BBCモニターの最近のブログ記事

耳の固有音に関係してくるのは、時代と風土も、無視できないだろう。

ほぼ同じだけのオーディオのキャリアもつ人がふたりいたとしても、生れた時代によって、
耳にしてきた音の性格も異る。

アクースティックな蓄音器の時代から、レコードの音を聴いてきた耳の固有音と、
ステレオ時代しか知らない世代の耳の固有音、
それからCD以降の音しか知らない世代が、これからキャリアをつんだときの耳の固有音、
これらは違って当然だろう。

1963年生れの私は、オーディオに関心をもつまでに、もっとも長く耳にしていたスピーカーの音は、
それはテレビに内蔵されているスピーカーの音であり、ラジオのスピーカーだった。

幼いころにあったテレビは、まだ真空管式だったはずだ。
スピーカーは、紙コーンのフルレンジ型。

テレビも音声多重放送がはじまると、フルレンジ型だけでなく2ウェイ構成のものも登場してきた。
ラジカセも、私が学生のころはフルレンジだけだったのが、いつのまにかマルチウェイ化されていった。

テレビ、ラジオといった身近なスピーカーの音も、時代によって変化している。

外に出ればわかるが、いま音楽を聴くのは、
スピーカーよりもヘッドフォン、イヤフォンが多いという人も増えている。

キャリア(時間)が同じだとしても、
ステレオサウンドの「スーパーマニア」に登場した人たちと同じ構成の装置を、
これからの人たちの耳が選択するとは思えない。

これはどちらがレベルが高いとか、センスがいいとか、そういったことではなく、
生まれ育った時代による耳の固有音の形成され方の違いということでしかない。
耳の固有音について考えると、もちろん個人差があるし、同じひとりの人間でも、
それまでの体験の蓄積によって、耳も成長し、耳がもつ固有音も変化していくのだろう。

ステレオサウンドの50号ごろからはじまった「スーパーマニア」の連載の初期のころに登場された方々が、
なぜ真空管アンプ(それもシングルアンプが多かったように記憶している)で、
高能率のスピーカーを鳴らされていることに、つよい関心があった。

そういった方々の多くの人は、そうとうな遍歴を経た上で、誌面に登場されたときの装置を選択されている。

そのとき、まだ10代なかばだった私は、関心をもちながらも、その理由についてはまったく想像できなかった。

けれど、耳の固有音の形成如何によっては、それまでどういう音を聴いていたかによっては、
高能率スピーカーと真空管のシングルアンプの組合せが、無色透明とはいかないまでも、
意外にも、それほどつよい個性を感じさせずに、自然と音楽が響いてくる音なのかしれないと、
ここ数年思うようになってきた。

これが歳を重ねるということなのだろう。
では、いま現在、無色透明な音は存在し得ないのか。

そんなことはないと思う。

スピーカーひとつひとつに固有音がある。アンプやその他のオーディオ機器に固有音がある。
もちろんレコード(録音)にもあるし、アンプやスピーカーを構成するパーツや素材にも、固有音は存在する。

固有音が存在しないものは、いまのところ世の中にはない。

そう、聴き手であるわれわれにも、固有音があるのではなかろうか。
だから、同じ部屋で同じ音を、同時に聴いて、音の評価が大きく異なることがすくなくないのも、
そのことが関係しているのかもしれない。

個々人の耳に、それぞれ固有音があるとしたら、あるとき、ある瞬間だけ、
固有音すべてが相互に関係し合い、打ち消し、補整することで、無色透明の音は存在し得ないとはいえない。

すべて人にとっての無色透明は音は、いまのところない。
あるひとにとって、未来永劫、無色透明な音もない。

けれど、すべての条件が、たまたまうまく絡み合ったときに、起き得ないと、だれが言えるのだろうか。
ずっと以前は、モニタースピーカー・イコール・アラ探しのためのスピーカーと捉えられていたようだ。

いま、そういう捉え方をする人は、ほとんどいないだろうし、そういうスタジオモニターも、
ほとんどないといってもいいだろう。

ならば、モニタースピーカーの定義とは、何なのだろうか。
はっきりした定義は、いまだないように思う。

なんとなく、これはモニタースピーカー、あれは家庭用スピーカーだな、と個々人が、
勝手に、そこに境界線を引いているという、あいまいさが残ったままなのか。

どんなスピーカーにも、かならず、そのスピーカーならではの固有音がある。
固有音、つまり個性・癖がまったく存在しないスピーカーこそ、無色透明のスピーカーとなるわけだが、
いまのところも、これからもさきも、少なくともあと10年、20年ぐらいで、
「スピーカーの音」というものがなくなるとは思えない。

いまのスピーカーの原理であるかぎり、パワーアンプから送られてくる電気信号の、
ほんのわずか数%しか音に変換できない。のこりは熱となって消費されているわけだ。

これが70%以上、そんなにいかなくてもいいかもしれない。
50%程度でも音に変換できるようになれば、スピーカーの音というものは、ずいぶん大きく変容することだろう。

