はアルニコの頭文字ではなく、改良モデルを表している。

ついでに書いておくと、4345BWXと書く人もいる。
4345が正しい表記で、4345にはフェライト仕様しかないので、
アルニコ仕様と区別するための「B」はつかない。
またWXも仕上げの違いを表すもので、4345以降はウォールナット仕上げのみとなったため、型番にはつかない。

4343と4343Bの違いは、ウーファーの2231Aとミッドバスの2121が、
フェライト仕様の2231H、2121Hに変更されているだけだ。
ミッドハイの2420、トゥイーターの2405はどちらもアルニコ仕様である。

4343の後継機4344となると、すこし事情が違ってくる。
最初の頃は、4343Bと同じようにウーファーとミッドバスがフェライトで、
ミッドハイとトゥイーターはアルニコだったが、
どうも途中からミッドハイの2421Bがフェライトに変わっている。

2405は最後までアルニコだったと思っていたが、
どうもこれも後期のロットにはフェライト仕様の2405Hが搭載されているものがあるときく。

世の中にはアルニコ神話に近いものがある。
自分の使っているスピーカーに、アルニコ仕様とフェライト仕様があるならば、
やはりどちらが良いのか、とうぜん気になってくる。

たまたま井上先生の取材の時に、そういう話になったとき、
「JBLに関しては、アルニコとフェライトは良し悪しじゃなくて、好みで選んでいいよ」
と言われたことがあった。

どうもスタジオモニターのユニットをひとつひとつ、
アルニコとフェライトに入れ換えて試聴されたうえでの、結論のようだった。

でも、つづけて「2405だけはアルニコだね。これだけはアルニコの方が良いよ」と言われた。
4300シリーズのトゥイーターといえば、なんといっても2405である。
この2405の位置は、4341、4343、4344で異っている。
基本的にミッドハイの2420の横なのは一緒だが、
4341は2420(というよりもホーン2307の開口部)の真横ではなくやや下にズレている。
4343は反対に上にすこしシフトしている。
4344で、やっと真横に位置している。

4344は2405の位置を変えられないが、4341、4343は右でも左でもつけ換えられる。
そのための穴が開いていて、メクラ板で塞いでいる。

2307の開口部の両脇にお味大きさの穴がふたつ開いている。
そのため、視覚的バランスをとるため、上か下にシフトしているのだろうか。

このメクラ板が音質にけっこう影響を与えている。
フロントバッフルと面一(ツライチ)になっていたらそれほどでもないのに、
凹みができるように取りつけられている。
メクラ板が鳴き、その前にちょっとしたホーンのようなものがついているだけに、
このメクラ板を鳴きをどう抑えるかが、使いこなしのポイントになってくる。

メクラ板の材質を変えてみるのもいいだろうし、バッフルと面一になるように加工するのもいいだろう。
4350の大きな特長は、ダブルウーファー構成よりも、
ウーファー2231A、ミッドバス2202A、ミッドハイ2440、
これら3つのユニットのボイスコイル径が4インチで、同じだというところだ。

オーディオに興味をもちはじめたばかりの頃、2ウェイのホーン型システムが、
高域のドライバーに4インチ・ダイヤフラム、2インチ・スロートが多いのを疑問に思ったことがある。
2ウェイで、高域を伸ばすなら、4インチ・ダイヤフラムよりも2インチのほうだろう、と考えていたわけだ。
なぜ4インチなのか。その理由はしばらくしないとわからなかった。

4インチ・ダイヤフラムのコンプレッションドライバー採用のシステムは、
ほぼすべて15インチ(38cm)口径のウーファーを搭載している。

ユニットを組み合わせて、自作スピーカーを構築している人には当り前の事実だろうが、
JBLやアルテックの15インチ・ウーファーのボイスコイル径は4インチである。

ボイスコイル径を揃えることが、技術的にどういうメリットがあるのかは説明できないが、
音の上では、コーン型と、コンプレッションドライバー+ホーン型という異るユニットを
うまくまとめるノウハウなのだろう。

4343、4341のミッドバス2121のボイスコイル径は、発表されていないが、おそらく3インチのはず。
ウーファー2231Aは4インチ、ミッドハイの2420ドライバーは2インチと、すべて異る値だ。

