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キングダムのユニット構成は、同軸型ユニットを中心として、低域にサブウーファーを、
高域にスーパートゥイーターを追加した4ウェイである。

ここまで書けば、察しのいい方ならば気がつかれるだろうが、
タンノイのスピーカーづくりのありかたとして、同軸型ユニットだけでシステムを構築する場合には、
従来からのウーファーとトゥイーターのマグネットを兼用させたものが、
そしてレンジ拡大のためにウーファーやトゥイーターが追加されるときには、
マグネットが独立したタイプが使われる。

このことから推測されるのは、重視する要素が、システム構成によって違いがあるということだ。

それぞれの同軸型ユニットが重視している要素は、調和か明晰か、ではなかろうか。
このことは、エンクロージュアの構造、つくりの違いにも顕れている。
タンノイの同軸型ユニットは、必ずしもマグネットがひとつだけ、とは限らない。
1977年ごろ登場したバッキンガム、ウィンザー、このふたつのシステムに搭載されているユニット2508は、
フェライトマグネットを、高音域、低音域用とにわかれている。
バッキンガムも、ウィンザーも、ウーファーユニットを追加したモデルだ。

このときのタンノイの主力スピーカーシステムは、アーデン、バークレイなどの、いわゆるABCシリーズで、
使用ユニットはアルニコマグネットのHPDシリーズ。いうまでもなくマグネットはひとつだけ。

さらに同時期登場したメイフェアー、チェスター、ドーセット、アスコットには、2528DUALが使われている。
このユニットもフェライトマグネットだが、低音、高音で兼用している。
HPDシリーズはのちにフェライトマグネット使用のKシリーズに換っていくが、
Kシリーズも、マグネットひとつだけ、である。

2508のマグネットがふたつあるのはフェライトマグネットだからではないことが、このことからわかるだろう。

1996年、キングダムが登場する。
このキングダムに搭載されている同軸型ユニットも、またマグネットを2組持っている。
振動板の駆動源といえるマグネットが兼用されているため、
節倹の精神によってタンノイはつくられている、ともいえるし、
口の悪いひとならば、ケチくさいつくり、とか、しみったれたつくり、というかもしれない。

けれどオートグラフという、あれだけ意を尽くし贅を尽くしたスピーカーシステムをつくりあげたタンノイが、
その音源となるユニットに、節倹の精神だけで、ウーファーのコーン紙のカーブを、
トゥイーターのホーンの延長として利用したり、マグネットをひとつにしたとは、私は思っていない。

ボイスコイルがひとつだけの純粋のフルレンジユニットでは、ワイドレンジ再生は不可能。
かといって安易に2ウェイにしてしまうと、タンノイが追い求めていた、
家庭での音楽鑑賞にもっとも大切と思われるものが希薄になってしまう。
そのデメリットをおさえるために、できるかぎりの知恵を出し、
コーン型のウーファーとホーン型のトゥイーターを融合させてようとした結果が、
タンノイ独自のデュアルコンセントリックといっていいだろう。

これは、外観からも伺えないだろうか。
アルテックの604の外観が、同軸型2ウェイであることを顕示しているのに対し、
タンノイのデュアルコンセントリックは、何も知らずにみれば、大口径のフルレンジに見えないこともない。
アルテック、タンノイといった古典的な同軸型ユニットで、
ウーファー部の磁気回路とホーン型トゥイーター(もしくはスコーカー)の磁気回路が完全に独立しているのは、
長島先生が愛用されてきたジェンセンのG610シリーズがそうである。

完全独立、ときくと、マニアとしてはうれしいことではあるが、
ふたつ以上のマグネットが近距離にあれば干渉しあう。

干渉を防ぐには、距離を離すことが手っとり早い解決法だが、同軸型ユニットではそうもいかない。
ならばひとつのマグネットでウーファー用とトゥイーター用を兼ねよう、という発想が、
タンノイのデュアルコンセントリックの開発に当たっては、あったのかもしれない。

もっともマグネットは直流磁界で、ボイスコイルが発する交流磁界の変化によって、
磁束密度が影響を受ける、それに2次高調波歪がおこることは、
いくつかのスピーカーメーカーの解析によってはっきりとした事実であるから、
ひとつのマグネット(ひとつの直流磁界)に、ふたつの交流磁界が干渉するタンノイのデュアルコンセントリックでは、
音楽信号再生時に、どういう状態になっているのかは、専門家の話をうかがいたいと思っている。
Uni-Qをもってして、同軸型ユニットは完成した、とはいわないが、
Uni-Qからみると、ホーン型トゥイーターのアルテックやタンノイの同軸型は、あきらかに旧型といえるだろう。