さらに80から90%ほど音に変換できるようになれば、ほとんど変換ロスがなくなってくれば、
スピーカーの音は、かぎりなく無色透明になっていくのであろうか。
1990年前後から日本の録音スタジオにモニタースピーカーとして導入され、
知名度を急激に上げていったスピーカーがある。

絶賛する声も、現場では多かった反面、
「このスピーカーでは仕事(モニタリング)ができない」という声もあったときいている。

このスピーカーと、たとえば誰も絶賛しないけれど、誰も「使えない」と全面否定もしない、
いわば可も不可もなく、といったモニタースピーカーがあったとして、
さて、どちらがモニタースピーカーとして、優れているのか、あえて点数をつけるとすれば、どちらが高い点数を獲得するのか。
そんなことを考えてみたくなる。

前者のスピーカーには、ひじょうに高い点をつける人もいれば、
まったく点を与えない人もいるだろう。そうすると平均点はそれほど高くならない。

後者のスピーカーはどうか。高い点は得られないだろう。でも極端に低い点をつける人もいないだろう。
となると平均点は、前者のスピーカーと対して変わらない、ということになるかもしれない。

つまりこのふたつのモニタースピーカーは、ほぼ互角かというと、決してそんなことはなく、
ここがスピーカーの選択・評価の、微妙なところであり、面白さであろう。
JBLの4343もモニタースピーカーだし、ロジャースのLS3/5AもLS5/8も、やはりモニタースピーカーである。

モニタースピーカーとはいったいどういう性格の、性能のスピーカーのことをいうのだろうか。

コンシューマー用スピーカーとの本質的な違いは、あきらかなものとして存在するのであろうか。

たとえばヤマハのNS1000Mの型番末尾の「M」はMonitorの頭文字である。
だからといって、NS1000Mが、モニタースピーカーとして企画され、開発製造されていたとは思わない。
あきらかにコンシューマー用スピーカーなのだが、1970年代、スウェーデンの国営放送局が、
このスピーカーをモニタースピーカーとして正式に採用している。

そうなると、単なる型番の名称ではなく、「モニタースピーカー」と堂々と名乗れる。

QUADのESLも、純然たる家庭用スピーカーの代表機種にもかかわらず、
レコーディングのスタジオモニターとして採用されていたこともある。

スタジオモニターといえば、大きな音での再生がまず絶対条件のように思われている方もおられるかもしれないが、
モニタリング時の音量は、アメリカ、日本にくらべるとイギリス、ドイツなどは、かなり低めの音量で、
一般家庭で聴かれているような音量とほとんど変らないという。

だから、ESLでも、多少の制約は、おそらくあっただろうが、十分モニターとしての役割を果していたであろう。
105.2ほどではないにせよ、BBCモニター系列のスピーカーは、
左右でシリアルナンバーの揃っているモノ、続き番号のモノが出荷され、ユーザーの手もとに届く。

4343までのJBLとは、ここが違う。

モニタースピーカーという、同じ枠の言葉で括られてしまうのがおかしいほどに、
JBLのスタジオモニター・シリーズととBBCモニタースピーカーは、違いが多々ある。

JBLの場合、スタジオモニターという名が付くスピーカーだけに、これらを使う者は、
プロもしくはそれに準ずるレベルをもつ人であり、相応のシステムを装備していることを前提としていると思える。

スタジオには多素子のグラフィックイコライザーもあれば、スペクトラムアナライザーもあろう。
だからスピーカー側にも、連続可変のレベルコントロールをウーファー以外のユニットすべてにつけて、
細かく調整可能にしておけばいいと考えではなかったのか。

そうしておけば、少々のバラツキは、使い手側で、ほぼ完全に補正できるからだ。

作っている側もプロなら使う側もプロ、そういう前提を無視して、
あまりにも4343までの、JBLの一連のスタジオモニターについて語りすぎていたのではなかろうか。

そうして4343への誤解が生まれていった。
現代スピーカー考(その11)の補足でもあるが、
クックは「105はフェイズリニアのスピーカーではない」といい、リニアフェイズスピーカーというのは、
再生周波数帯域内の位相特性が水平で一直線のことであり、技術的には不可能なこととも言っている。

「日本でリニアフェイズとされて売られているスピーカー」──テクニクスのスピーカーのことである──は、
クックによると、そのスピーカーの再生周波数帯域においてリニアフェイズではなく、
ある特定の帯域のみリニアフェイズだということらしい。
600〜6000Hzくらいの帯域でのみリニアフェイズを実現している、とのこと。

一方105はというと、位相特性のグラフの線は低域から高域にいくに従って下がっていくが、
再生周波数帯域内ではカーブを描いたり、段差がついたりせず、直線だということだ。

水平ではないが、帯域内では直線の位相特性の105、
600〜6000Hz内ではほぼ水平の位相特性だが、
600Hz以下では上昇カーブ、6000Hz以上では下降カーブを描くテクニクスのスピーカー、
どちらがステレオ用スピーカーとして、聴感上優位かといえば、個人的には前者だと考える。