これだけですべてが語れるわけではないことは承知しているが、
4350Aが、ぴたりとうまく鳴ったときのエネルギー感の統一感のある凄まじさ、
その音と較べると、4343が、どうしても中低域のエネルギーがやや不足気味なのは、
ボイスコイル径と無関係ではないと思う。
4343(4341も含む)と4350の、いちばん大きな違いは、中低域の再現力の差だと感じている。
システム全体の構成も、もちろん大きく違う。
4350Aは4343、4341と同じウーファー(2231A)の二発使用で、バイアンプ駆動が前提。
ミッドバス帯域のユニットも、25cm口径の212から30cm口径の2202に、
ドライバーも2420から2440に、全体的にスケールが一回り大きくなっている。

4343が、ある節度を保った、破綻の少ないまとまりのよさを見せるのに対して、
4350Aは凄みのある雰囲気を持つ。

バスレフポートの数も4343は2つ、4350Aは6つ、
エンクロージュアの奥行きも4350Aは50.3cmと、4333、4341とほぼ同じ値だ。

違いはいくつもあるが、それでもいちばんの違いは、中低域だ。

4341のときからそうだが、ミッドバスを加えた4ウェイ構成にも関わらず、
中低域の豊かさが不足している。
周波数特性的に問題なくても、聴感上、エネルギー感が不足気味で、
ミッドハイの2420とウーファーの2231Aの間にはさまれて喘いでいる、そんな印象さえ受ける。

もっとも4341では、逆にこのことが魅力にもつながっており、
スリムでセンシティヴとも言える音は、好きなひとにはたまらないはずだ。

4343になり、ユニットは同じながらも、中低域の鳴りの悪さは改善されており、
4341と比べると、音全体のスケール感は大きく、安定している感がある。
それでも中低域の豊かさを感じさせてくれるかというと、
中低域専用ユニットを持っているのに......、と言いたくなる。

4350Aは、さすがにそんな印象はまったくない。
4ウェイ構成の良さが──うまく鳴ったときの音に限るが──見事に活きている。
これが、JBLが、はじめて開発した4ウェイ・スピーカーだから、おそれいる。

正確には言えば、最初のモデルは4350で、2230ウーファーを搭載している。
4350は聴いたことがないので、4350Aで話を進めていく。
4341と4345には台輪(ハカマ)がついている。台輪の下に何かを置いて床から持ちあげても、
底板の鳴りは基本的に変化しない。
台輪の内側にブロックをかませたら、もちろん変化するが、台輪を利用するかぎり、
底板の鳴り(天板の鳴り)はメーカーが意図したままである。

4343に限らないが、台輪がないスピーカーを床にベタ置きしたとしよう。
底板は床によって補強されたのと同じになり、底板の鳴りは大きく減る。
するとどうなる。天板の鳴りが、逆に増えてしまう。
これはダイヤトーンが測定で明らかにしている。

天板の上に石や木を乗せて振動を抑えると、
次はエンクロージュアの強度的に弱い箇所の振動が増える。

どこかでエンクロージュアにたまっているエネルギーを消費しないと、
イタチごっこになってしまうわけだ。

4343の底板の四隅に木のブロックを、できるだけ外側にもってきて、
つまり底板が何にも接触していない面積をできるだけ広くした状態の音を聴いて、
ブロックを少しずつ内側に入れていく。
つまり底板の、フリーな面積が減ることになる。低音の表情が変化していく。

トーンコントロールやイコライザーなどの電気的なコントロールとは、
また違う、低域のコントロール方法である。

4343が縦置きだけのスピーカーで、もし台輪がついていたら、
4343の評価はすこし変わっていただろう。
4333Aの横幅と奥行きは619×514mm、4341は600×500mmと割合近い寸法だ。

エンクロージュアのプロポーションがどう音に影響するかを正確に把握するには、
いくつものエンクロージュアを試作して試聴することを行なうことだが、
メーカーの技術者でないかぎり無理である。

だから、私の印象は、あくまでも実際の製品を聴いてきた蓄積からのものである。

バスレフ型の場合、密閉型よりもエンクロージュアの奥行きの影響が大きいように感じている。
なんとなく、こういう理由かなぁ、と思っていることはあるが、まだはっきりとしたことは言えない。

それでも、バスレフ型はある程度の奥行きがあったほうが、好ましい低音が得やすい。そう感じている。

4343だが、低音が出ないわけではない。2π空間でなくても、低音を出すことはできる。
ただ、そうすんなり行かないことがケースが多い。

4343を設置する際、大抵の人が床と4343の底板の間に何かをかませるだろう。
木のブロックだったり、コンクリートのブロックだりをかませて、すこし床から持ちあげる。

ここで注意したのは、ブロックの材質の音が影響することもだが、
それ以上に、どういうふうにかませるか、である。

底板の鳴りは天板の鳴りと関係していて、天板の鳴りは音場感に影響する。
しかも天板が、聴取位置から見えなくても、だ。
4343は2π空間前提のスピーカーだから、ときとして低域が不足しがちなのか。