ただ、オーディオマニア的、といおうか、モノマニア的には、
アルテックやタンノイのほうに、魅力を強く感じる面があることは否定できない。
Uni-Qの優秀性は素直に認めても、個人的に応援したくなるのは、アルテックだったり、タンノイだったりする。

空想してもしかたのないことではあるが、もしJBLがUni-Qを開発していたら、
モノとしての魅力は、マニア心をくすぐるモノとして仕上っていただろう。

Uni-Qは、あたりまえのことだけど、あくまでもイギリス的に仕上りすぎている。
そこが魅力でもあるのは重々承知した上で、やはりもの足りなさも感じる。

すこし話はそれるが、アルテックとタンノイの同軸型ユニットを比較するときに、磁気回路の話がある。
タンノイはウーファーとトゥイーターでひとつのマグネットを兼用している、
アルテックはそれぞれ独立している、と。

たしかに604や605などのアルテックの同軸型ユニットにおいて、
ウーファーとトゥイーターのマグネットは独立している。
が、磁気回路が完全に独立しているかという、そうではない。

604の構造図をみればすぐにわかることだが、ウーファー磁気回路のバックプレートと、
トゥイーターのバックプレートは兼用していることに気がつくはずだ。
ウーファーとトゥイーターの中心軸を揃えた同軸型ユニットは、
その構造ゆえの欠点も生じても、マルチウェイスピーカーの構成法としては、
ひとつの理想にちかいものを実現している。

同軸型ユニットは、単体のウーファーやトゥイーターなどにくらべ、
構造はどうしても複雑になるし、制約も生じてくる。
それでも、各スピーカーメーカーのいくつかが、いまも同軸型ユニットを、新たな技術で開発しているのをみても、
スピーカーの開発者にとって、魅力的な存在なのかもしれない。

KEFは1980年代の終りに、Uni-Qという同軸型ユニットを発表した。

それまで市場に現れた同軸型ユニットとあきらかに異り、優位と考えられる点は、
ウーファーとトゥイーターのボイスコイルの位置を揃えたことにある。

アルテックの604シリーズ、タンノイのデュアルコンセントリック・ユニットが、
トゥイーターにホーン型を採用したため、ウーファーとトゥイーターの音源の位置のズレは避けられない。

パイオニアのS-F1は、世界初の平面振動板の同軸型、しかも4ウェイと、規模も世界最大だったが、
記憶に間違いがなければ、ウーファー、ミッドバス、ミッドハイ、
トゥイーターのボイスコイルの位置は、同一線上にはなかったはずだ。

ユニットの構造として、Uni-Qは、他の同軸型ユニットを超えているし、
同軸型ユニットを、スピーカーユニットの理想の形として、さらに一歩進めたものともいえる。
ステレオサウンド 47号の測定結果で比較したいのは、アルテック620AとUREI・813であることはいうまでもない。

813のネットワークの効果がはっきりと出ているのは、
インパルスレスポンス、群遅延特性、エネルギータイムレスポンスにおいてである。

620Aのエネルギータイムレスポンスは、まず-40dB程度のゆるやかな山があらわれたあとに、
高く鋭く、レベルの高い山が続く。

最初の山がウーファーからのエネルギーの到達を示し、それに続く山がトゥイーターからのものである。

813はどうかというと、ゆるやかなウーファーの山の中ほどに、トゥイーターからの鋭い山が入りこんでいる。
ふたつの山の中心が、ほぼ重なり合っている形になっている。

620Aでのウーファーの山のはじまりと、813でのはじまりを比較すると、
813のほうがあきらかに遅れて放射されていることがわかる。

インパルスレスポンスの波形をみても、このことは読み取れる。

620Aでは、やはりゆるやかな低い山がまずあらわれたあとに鋭い、レベルの高い山が続く。
813では、ゆるやかな山の始まりが遅れることで、鋭い山とほぼ重なり合う。

群遅延特性も、同じアルテックの604-8Gを使用しているのに、813はかなり優秀な特性となっている。
UREIの813のネットワーク(TIME ALIGN NETWORK)は、回路図から判断するに、
ウーファー部のハイカットフィルターは、8次のベッセル型である。

ベッセル型フィルターの通過帯域内の群遅延特性はフラットであると前に書いているが、
そううまくウーファーの音だけに遅延がかかって、トゥイーターからの音と時間的な整合がとれているのか、
と疑われる方もおられるだろう。
メーカーの言い分だけでは信じられない、コイルとコンデンサーだけのネットワークで、
タイムアライメントをとることが、ほんとうに可能なのか、と疑問を持たれても不思議ではない。