もっとも位相特性をほとんど考慮していない設計のスピーカーでは、帯域内で急激な位相変化を起こすものもある。

クックは、さらに大切なこととして、「軸上だけでなく、軸上からはずれたところでも聴いて、
そのよしあしを判断すべき」であり、「スピーカーの周りをグルッと回って聴くことも必要」だと語っている。
しかも耳の高さもいろいろ変えてみると面白いとつけ加えている。

クックがステレオ用としてのスピーカーのありかたを意識していることが、
ここに伺えるような気がして、ひじょうに興味深い。
レイモンド・E・クック(Raymond E. Cooke)はステレオサウンド「コンポーネントの世界 '78」のインタビューで、
これからのスピーカーはコヒーレントフェイズ(Coherent Phase)
もしくはフェイズリニアになっていく必要がある、と答えている。

それは、やはりステレオ再生用スピーカーとして求められる条件だと、クックは考えていたのだろう。
モノーラル再生で優れた音を再現してくれるスピーカーが、
必ずしもステレオ用として優れているかどうかは断言できない。

モノーラル時代のスピーカーには求められなかったこと、
ステレオ時代のスピーカーに求められることは、左右のスピーカーがまったく同一であることも含まれる。

インライン配置の左右同一か左右対称のユニットレイアウトだけでなく、測定できるすべての項目において、
バラツキがひじょうに少ないこともあげられよう。

位相特性も重要なことだが、フェイズリニアが論文として発表されているのは、
クックによると、1936年のことらしい。モノーラル時代のことだ。
発表したのは、ジョン・ヘリアーという人で、ベル研究所の人物らしい。

コヒーレントフェイズは、クックとKEFの技術重役フィンチャムが、1976年9月、
東京で講演したのが最初だという。

そしてフェイズリニアのスピーカーとして最初に市販されたのは、
QUADのESLで、1954年のことだ、とクックは語っている。

1954年、やはりモノーラル時代のことである。
KEFの105は、製造ラインをコンピュータ管理していること、
振動板の素材にバラツキの少ない高分子系のモノをつかっていることなどから、
もともと品質・特性のバラツキは少ないスピーカーであったが、
105.2になり、さらにバラツキは少なくなり、KEFの研究所にある標準原器との差は、
全データにおいて1dB以内におさめられているモノのみ出荷していた。

JBLの4344、4343からすると、このバラツキのなさ(少なさというよりもなさと言ってもいいだろう)は、
KEFという会社のスピーカーづくりのポリシー、
そして中心人物だったレイモンド・E・クックの学者肌の気質が結実したものだろう。

出荷の選別基準を1dB以内まで高めたことは、製造時のバラツキの少なさの自信の現われでもあろう。
バラツキの大きいものが作られれば、その分、廃棄されるものも増え、製造コストは増していくばかりだ。

バラツキの少ない素材の選定から製造ラインの徹底した管理などともに、
バラツキを抑える有効な手段といえるのが、ネットワークの高次化ではなかろうか。

特性を揃えるということは、できるだけユニットをピストニックモーションの良好な帯域のみで使い、
分割共振が増してくる帯域はできるだけ抑えることでもある。

コントロールがきかなくなりつつある分割共振の帯域が、レベル的に高いままユニットから出ていては、
スピーカーシステム・トータルの特性もバラついてくる。

もちろんバラツキをなくすためだけに高次ネットワークを採用したわけではなかろう。
それでも高次ネットワークと出荷選定基準の引き上げは、決して無関係ではないと考えられる。
ウーファーのハイカットを−6dB/oct.でやる場合、コイルをひとつ直列に挿入すればいい。
トゥイーターのローカットは、コンデンサーをひとつ挿入するだけ。

簡単できることなので、フルレンジユニットでもいいから、適当な値のコンデンサー、
もしくはコイルを直列に挿入した音を聴いてみてほしい。

−6dB/oct.型カーブのゆるやかさが実感できる。
ウーファーならば、特に高域まで素直に伸びているユニットならば、
高域がけっこう出ていること、つまり、あまりカットされていないことに驚かれるかもしれない。

なぜスピーカーシステムをマルチウェイ化するのか。

それぞれのユニットを良好な帯域で使いたいためだが、−6dB/oct.型ネットワークを採用するということは、
使用ユニットそれぞれは、十分な帯域幅をもっていることが前提となる。

狭帯域のユニットだと、−6dB/oct.のゆるやかなカーブでは、分割共振が増えてくる領域までも、
かなり高い音圧レベルで、ユニットから出てくることになる。
同じカットオフ周波数でも遮断特性が−18dB/oct.型となると、分割共振が目立つ帯域は、かなり抑えられる。
KEFの105(ことわっておくが、KEF独自の同軸型ユニットUniQを採用した機種ではなく、
1977年に登場した、階段状の3ウェイ・モデルのほうである)は、
−6dB/oct.のゆるやかな遮断特性のネットワークを採用している。

各ユニットの取りつけ位置を前後にずらしていることから分かるように、
105は位相特性の、十分な配慮が特長のスピーカーシステムであるだけに、
位相回転の少ない−6dB/oct.型を採用するのは、当然といえる。