ブックシェルフ型スピーカーという言葉が生れたとき、
この手のサイズのスピーカーは、文字通り本棚の中に設置し、
スピーカーの周囲を本で埋めることでバッフルを拡大するのと同じ効果をねらい、
低域の量感をカバーしていた。

あらためて説明するまでもなく、壁に埋め込めば、低域の鳴り方は大きく変化する。
これも言うまでもないことだが、壁に埋め込まないまでも、左右、後ろの壁だけでなく、
さらに床に近づけることで、低域の周波数レスポンスは改善される。

理論的には部屋のコーナー、つまり左右の壁、床の3つの面が交差するところにスピーカーを置けば、
無響室での特性よりも18dB程度上昇することになる。
もっともこれは理想の壁、床の場合で、実際には6から12dBくらいだと言われている。

だから4343を壁に埋め込まずに使うと低域が不足すると、決めつけるのは間違っている。

4333Aはどうだろうか。

4333Aの外形寸法はW619×H778×D514mmで、4343よりもやや小さい。
人によっては、特にジャズが好きなひとは、4343の低域よりも4333Aのほうがずっといい、と言う。
バスレフポートのチューニングも違うだろうが、やはりエンクロージュアの奥行きが、
深く関わっているように思えて仕方がない。
4343は2π空間を前提に設計されていると書いた。その前身の4341はどうだろうか。
資料はないから断言できないが、4341の外観から判断すれば、
4π空間(フリースタンディング)での使用前提と言えないが、
少なくとも2π空間は考えられていないはずだ。

理由はエンクロージュア底部に台輪(ハカマ)がつけられているからだ。
壁に埋め込むことを想定していたら、こんなものはつけないはずだ。4345もハカマ付きだ。

4343と4344のエンクロージュアの外形寸法は全く同じだが、4343と4341は異る。
4341のほうが背が低く、奥行きがある。横幅もわずかだが狭い。
4341:W600×H950×D500mm
4343:W635×H1050×D435mm

4343は奥行きが足りないような気がする。そこが低音の鳴らし難さと関係しているのではないか。

4341、4343、4333A、4350A、すべてウーファーは2231Aである。
このなかで、低音不足になることが多いと言われるのは4343。
4333の奥行きは514mm、4350は508mm。

4343だけ、他のエンクロージュアと比べて約7cm薄い。

低域の鳴り方は、同じウーファー、同じ内容積のエンクロージュアでも、
とうぜんだがプロポーションによって違ってくる。
4343時代のころ、オンキヨーから、スピーカーの位相チェッカーが出ていた。
細長い形状で、パルスをスピーカーに入力して、先端のマイクロフォンで音をとらえ、
インジケーターの緑がついたら正相、赤がついたら逆相というものだった。
いまでも同じ機能のものは、他社から発売されているらしい。

これで4344を極性をチェックしたことがある。
結果は、ウーファーは逆相。ミッドバス、ミッドハイ、トゥイーターは緑が点灯し正相だった。
ネットワークだけの回路図ではなく、4344の回路図をみればわかるが、
ウーファーのプラス端子はネットワークのプラスにつながっている。
つまりユニットが逆相だから、ネットワークを通しても逆相である。
ところが、上3つのユニットは、ネットワークのプラスとユニットのマイナスがつながっている。
反転しているわけだ。だから、当然、トータルでは正相になる。

4343は逆相だったと記憶している。

2π空間での使用が前提の4343は逆相、
4π空間(いわゆるフリースタンディング)使用の4344は、ウーファーは逆相だが、
トータルでみれば正相といってもいいだろう。

このことから推測すると、おそらくL250もシステムとしては正相だと考えてもいいだろう。

この極性の変化は、デジタル時代を迎えるにあたってのJBLの変化なのだろう。
逸早くデジタル時代を見据えていたのだろう。
だからこそL250とともにデジタル・マスターレコーダーを運んできた、と私は考えるのだが......。
JBLのスピーカーユニットは、以前は、いわゆる逆相だった。
スピーカー端子のプラス(赤色)に、電池の+(プラス)をつなぐと、
通常は振動板が前に動くのだが、JBLは反対に後ろに動く。
これがJBLの音の秘密のひとつとも言えるが、音場感を重視した再生を目指すなら、
正相状態で使ったほうが有利である。

フルレンジスピーカーをお持ちなら、一度スピーカーのプラス・マイナスを逆にして聴いてみるといい。
逆相にして鳴らすと、音像型と表現したくなるような感じになることが多い。