ステレオサウンドの46号の特集記事はモニタースピーカーだった。
その次の47号で、46号で登場したモニタースピーカーを、三菱電機郡山製作所にての測定結果が載っている。

アルテックの620A、JBLの4343、4333A、ダイヤトーンのMonitor1、キャバスのブリガンタン、
K+Hの092、OL10、ヤマハのNS1000M、そしてUREIの813の、
無響室と2π空間での周波数特性、ウーファー、バスレフポート、パッシヴラジエーターに対する近接周波数特性、
超高域周波数特性、高次高調波歪特性、混変調歪特性と混変調歪差周波掃引、
インパルスレスポンス、群遅延特性、エネルギータイムレスポンス、累積スペクトラム、
裏板振動特性、デジタル計測による混変調歪が載っている。
川崎先生は「プレゼンテーションの極意」のなかで、特徴と特長について語られている。
     *
「特徴」とは、物事を決定づけている特色ある徴のこと。
「特長」とは、その物事からこそ特別な長所となっている特徴。
     *
ベッセル型フィルターの「特徴」が、同軸型ユニットと組み合わせることで「特長」となる。
UREIの813のネットワークに使われているのは、ベッセル型フィルターである。
おそらくESL63のディレイ回路も、ベッセル型フィルターのはずだ。

ベッセル型フィルターの、他のフィルターにはない特徴として、
通過帯域の群遅延(Group Delay)がフラットということがあげられる。

つまりベッセル型のハイカットフィルターをウーファーのネットワークに使えば、
フィルターの次数に応じてディレイ時間を設定できる。

604シリーズのウーファーのハイカットを、ベッセル型フィルターで適切に行なえば、
トゥイーターとの時間差を補正できることになり、
これを実際の製品としてまとめ上げたのが、UREIの813や811といったスピーカーシステムと、
604E、604-8G用に用意されたホーンとネットワークである。

ホーンの型番は800H、ネットワークの型番は、604E用が824、604-8G用が828、
さらに813同様サブウーファーを追加して3ウェイで使用するためのネットワークも用意されており、
604E用が834、604-8G用が838であり、TIME ALIGN NETWORKとUREIでは呼んでいる。
ステレオサウンド 61号の記事には、ESL63の回路図が載っている。
たしか長島先生がによるものだったと記憶している。

8個の同心円状の固定電極に対して、直列に複数のコイルが使われている。
同心円状の固定電極は、外周にいくにしたがって、通過するコイルの数がふえていくようになっていた(はず)。

やはり、コイルの直列接続によって、時間軸の遅れをつくり出しているのはわかっても、
動作原理まではわからなかったし、どういうふうに定数を決定するのかも、とうぜんわからなかった。

ESL63やUREIの813に使われている回路技術はおそらくおなじものだろうと推測はできても、
具体的なことまで推測できるようになるには、もうすこし時間が必要だった。

ESL63の翌年にCDプレーヤーが登場する。
そしてD/Aコンバーターのあとに設けられているアナログフィルターについての技術的なことを、
少しずつではあるが、知ることとなる。

フィルターには、いくつかの種類がある。
チェビシェフ型、バターワース型、ベッセル型などである。
レイモンド・クックもエド・メイも具体的な方法については何も語っていない。

ふたりのインタビューが載っているのは、
1977年発行のステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界'78」で、
当時出版されていたいくつかの技術書を読んでも、
ネットワークでの時間軸の補正については、まったく記述されてなかった。

だから、どうやるのかは皆目検討がつかなかった。
ただそれでも、ぼんやりとではあるが、コイルを多用するであろうことは想像できた。

同時期、アルテックの604-8Gをベースに、マルチセルラホーンを独自の、水色のホーンに換え、
604-8Gのウーファーとトゥイーターの時間差を補正する特殊なネットワークを採用したUREIの813が登場した。

813についても、ステレオサウンドに詳しい技術解説はなかった。

可能だとわかっていても、そのやり方がわからない。

少し具体的なことがわかったのは、ステレオサウンドの61号のQUAD・ESL63の記事においてである。
長島先生が書かれていた。
ゆくゆくは604-8Gをマルチアンプ駆動で、チャンネルデバイダーはデジタル信号処理のものにして、
時間軸の整合をとった同軸型ユニットの音を鳴らしてみたい、とは思っている。