だが105 SeriesII (105.2) のネットワークは、より高次の、基本的に−18dB/oct.型へと変更されている。

ウーファーも新型ユニットに変更され、エンクロージュアの外観も多少変った105.2の音は、
残念ながら聴く機会がなかった。
できれば105と105.2を比較試聴したいところなのだが、なぜKEFは、ネットワークの変更を行なったのだろうか。


そういえば瀬川先生が、ステレオサウンド 56号に書かれていたことを思い出す。

JBLのパラゴンのトゥイーター(075)・レベルについて
「最適ポイントは決して1箇所だけではない。指定の(12時の)位置より、少し上げたあたり、少なくとも2箇所に、それぞれ、いずれともきめかねるポイントがある。そして、その位置はおそろしくデリケート、かつクリティカルだ。つまみを指で静かに廻してみると、巻線抵抗の線の一本一本を、スライダーが摺動してゆくのが、手ごたえでわかる。最適ポイント近くでは、その一本を越えたのではもうやりすぎで、巻線と巻線の中間にスライダーが跨った形のところが良かったりする。まあ、体験してみなくては信じられない話かもしれないが。」
という記述だ。

パラゴンと4344というシステムの違いはあるが、巻線抵抗のレベルコントロールは共通している。
その微妙さ(ときには不安定さ)も共通しているといえよう。

さきほどまでの、いい感じで鳴ってくれた音と、もう少しと欲張り、先に戻せなかった音の、
レベルコントロールの位置の差は、
まさに「巻線と巻線の中間にスライダーが跨った」かどうかの違いだったのかもしれない。

そうやって微妙な調整を経て、音はピントが合ってくるもの。
だから、巻線抵抗のレベルコントロールに文句を言っているように感じられるだろうが、
否定しているわけではない。

BBC モニター系列のスピーカーにレベルコントロールがついている機種は、あまりない。
ついていても連続可変ではなく、タップ切替による段階的なものである。
一度、ステレオサウンド試聴室のリファレンススピーカーだったJBLの4344のレベルコントロールを、
自分なりに徹底的に調整してみようと思い、夜、ひとりで試聴室にこもったことがある。

意外にもミッドハイのレベル差が大きく、少しずつ連続可変のレベルコントロールを動かしては音を聴き、
また席を立ち4344のところに行き、ほんの少しいじる。

あるポイントで、ひじょうにいい感じで、ヴォーカルが鳴りはじめた。
センター定位も、かなり気持ちよく、ぴたっと安定している。
もうひと息だな、とその時、思った。

このときの音は、これはこれで満足度の高い音だったが、直感的にもう少し詰められる、と感じたからだ。

さきほどよりも、さらにほんの少しだけレベルコントロールを触った。
椅子に坐り、音を聴く。先ほどの音が良かった。

ひとつ前の状態に戻した。もどしたつもりだったが、
鳴ってきた音は、もどっていない。さっきの音が鳴ってこない。

もう一度4344のところに行き、いじる。
けれども、レベルコントロールに使われている巻き線による連続可変型のためなのか、
同じ位置にしても(したつもりでも)、けっして同じ音にはならない、そんな気がしてくるほど、
不安定要素(不安要素といってもいいだろう)がある。
ステレオサウンドの50号前半の数号にわたって、JBL 4343研究という記事が連載されていた。
詳細は憶えていないが、JBLのスタッフふたりによる4343の鳴らし込みといった内容の回もあった。

彼らが聴感でレベルコントロールを調整した結果(写真)が載っていたが、
左右でレベルコントロールの位置は、多く違っていた。

部屋の影響ももちろんあっての結果であるし、
4343に搭載されているユニットに、多少の音圧上のバラツキもあるのだろう。
それにレベルコントロールに採用されている巻き線式のアッテネーターの精度も、個人的には疑いたい。
意外にも、ここのバラツキが大きかったのかもしれない。

どこにいちばんの原因があるのかは置いておくとして、
少なくとも完成品としての4343は、一台一台すべての周波数特性が、
ある範囲内にぴったり収まっているわけではない。

4343のミッドバス、ミッドハイ、トゥイーターのレベルコントロールは飾りではない。
積極的に、それぞれのユニットのレベルを揃えるために必要不可欠なものだから、ついている。

彼らの調整が終った後、編集部による、
当時話題になっていたポータブル型のスペクトラムアナライザーのIvieの結果は、
左右の4343のレベルが見事に揃っていることを示していた。

BBCモニターに、4343のような連続可変のレベルコントロールがついている機種はない。
工場出荷時には、左右のペアの特性が揃えられていることも、関係していよう。
JBLの4343のウーファー2231A(フェライトモデルは2231H)は、マスコントロールリング
を採用している。

コーン紙とボイスコイルボビンとの接合部に金属製のリング(アルミ製)を装着することで、
比較的軽いコーン紙を使いながらも、振動板のトータル質量を増すことで、f0を拡張している。

マスコントロールリングなしで、コーン紙を厚くして同等の質量とすると、中低域のレスポンスが低下する。
質量の増加を、ボイスコイル付近に集中させているのが、この方式の特徴である。