ネットワークを使用したマルチウェイの場合、スピーカー端子のところで、
プラス・マイナスを反転させるのは、あまりおすすめしない。
なぜならネットワークはアンバランス構成であり、パワーアンプも大半のものがアンバランス出力だからで、
基本的にパワーアンプのアースとネットワークのアースを接続すべきであるからだ。
マルチウェイのスピーカーで反転した音を聴きたいのであれば、
スピーカーユニットの端子のところで反転したほうがいい。

ただし、これでも厳密に言えば、コイルの巻き方の向きの問題があるので、
他の要素を全く変えずに極性のみ反転させるのは、
バランス接続のアンプを使い、そのバランスケーブルのところで反転させるのが望ましい。

ここまでこだわらなくても、試しにスピーカー端子のところで反転した音を聴いて、
その状態の音が気にいったのであれば、スピーカーユニットの端子で反転させてみるのもいいだろう。

ネットワークがバランス構成のものも、数はひじょうに少ないがいくつかある。
それならば、スピーカー端子のところで反転してもかまわない。
4333のコンシューマーモデルがL300、4331のそれはL200(B)、
4343はL400が出ると言われていたけど、結局は登場しなかった。

これらスタジオモニター・シリーズとコンシューマーモデルの、いちばんの違いは再生空間である。

4343も、4333、4331は2π(パイ)空間での使用を前提に設計されている。
おもに低域の再生においてである。

最近ではあまり言われなくなったが、2π空間とは、スピーカーまわりの自由な空間の広さで、
2πが表すように、スピーカー前面の空間──水平方向180度、垂直方向180度、2つの180度空間である。
つまり4343、4333、4331は壁に埋め込んで使うことを前提している。壁バッフルを利用するわけだ。

L300、L200(B)、それにL250もそんな使い方は想定されていない。
4π空間──スピーカー前面だけでな後面も、水平、垂直の180度空間──での使用が前提である。
とくにL250はそうである。

そして4343のお姉さんにあたる4344も、じつは4π空間前提で設計されているスピーカーである。
なぜJBLはL250のためにデジタル・マスターレコーダーまで運んできたのか。

JBLのスタッフは、L250をデジタルのプログラムソースで聴いてほしかったためだろうが、
自社製品でもないレコーダー、それもかなりの重量物を日本まで持って来たのか。

なんの根拠もない推察だが、
おそらくL250の開発において、デジタルのソースで試聴していたのではないだろうか。

デジタルのソースで聴いた時、それまでのスピーカーとは違うよさをL250は発揮してくれる、
そう考えても良いような気がする。

B460もいっしょだったことも考え合わせたい。
L250のウーファーは14インチだが、JBLの発表によると、30Hzまでフラットに再生するという。
B460は、25Hz前後の帯域をフラットにする補正が加えられており、
実際のリスニングルームでの設置では20Hzまで拡張されるという。

−6dB/oct.のネットワークの採用、ピラミッド型のエンクロージュアなど、
あきらかに音場型スピーカーといえる特徴をもつL250、
そして音場感の再生で重要となる最低域の再生、それを受け持つB460、
この2つの組合せのよさをデモするのにふさわしいソースは、
低域再生に安定したよさを聴かせるデジタルのソースであろう。
スピーカーの周波数特性で、振幅周波数特性を重視するか位相回転の少なさをとるかで、
ネットワークの次数は自然と決ってくる。

もっともシンプルで、カーブはゆるやかたが、位相回転の少ないのは−6dB/oct.型である。

古くは、井上先生が愛用されたボザークのスピーカーがそうである。
カーブがゆるやかなため、ひとつひとつのユニットの再生周波数帯域はある程度広く、
しかも周波数特性の両端に共振峰が少ないことが求められる。
そのためホーン型ユニットで採用されることはほとんどない。

L250のユニットは、すべてダイレクトラジエーター型。しかも専用ユニットが開発されている。

エンクロージュアもピラミッド型で、上部に行くに従い細くなっている。
平行面を減らし定在波を抑えるとともに、
JBLのスピーカーにはめずらしい、ユニットまわりのバッフルの面積を小さくするなど、
いわゆる音場型スピーカー的アプローチをとっている。

L250のプロトタイプは、グレッグ・ティンバースが、自身のために作ったものとのこと。

もしかすると、L250は、それまでのJBLのスピーカーとは異り、
逆相ではなく正相ではなかったかと、いま思っている。
L250とB460が、ステレオサウンドの試聴室に持ち込まれたとき、
JBLのスタッフ2人に、ハーマン・インターナショナルの人、通訳の人、それに編集部数人。
しかもJBLのスタッフは、スピーカーだけでなく、
3M(だったはず、もしかするとサウンドストリーム製か)のデジタル・マスターレコーダーと
マスターテープからのダイレクトコピーをプログラムソースとして用意しての大がかりなものだった。