というものの、やはり振動系の質量は100gをゆうにこえていたと記憶している。
38cm口径のコーン型スピーカーとしても、その質量は重量級といえる。

これを強力な磁気回路で駆動すれば、能率はそこそこ高くなる。

ロジャースPM510の軽量級のポリプロピレンのコーン紙とほどほどの磁気回路でも、
2231Aとほぼ同じ能率を実現している。

理屈の上では、能率が同じであれば、初動感度は等しい。
だが感覚的には同じとは認識しないのではないだろうか。

低能率のスピーカーをハイパワーアンプで鳴らせば、高能率とスピーカーと同等の音圧を得られる。
だからといって、高能率なスピーカーに共通する特質を、そこに聴くことはできない。

数値上でつじつまは合っていても、感覚的なつじつまはどうなのだろう。
トリオ(現ケンウッド)の会長だった中野英男氏の著書「音楽、オーディオ、人びと」の中に、
「秘蔵のBBC放送局専用のTSD15」なる言葉が出てくる。

このTSD15は「英国でしか手に入らず、佳き往時の香りを今に伝える名品として
識者の間で珍重されているカートリッジ」で、
「河村電気を経て我が国にもたらされるEMTは『今様に』改良された製品で、
F特と解像力には勝れるが、気品と底力では遠くこのモデルに及ばない」と書かれている。

ステレオサウンドにはいって、このことをきいてみた。BBC専用のTSD15のことを知っているひとは、いない。
先輩のTNさん(彼は瀬川先生から譲ってもらった927Dstを使っていた)と、この話で盛り上がったこともあった。

旧型シェルのTSD15のことかと思ったが、違うようにも思える。

サウンドボーイ編集長だったOさんも、プレーヤーは927Dstだ。
彼は、ウェスタン・エレクトリック、シーメンス、EMTなどについて詳しい。
そのOさんも、はじめて聞く話とのこと。
現会長の原田氏も、このころは927Dstだった。

結局、真相はわからずじまい。
4343とLS5/8、同じモニタースピーカーといっても、
使われ方、求められる性能の項目が違うことがあらためてわかる。

JBLのスタジオモニターは、性能ぎりぎりのところで使いつづけても破綻をきたさないよう設計されている。

BBCモニターはモニタースピーカーといっても、大音量で使われることはまずないと聞く。
1970年代にはQUADのESLが、ヨーロッパのレーベル(たしかデッカ)のスタジオモニターとして使われていた。
旧型の ESLがスタジオモニターと通用するくらい、イギリスを含めてヨーロッパのスタジオの試聴音量は、
かなり低いということを書かれた文章を何度か目にしている。

たとえば磁気回路を見ても、BBCモニターはそれほど物量投入の設計ではない。

スピーカーユニットを開発・設計する機会のないわれわれは、
スピーカーの磁気回路の磁束密度は高いほどいいと思いがちだが、
メーカーの技術者に話をきくと、必ずしもそうではなく、
振動板の口径や重さなどとの絡みもあるが、聴いて音の良いポイントがある、といっている。
具体的な数値は教えてくれなかったが、10000ガウスよりも低いところで、ひとついいポイントがあるとのこと。

たしかにKEFのLS5/1A搭載のグッドマンのウーファーの磁束密度は、9000ガウスだ。

たまたまなのかもしれないし、他のBBCモニターの使用ユニットの磁束密度は不明だが、
ユニットそのもののつくりを見る限りそれほど高い値とは思えない。

LS5/8、PM510のウーファーの振動板ポリプロピレンも、スピーカーの振動板に求められる性能──
高剛性、適度な内部損失、内部音速の速さ、軽さの点から見ると、
お世辞にも高剛性といえないし、内部音速がそれほど速い素材でもない。
満たしているのは、適度な内部損失と軽さだけだろう。

もっもとすべての諸条件をすべて高い次元で満たしている素材はないので、
どの項目を優先するかは技術者次第なのだろう。

BBCモニターの設計、つくり方を見て思うのは、ぎりぎりの性能を実現することよりも、
バラツキのないものをつくることを優先しているように思う。

ウーファーの振動板を紙からベクストレン、そしてポリプロピレンに変更していったのも、
性能向上とともに、バラツキのないものをつくれるメリットがあることも大きい。

BBCモニターを、どれでも実際に購入したことのある人ならば、
リアバッフルにシリアルナンバーが手書きで書いてあり、
同じシリアルナンバーで末尾にAがつくものと、Bがつくものとがペアになっているか、
シリアルナンバーが連番になっていることをご存じのはずだ。

4343時代のJBLは、同じ製造ロットのものが入荷してくるのだが、
シリアルナンバーが連番ということはまずなかった。
4341、4343のユニットレイアウトもそうだが、左右対称にはなっていない。
4343はトゥイーターの2405を購入者がつけ換えれば左右対称になるけれど、出荷時点ではそうなっていない。

BBCモニターのライセンスは、要請があれば、公共機関ということもあり、原則として与えるそうだが、
その審査はひじょうに厳しいものらしい。
BBCの仕様に基づいてつくられた製品に対して、サンプルは勿論、
量産品のクォリティコントロールまでチェックした上で与えられるそうだ。

これは言い換えると、ステレオ用スピーカーとして、
左右両スピーカーの性能が揃っていることを重視している、そう言っていいだろう。
スピーカーの面構えやユニット構成、それまでのブランドイメージからから判断すると、
ロジャースのPM510よりもJBLの4343のほうが出力音圧レベルは高いように思われるだろうが、
先に書いたようにカタログ上の値では、PM510のほうが0.5dB高い。

スペンドールのBCIIの値は発表されていないが、聴いた感じでは80数dBぐらいだろう。
KEFの105.2が、たしか85dBだった。

LS5/8、PM510以前のBBCモニターのウーファーの振動板の材質はベクストレンで、
この材質の固有の音が、1.5kHzから2kHzで発生するため、
ダンピングのためのプラスティフレックスを塗布しなければならない。
そのせいで振動板質量が重くなり、能率の低下につながっていた。

PM510のウーファー振動板の材質、ポリプロピレンは表面にダンプ材を塗布する必要がない。
このためばかりではないと思うが、能率があきらかに向上している。
ただしエッジとの接着がひじょうにむずかしく、この部分も特許になっているらしい。

LS5/8の最大出力音圧レベルは、1160dBである。JBLの4345が120dBということを考えると、
イギリスのスピーカーとしては、かなり驚異的な値といえるだろう。
ちなみにLS3/5Aは95dB/1.5mである。

ただしJBLのスピーカーが、長い時間でも、最大出力音圧レベルぎりぎりの音を出せるのに対して、
LS5/8はそれほど長い時間耐えられるわけではない。

ボイスコイルの発熱をどう逃がすか、そしてコーンアッセンブリー全体が熱にどのまで耐えられるかも、
どこまで耐えられるかの重要な要素である。

スイングジャーナル編集部に在籍したことのある友人Kさんから聞いた話だが、
山中先生が取材でLS5/8を鳴らされたとき、いい感じで鳴ったので、
ついついボリュームをあげて聴いていたら、ボイスコイルの熱によってポリプロピレンが融けてしまったそうだ。

こんなことは、JBLのスピーカーでは絶対に起こり得ない。
4343で感じられなかった音の粗さが、なぜPM510では感じとれたのか。

スピーカーには初動感度というのがある。基本的には能率が同じならば初動感度も同じと考えていい。
ただし聴感上の初動感度は必ずしも、音圧レベルと一致するとは言えない面も持つ。

たとえば重たい振動板を強力な磁気回路を用意して動かすのと、
軽い振動板をほどほどの磁気回路で動かすとして、出力音圧レベル(能率)が同じなら、
初動感度は同じということになる。

だが実際に聴いた印象では、軽い振動板の方が、敏捷だと感じることがある。

4343とPM510の使用ユニットに投じられている物量は、4343のほうがあきらかに上である。
フレームも磁気回路もしっかりとつくってある。
オーディオマニア心をくすぐるのは、4343である。

イギリスは、4343のようなスピーカーを、この時代はつくらなくなっていた。
それ以前はタンノイのオートグラフ、ヴァイタヴォックスのCN191など、
JBLのパラゴン、ハーツフィールド、エレクトロボイスのパトリシアン・シリーズと並ぶ
大型で本格的なつくりのスピーカーがつくられていたが、
いつのまにか家庭用スピーカーとしての範囲をこえないものになっていった。

いかにもイギリス的といえるが、やはりオーディオマニアとってはさびしい面もある。
PM510もLS5/8も、そういう意味では、コストを惜しまず技術の粋を集めて、
やれるところまでやってつくられたというスピーカーではない。

けれど......、と私は思う。
こんなことがあった。

ステレオサウンドに入ったばかりの頃、試聴室となりの倉庫に、ちょうどロジャースのPM510があった。
もちろん、さっそく聴いてみた。
まず試聴室のリファレンススピーカーの4343を聴いた後、PM510に変えた。
アンプ、プレーヤーはそのままである。

出てきた音に、すくなからず驚いた。音が粗い。
なぜ、こんな音がするのか、不思議なほど、特に微小域の音が粗かった。

アンプを、マイケルソン&オースチンのTVA1に変えてみた。
嘘のように、粗さは消えている。
もういちどアンプを戻すと、やはり粗い。

もしかしてACの極性が反対かと思い、反転させてみても音の粗さは変わらず。
当時、世評の高いセパレートアンプの組合せである。
4343にもう一度つなげて聴くと、粗さは感じられない。

カタログ上の音圧レベルは、PM510は94dB、4343は93dB。
ほとんど同じだから、アンプの出力もほぼ同じ領域で使っていたわけだ。
にもかかわらず、4343では聴きとれなかった、というか気にならなかった音の粗さが、
PM510では耳について、気になって仕方がなかった。
ロジャースのLS3/5AとセレッションのSL6、どちらもイギリスで誕生した、いわゆる小型スピーカーだが、
LS3/5Aが可搬型モニタースピーカーとして、サイズ自体の設定から開発が始まったのに対し、
SL6は、技術者が求める性能を満たすために必要な仕様として、逆にサイズが割り出されたものであること、
最初から小型スピーカーとして開発が始まったわけではない、という点が、
開発年代の違いとともに、2つを比較すると浮び上がってくる。