このころのステレオサウンドの試聴室は、長辺の壁にスピーカーを置いていた。
L250をかなり左右に広げて設置して、その真ん中にデジタルレコーダー。
エレベーターにぎりぎりはいったくらいの大きさと重さで、ここ以外に設置場所はなかった。
しかもB460も設置しなければならなかったのだから。

L250は型番からわかるように、それほど高価なスピーカーではない。
にも関わらず、JBLの、この力の入れようは、正直、すこし不思議に思えた。

ユニットの構成からすると、ティンバース設計の4315に近い。
ウーファーは14インチ、ミッドバスは8インチ、ミッドハイは5インチのコーン型。
トゥイーターのみ1インチ口径のドーム型。
クロスオーバー周波数は、400Hz、1.5kHz、5kHz。
4343は、300Hz、1.25kHz、9.5kHzだ。

ミッドハイとトゥイーターのクロスオーバーは1オクターブほど違うが、
もっとも異るのは、ネットワークの減衰特性である。

L250は−6dB/oct.のカーブを採用している。
JBLのスタジオモニターの4331、4333には、それぞれコンシューマーモデルがあった。
L200とL300である。
4331、4333を基本として開発されていて、フロントバッフルは傾斜しており、
床に直置きしたときに、椅子にかけた聴き手の耳の高さに合うようにである。
エンクロージュアの仕上げも丁寧で、家庭で使うにふさわしい内容のスピーカーといえる。
ダグ・ワーナーによるスタイリングだ。

4343が出たときに、そのコンシューマー版、つまりL400が出る、とうわさになっていた。
JBLが、出す、といっていたらしい。
1976年暮にステレオサウンドから出た別冊「コンポーネントステレオの世界 '77」の
岩崎先生の組合せのページに、この話が出ている。
結局、L400は出なかった。

代わりかどうかはわからないが、82年に、L250が出る。4ウェイ構成のコンシューマーモデルだ。
手がけたのは、グレッグ・ティンバースだ。
そして同時に、ティンバースが設計した18インチ・ウーファー2245H(4345のウーファーでもある)を
搭載したサブウーファー、B460も登場した。

L250は、ハーマン・インターナショナルが、JBLを買い戻して最初に企画したスピーカーでもある。
4345がはじめてステレオサウンドに登場したとき、瀬川先生が記事を書かれている。
そのなかで、試しにバイアンプ駆動を試してみたが、最近のJBLのスピーカーシステムのネットワークは、
L150以降、格段に良くなっているため、試聴という短い時間の中では、好感触を得られなかった、とある。
JBL 60th Anniversary には、L150を手がけたエンジニアの名前の記述は見あたらないが、
少なくともL150のネットワークは、グレッグ・ティンバースの手によるものだろう。

4345の記事を読みながら思っていたのは、その新しい技術のネットワークが4343に採用されたら、
どんなに素晴らしいか......、4343に惹かれるものにとって、4345のスタイルは、音のよさは認めながらも、
やはりなんとかしてほしい、と思っていただけに、
4345のネットワーク3145を、4343に組み込んでみたいということだった。

その妄想に対するJBLの答えが4344なのだが、それでも、一度試してみたいと思いつづけている。
4343と4344の違いは、こまかく見ていくと書き切れないほどある。

ユニットも、ウーファーとミッドバスだけの変更にとどまらず、
ミッドハイのドライバーも、4343、4345に搭載されている2420のダイアフラムのエッジを、
ウェスタン・エレクトリックの時代から続いていたタンジェンシャルエッジに比べ、
再生帯域内の周波数レスポンスがよりフラットで、
高調波成分も抑えられたダイアモンドエッジに変更している。
これにともないドライバーも、2420から2421となっている。

型番上はなんら変更のないトゥイーターの2405も新型ダイアフラムを採用している。

エンクロージュアも改良されている、ユニットのレイアウトも違う。
同じなのはエンクロージュアの外形寸法と、4ウェイ4スピーカーという形式ぐらいかもしれない。

すべての変更点の積み重ねによって、4343と4344の性格の違いがあるのだが、
個人的にはネットワークの存在が大きいと考えている。

4344の開発エンジニアは、グレッグ・ティンバース。
ステレオサウンド刊行のJBL 60th Anniversary には、
彼の技術の中核はネットワーク・エンジニアリングを通して、
ユニットとシステムのレスポンスを繊細にチューニングし、
最適の性能を得ることだとある。
「4343のお姉さん」とは、黒田先生が、4344に対して語られた言葉だ。