セレッションはSL6の開発にあたり、従来の開発手法を用いるのではなく、
技術部長のグラハム・バンクが数年前から取り組んでいたレーザー光線とコンピューターによる
スピーカーの振動モードの動的な解析技術を導入している。

この解析法で、スピーカーユニットの振動板の形状から素材まで徹底して調べ研究することで、
ユニットの口径・構造、システム全体の構成、エンクロージュアの寸法まで決定されている。
SL6は小型スピーカーをつくろうとして生れたきたものではなく、
セレッションが、当時の、持てる技術力で最高のスピーカーをつくろうとした結果のサイズである。
1978年ごろに、テクニクスからコンサイスコンポが登場したとき、
黒田先生がステレオサウンドに、LS3/5Aを組み合わせて楽しまれている記事を書かれている。

キャスター付きのサイドテーブルの上に、LS3/5Aとコンサイスコンポ一式と、
たしか同時期に出ていたLPジャケットサイズのアナログプレーヤーSL10もふくめて
置かれていた写真を、こんなふうに音楽が楽しめたらいいなぁ、と思いながら眺めていた。

コンサイスコンポは、A4サイズのコントロールアンプ、パワーアンプとチューナーがあり、
どれも厚みは5cmくらいだったはず。
パワーアンプはスイッチング電源を採用することで薄さを可能にしていた。

手元にその号がないのでうろ覚えの記憶で書くしかないが、
黒田先生は、気分や音楽のジャンルに応じて、サイドテーブルを近づけたり遠ざけたり、と
メインシステムでは絶対にできない音楽の聴き方をされていた。

コンサイスコンポ・シリーズのスピーカーも発売されていたが、
黒田先生はLS3/5Aと組み合わされていたのが、この、音楽を聴くスタイルにまたフィットしているし、
省スペース・小型スピーカーだからこそ、活きるスタイルだと思う。

セレッションのSL6の登場以降、小型スピーカーの在りかたは大きく変化していったいま、
LS3/5Aに代わるスピーカーがあるだろうか。
左右のスピーカーと自分の関係が正三角形を形造る、いわゆるステレオのスピーカーセッティングを正しく守らないと、このスピーカーの鳴らす世界の価値は半減するかもしれない。そうして聴くと、眼前に広々としたステレオの空間が現出し、その中で楽器や歌手の位置が薄気味悪いほどシャープに定位する。いくらか線は細いが、音の響きの美しさは格別だ。耐入力はそれほど強い方ではない。なるべく良いアンプで鳴らしたい。
     ※
ステレオサウンド 43号に、瀬川先生はLS3/5Aについて、こう書かれていた。

一辺が1m未満の正三角形のセッティングで聴くLS3/5Aの音は、まさにこのままで、
ミニチュアの音像が見えるかのように定位する箱庭的世界は、他のスピーカーでは味わえない。

ただしウーファーのフラつきは絶対に避けるべきで、その意味ではCDになり、
より安定した音が容易に得られるだろう。

井上先生はQUADのパワーアンプ405との組合せを推奨されていた。
405は、あまり知られていないが巧みな低域のコントロールを行なっている。
小出力時はそのままだが、ある程度の出力になると、低域を適度にカットオフしている。
だからこそ、当時の技術で、あのサイズで、100W+100Wの出力を安定して実現できていた面もある。

この性能こそ、LS3/5A向きと言えよう。

私が聴いたなかで、強烈だったのが、GASのThaedra(ティアドラ)で鳴らした音だ。
ティアドラはコントロールアンプだが、ラインアンプの出力は、
8Ω負荷で約数W(うろ覚えだが3Wだったはず)をもつ。しかもA級動作で、だ。
スピーカー端子はないから、RCAプラグにスピーカーケーブルをハンダ付けして聴くことになる。

そこそこの音で鳴るかな、という期待は持っていたが、それを大きく上回る、
新鮮で、楽器固有の艶やかな音色を、過不足なく描写する。
LS3/5Aの線の細さが薄れるのは、人によって魅力がなくなったと感じるかもしれないが、
それ以上の瑞々しさに聴き惚れてしまう。気になるボケが感じられない。

ティアドラのラインアンプの出力は、トランジスターのエミッターからではなく、
コレクターからとり出している。このことも効いているのかもしれない。
LS3/5Aに搭載されているウーファーのKEFのB110は、
1970年代、ステレオサウンドから出ていたハイファイステレオガイドをみると、
スコーカーのページに掲載されていた。
ハイファイステレオガイドは、編集部での校正だけでなく、
国内メーカーや輸入商社に取扱い製品のチェックも依頼しているので、
校正ミスでスコーカーに分類されているわけではない。

スコーカーだが、小口径ウーファーとしてなんとか使えそうな特性も持っているユニットと捉えた方が、
LS3/5Aを理解するうえではいいかもしれない。

アナログディスクがプログラムソースの主役だったころからLS3/5Aを鳴らされている人なら、
LS3/5Aは近距離で聴いてこそ魅力を発揮するスピーカーだと感じとられていると思う。

CDが登場して、サブソニックの発生がなくなったこと、
それにLS3/5Aのネットワークが新型(11Ω)になったことも関係しているのか、
以前にくらべると、ある程度パワーを入れても不安さを感じさせなくなった。