ステレオサウンドの62号に、こう書かれている。

     ※
4344の音は、4343のそれに較べて、しっとりしたひびきへの対応がより一層しなやかで、はるかにエレガントであった。したがってその音の感じは、4343の、お兄さんではなく、お姉さんというべきであった。念のために書きそえておけば、エレガント、つまり上品で優雅なさまは、充分な力の支えがあってはじめて可能になるものである。そういう意味で4344の音はすこぶるエレガントであった。
     ※
「4343のお姉さん」は、4344の特質を一言で的確に表現されている。
ただ、JBLのラインナップ、技術的な内容から言えば、4345の妹、といったほうが、よりぴったりくる。
黒田先生の表現は、あくまでも4343と4344の比較の上でなされたものだから、
4345に対してどうのということはなくて当然である。

4344は、外形寸法は4343はまったく同じである。
しかし、「4343と103」で述べたようにエンクロージュアのつくりは異る。
フロントバッフルのこともそうだが、補強棧の数、入れ方も大きく違う。

4344では、底板と天板の横方向に補強桟が入っているし、
側板の補強桟も鳴きを抑えるよりも、うまく利用するような方向に変わっている。

補強桟の断面は正方形ではなく長方形で、通常なら、補強桟を横向き、
つまり断面の長辺を補強したい板に接着する。4343もそうだった。

4344からは短辺のほうを接着している。これは現行製品の4348も同じである。

それからミッドバスのユニットは、4345と同じ2122Hに変更されるとともに、
バックキャビティも奥行きが増している。

あまり知られていないようだが、4345と4344のネットワークの回路図を見ると、
まったく同じである。コンデンサーやコイルの定数も同じだ。

ユニット・レイアウトやバスレフポートの位置もそうだし、
4345と4344の開発エンジニアは、グレッグ・ティンバースで、
4341、4343、4350は、パット・エヴァリッジであることから、
4344は4345から派生したもの、4345の妹機と見たほうがいいだろう。
4343までのJBLのエンクロージュアの大きな特長は、リアバッフルを含めて、
はずさせるところが1箇所もなかった点だ。
エンクロージュア強固につくるために、ユニットもネットワークも、表からの取りつけとなっているし、
板と板の接ぎ合わせは、いわゆる接着ではなく、
JBLがウッドウェルドと呼ぶ、一種の溶接に近い方法をとっている。
エンクロージュアの材質のチップボードは、木を細かくしたチップを接着剤で練り固めたもので、
接合部に高周波加熱をすることで、チップボードから接着剤が融け出し、溶接のように一体化する。

このころのJBLのエンクロージュアは、意外にチップボードが使われていた。
積層合板を正式に採用し、それを謳ったのは、4344のフロントバッフルからのはずだ。

また4344ではドライバー、トゥイーターの交換が簡単に行なえるように、
リアバッフルの上部がネジ止めされるようになっている。
これは4345から採用されている。

4343の、向きを変えられるようにしたバッフルは、あたりまえだがネジ止めである。
フロントバッフルが一枚板で、しっかりと接着されている4341、4344とは異るし、
4343の弱い点だと指摘される方もいる。

実際、そうだろうし、4343のフロントバッフルが一枚板でしっかりと固定されていたら、
4343は、もうすこし使いこなしやすくなっていたかもしれない。
とはいえ、一枚バッフルだったら、ウーファーとレベルコントロール・パネルとの間のスリットがなくなる。
4343のカッコよさに惹かれたものにとって、これは、かなり重要なことだ。

4343のバッフルの向き変えとユニット配置は、どちらが先に発想されたのだろうか。
4341、4344と同じユニット配置では無理だし、
ウーファー、ミッドバス、ミッドハイのユニットの中心を揃えた配置だから可能なことである。
4343だけ違うユニット配置ということから推測すれば、
おそらくバッフルの向き変えの発想が先にあったのではないだろうか。

縦置き、横置き、どちらでも使えるようするという発想は、KEFの103のサイズだったらわかるが、
4343サイズのスピーカーで、それをやってしまうのは、アメリカだからできるのかもしれない。
JBLの4343とKEFの103の共通点は、どちらも横置き、縦置きでも使えるように
フロントバッフルを向きを変えられるところである。

103は、鋼板のフロントバッフルには20cm口径のベクストレン・ウーファーB200と、
5cm口径のドーム型トゥイーターT52が取りつけられている。
4343は、フロントバッフルが2分割されており、ミッドバスより上の帯域、
3つのユニットとレベルコントロール・パネルが取りつけられているフロントバッフルが
取り外し可能で、向きを変えられるようになっている。

4341と4343の違いのひとつがこれであり、そのため4341にあった台座はなくなり、
4343では底板も化粧仕上げとなっている。

この構成のためもあってか、4341と4343はユニットの配置が異るし、
4343ではミッドバス、ミッドレンジ、トゥイーターの3つのユニットがぎゅっと近接している。
かわりに、ウーファーとの距離は、縦置きの場合、レベルコントロール・パネルが間にあるため
4341のときよりも離れているし、
ウーファー用のバッフルと上3つのユニット用のバッフルの間にはスリットがある。
細いスリットだが、これが4343の印象をずいぶん引き締めたものにしている。

五味先生とJBL

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五味先生のJBL嫌いは有名である。

ステレオサウンド刊の「オーディオ巡礼」に収められている「マタイ受難曲」の中では、こう書かれている。 
     ※
たとえばJ・B・ランシングの〝パラゴン〟の音である。知人宅にこいつがあって、行く度に聴くのだが、どうにも好きになれない。あげくには、パラゴンを愛聴する彼と絶交したくさえなってきた。誰が何と言おうと、それは、ジャズを聴くにはふさわしいがクラシカル音楽を鑑賞するスピーカー・エンクロージァとは、私には思えないし、モーツァルトの美がそこからきこえてくるのを聴いたためしがない。私の耳には、ない。知人は一人娘の主治医でもあるので、余計、始末がわるいのだが──世間では名医と評判が高いから娘のからだはまかせているけれど──こちらが大病を患っても、彼には診てもらいたくないとパラゴンを聴くたびに思うようになった。 
 まあそれぐらいジムランの音色を私は好まぬ人間である。 
     ※
ここまで書かれている。パラゴンとメトロゴンの違いはあるけれど、
五味先生はパラゴンの姉妹機メトロゴンを所有されていた。しかも手放されることなく、である。 

五味先生がメトロゴンについて書かれていたのは見たことがない。
けれど、数カ月前、ステレオサウンドから出た
「往年の真空管アンプ大研究」の272ページの写真をみてほしい。
「浄」の書の下にメトロゴンが置いてあるのに気がつかれるはずだ。

ことあるごとにJBLを毛嫌いされていた。
けれど、新潮社刊「人間の死にざま」に、ステレオサウンドの試聴室で、
4343を聴かれたときのことが載っている。

     ※
原価で総額二百五十万円程度の装置ということになるが、現在、ピアノを聴くにこれはもっとも好ましい組合せと社長(注:ステレオサウンドの、当時の原田社長、現会長)がいうので、聴いてみたわけである。なるほど、まことにうまい具合に鳴ってくれる。白状するが、拙宅の〝オーグラフ〟では到底、こう鮮明に響かない。私は感服した。 
(中略)
〝4343〟は、同じJBLでも最近評判のいい製品で、ピアノを聴いた感じも従来の〝パラゴン〟あたりより数等、倍音が抜けきり──妙な言い方だが──いい余韻を響かせていた。(中略)楽器の余韻は、空気中を楽器から伝わってきこえるのではなくて、それら微粒子が鋭敏に楽器に感応して音を出す、といったトランジスター特有の欠点──真に静謐な空間を有たぬ不自然さ──を別にすれば、思い切って私もこの装置にかえようかとさえ思った程である。 
     ※
おそらく、このころであろう、ステレオサウンドの記事「オーディオ巡礼」で、奈良在住の南口氏のところで、4350の音を聴かれ、驚かれている。
さらに前になると、瀬川先生のところで、375と蜂の巣を中心とした3ウェイ・システムを聴かれ、
「瀬川氏へも、その文章などで、私は大へん好意を寄せていた。ジムランを私は採らないだけに、瀬川君ならどんなふうに鳴らすのかと余計興味をもったのである。その部屋に招じられて、だが、オヤと思った。一言でいうと、ジムランを聴く人のたたずまいではなかった。どちらかといえばむしろ私と共通な音楽の聴き方をしている人の住居である。部屋そのものは六疂で、狭い。私もむかし同じようにせまい部屋で、生活をきりつめ音楽を聴いたことがあった。(中略)むかしの貧困時代に、どんなに沁みて私は音楽を聴いたろう。思いすごしかもわからないが、そういう私の若い日を瀬川氏の部屋に見出したような気がした。(中略)
 ボベスコのヴァイオリンでヘンデルのソナタを私は聴いた。モーツァルトの三番と五番のヴァイオリン協奏曲を聴いた。そしておよそジムラン的でない鳴らせ方を瀬川氏がするのに驚いた。ジムラン的でないとは、奇妙な言い方だが、要するにモノーラル時代の音色を、更にさかのぼってSPで聴きなじんだ音(というより音楽)を、最新のスピーカーとアンプで彼は抽き出そうと努めている。抱きしめてあげたいほどその努力は見ていて切ない。」
とステレオサウンド16号に書かれている。