そのためかだろうか、いまどきの小型スピーカーと同じように、
左右、後ろの壁から十分に距離をとり、聴取位置もそれほど近くない設置で聴いて、
短絡的に評価をくだし、ネット(掲示板や自身のサイト)に書いてあるのを読んだことがある。

LS3/5Aが、箱庭的な描写力で聴き手を魅了するのは、
手を伸ばせばLS3/5Aに届くぐらいの近い位置、1m以内の近接位置で聴いてこそ、である。
ほとんどヘッドフォン的な聴き方に近い。
省スペースの意味を含めた小型スピーカーとして、私にとって印象ぶかいのは、
ロジャースのLS3/5Aである。

ご存じのようにLS3/5Aは、BBCのライセンスを受ければ、ロジャース以外のメーカーでも製造できる。
スペンドール、KEF、ハーベス、チャートウェルから出ているが、
最初に聴いたLS3/5Aはロジャース製であり、所有していたのも15Ωタイプのロジャース製であるため、
私にとって、LS3/5Aといえば、ロジャースのそれである。

つい最近ロジャースから復刻版のLS3/5aが出た。なぜだが、型番末尾が、
Aではなく小文字のaに変更されている。
もっともオリジナルのLS3/5Aの表記も、ネットではLS3/5aと表記している例が多いが、
所有されている方ならば、リアバッフルの銘版には、LS3/5Aと記してあるのをみてほしい。

こういう表記のいいかげんなところは、ネットの拡大とともに目につくようになった。
LS3/5Aと同じBBCモニターのLS5/1には、Aがつくのとつかないのがある。
LS5/1が当然オリジナルモデルで、当時、LSナンバーはライセンスされていなかったため、
どこそこのメーカー製ということはない。
日本で知られている、そして瀬川先生の愛機だったのは、改良モデルのLS5/1Aであり、
このモデルからKEFで生産されるようになった。

LS5/1とLS5/1Aの違いは、まずウーファーがプレッシャー製からグッドマンのCB129Bに変更され、
エンクロージュアの内部構造も手を加えられているし、
吸音材の材質、入れ方ともに変更されている。また専用アンプも、メーカーが異る。

KEFではその後、専用アンプをハリソン製のトランジスターアンプに変え、
ネットワークをやめバイアンプ駆動しに、
低域のローブーストとともにレンジ拡大をはかった5/1ACを出している。これにはLSはつかない。

LS5/1(A)は、2基搭載しているトゥイーター(セレッションのHF1300)のうち1基は、
3kHz以上での干渉をおさえるためにロールオフさせている関係で、
高域補正した専用アンプか、それ以外のパワーアンプを使用するならば、
正確な高域補正をして聴くのが当然だ。
BBCモニター系列の音には、つよく惹かれるものがある。 

瀬川先生は、BBCモニターの音を、
コンフォータブルサウンド(快適な、心地よい音)と言われていた。
同じモニタースピーカーでも、ある種の厳しさをもつJBLの4300シリーズとは異る。

スペンドールのBCII、ロジャースのLS3/5AやLS5/8(できればチャートウェルのPM450)、
もしくはPM510、ハーベスのモニターHLなどは、
程度のいいモノがあれば、 いまでもなんとか手に入れたい気持ちが、どこかにある。 

LS3/5AとPM510、それからLS5/1(Aがつかない初期のモデル)は、使っていた時期もある。 

もちろん、過去のスピーカーではなく、現行製品のなかから選べればいいのだが、
ロジャースもスペンドールも昔の面影はそうとう薄れてしまったし、
ハーベスも、告白すれば、創立者のハーウッドがリタイアし
アラン・ショウの時代になってからの一連のスピーカーには、まったく魅力を感じなかった。 

だから、もう良質のBBCモニターの音は、聴けない、とここ10年ほど思っていたところに、
ハーベスのHL Compact 7ES-3が登場した。 

ハーベスには魅力を感じない、という先入観たっぷりの耳にも、
HL Compact 7ES-3の音は素晴らしく魅力的だった。
すこし大げさに表現すれば、やっと21世紀のBBCモニターの音が聴けた、と感じた。

調べてみると、いまBBCモニターと呼べるのは、ハーベスのスピーカーであり、
2003年1月からスペンドールのデレク・ヒューズ(創立者スペンサー・ヒューズの息子)が、
ハーベスに参画しているし、昔のBBCモニターの開発に携わっていたスタッフも協力している。
勝手にワクワクしている(笑)。 

デレク・ヒューズは、スペンドール時代に、プリメインアンプのD40を設計している。
D40は、ボリューム、セレクターとバランサーの3つのツマミだけというそっけない顔つき、
サイズも小型で、スペンドール・ブランドでなければ、まったく期待しないつくりだが、
BCIIと組み合せたときの音は、見事。BCIIの中域の弱さをおぎなって、しかも品位を失わない。
デレク・ヒューズがふたたびアンプを設計してくれないかと願っている。 
もちろんHL Compact 7ES-3専用の、小型で粋なプリメインアンプを。

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