妄想食玩

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今日去年の春ごろ登場した、フェンダーのギター1/8スケールの食玩。
http://www.f-toys.net/p_fender-g.html 

とっくに売り切れてしまったと思っていたら、近所のコンビニエンスストアにまた入荷していた。
食玩の中では、息が長い。やっぱり人気があるのだろう。

箱を手にとって思っていたのは、70年代オーディオの食玩を、出して欲しい、ということ。
マークレビンソンのLNP2やJBLの4343、EMTの930St もいいし、
もうすこし古いところでは、JBLのパラゴンやハーツフィールド、
タンノイのオートグラフやモニターレッド、アルテックの604などなど。 

内部構造までのぞきこめるようになっていたら、かなりヒットするはず......。
JBLの4341(4343)について考えてみる。 
JBLのモニターシリーズには、4333が同時期にあった。 
ユニット構成は、4341(4343)に搭載されたミッドバス2121を除けば、ウーファーは2231A、ドライバーは2420、トゥイーターは2405と同じ。 
スピーカーの周波数特性としては、エンクロージュアのプロポーション、内容積は異るが、
上限と下限はほぼ同じである。 

4333のウーファーとミッドレンジのクロスオーバーは800Hz。
4341(4343)のウーファーとミッドバスのクロスオーバーは300Hz。 
周波数特性的には4333も4341(4343)も、2231の良好なところで使っているが、
指向性に関しては、4333は多少狭まっている帯域まで使用している。 

スピーカーの指向性は狭い方がいい、という意見もある。
部屋の影響をうけにくいから、ということで。 
けれど、再生周波数帯域内で、指向性が広いところもあれば極端に狭いところもあり、
スコーカーの帯域に行くと、また広がる、そんな不連続な指向性がいいとは思えない。 
狭くても広くても、再生帯域内では、ほぼ同じ指向性であるのが本来だろう。 

4341(4343)から、JBLの真のワイドレンジがはじまった、と言えると思う。

トーレンスのアナログ・プレーヤー "リファレンス"の実物をはじめて見て、 

その音を聴いたのは、もうずいぶん前のこと。 

まだ熊本にいたころ、高校3年生の時だから、27年前になる。 

熊本市内のオーディオ店(寿屋本庄店)で、 

(たしか)三カ月に1度、土日の二日連続で開催されていた 

瀬川先生の「オーディオ・ティーチイン」というイベントにおいて、である。 


そのときのラインナップは、 

トーレンスのリファレンス、 

マークレビンソンのLNP2L とSUMOのTHE GOLDの組合せで、 

スピーカーは、もちろんJBLの4343。

この時、正直にいえば、パワーアンプはTHE GOLDではなく、

LNP2LとペアになるML2L で聴きたいのに......と思っていた。


いろんなレコードの後、 

最後に、当時、優秀録音と言われていて、 

瀬川先生もステレオサウンドの試聴テストでよく使われていた 

コリン・デイヴィス指揮の 

ストラヴィンスキーの「火の鳥」をかけられた。 


もうイベントの終了時間はとっくに過ぎていたにもかかわらず、 

なぜか、レコードの片面を、最後まで鳴らされた。 


そのときの音は、いま聴くと、 

いわゆる「整った」音ではなかっただろう。

けれど、その凄まじさは、いまでもはっきりと憶えているほど、

つよく刻まれている。


レコードによる音楽鑑賞、ではなくて、音楽体験、 

それも強烈な体験として、残っている。


聴き終わって、瀬川先生の方を見ると、 

ものすごくぐったりされていて、顔色もひどく悪い。 


いつもなら、イベント終了後、しばらく会場におられて、 

質問やリクエストを受けつけられるのに、 

その日は、すぐに引っ込まれた。 


「体の調子が悪いんだ。 

なのに『火の鳥』、なぜ最後まで鳴らされたのかなぁ

途中で針をあげられればよかったのに......」と、 

そんなことを考えながら、店の外に出ると、 

駐車場から出てきた車のうしろで、さらにぐったりされている瀬川先生の姿が見えた。

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