それでも最初はネットワークで、どこまでやれるかに挑んでみたい。

ネットワークの場合、時間軸の整合はとれないと考えているひとが少ないようだ。
コイルとコンデンサーといった受動素子で構成されているネットワークで、
604-8Gの場合、ウーファーへの信号を遅らせることは不可能のように捉えられがちだが、
けっしてそんなことはない。

たとえばQUADのESL63は、同心円状に配置した8つの固定電極のそれぞれに遅延回路を通すことにより、
時間差をかけることを実現している。

KEFのレイモンド・クックも、ネットワークでの補正は、高価になってしまうが可能だといっている。
またJBLに在籍した後、マランツにうつりスピーカーの設計を担当したエド・メイは、
マルチウェイスピーカーの場合、個々のユニットの前後位置をずらして位相をあわせるよりも、
ネットワークの補正で行なった方が、より正しいという考えを述べている。

ユニットをずらした場合、バッフル板に段がつくことで無用な反射が発生したり、
音響的なエアポケットができたりするため、であるとしている。
604EとN1500Aの組合せにおける、こまかな工夫にくらべると、
604-8Gと、そのネットワークの組合せは、ウーファーもトゥイーターも正相接続で、
スピーカーの教科書に載っているそのままで、おもしろみといった要素はない。

それだけN1500Aと604-8G用ネットワークの仕様は違うわけだ。
だから、管球王国 Vol.25にあるように、604-8GにN1500Aを組み合わせれば、
純正の組合せの音は、同じアルテックの604というスピーカーの中での範疇ではあるものの、
かなり傾向は異ってきて当然であろう。

優れたユニットであればあるほど、活かすも殺すもネットワークの次第のところがある。

604-8Gでシステムを構築するにあたって、ネットワークをどうするか。
604-8Gについているネットワークをそのまま使うつもりはない。

ひとつのリファレンスとして、純正ネットワークの音はいつでも聴けるようにはしておくが、
ネットワークに関しては、新たに作る予定でいる。

N1500Aと同じ回路のものを試しにつくってもいいが、私が参考にするのは UREIの813である。
つまり、604Eは、N1500Aを接いで鳴らすと、ウーファーは逆相接続になる。
プラスの信号が入力されると、コーン紙は前にではなく、後に動く。

もちろんウーファーを正相接続にして、トゥイーターの極性を反転させるという手もあるだろうし、
ウーファーもトゥイーターも正相接続もあるなかで、
アルテックは、ウーファーを逆相にするという手を選択している。

それに直列型のネットワークを採用する例では、ウーファーのプラス端子が、
そのまま入力端子のプラスとなることが多いはずだが、
この点でも、604EとN1500Aの組合せは異る。

スピーカーユニットを逆相にすると、音の表情は大きく変化する。
フルレンジユニットで試してみると、よくわかる。

これらのことをふまえてN1500Aの回路図を見ていると、アルテックの音づくりの一端がうかがえる。
604Eのネットワーク、N1500Aは、クロスオーバー周波数は1.5kHzで、
減衰特性はウーファーは6dB/oct.、トゥイーターは12dB/oct.。
604-8Gのネットワークとはスペックの上では減衰特性が異るわけだが、
もっとも大きな違いはスペックに、ではなく、回路構成にある。

いま市販されている大半のスピーカーのネットワークは、並列型であろう。
604-8Gのネットワークも並列型である。

パワーアンプから見た場合、ウーファーとトゥイーターに、それぞれネットワークの回路がはいったうえで、
並列接続されたかっこうになっている。だからこそ、バイワイアリングという接続方法も可能になる。

直列型は、文字通り、ユニットを直列接続した回路構成となっており、
ウーファーのマイナス端子とトゥイーターのプラス端子が接続される。
12dB/oct.の場合は、並列型と同じようにトゥイーターの極性を反転させることもある。

604Eと直列型のネットワークN1500Aの組合せもその例にもれず、
ウーファーとトゥイーターのマイナス端子同士が接続される。
一見、トゥイーターの極性を反転しているかのように思えるが、
N1500Aの入力端子のプラス側は、トゥイーターのプラス側に接がっている。
おそらく杉井氏は、604-8Gと604-8Hのネットワークを混同されていたのだろう。
勘違いの発言だったのだろう。

604-8Hはマンタレーホーンを採用している関係上、ある帯域での周波数補正が必要となる。
それに2ウェイにも関わらず、3ウェイ同様に中域のレベルコントロールも可能としたネットワークであるため、
構成は複雑になり、使用部品も増えている。

だから、杉井氏の発言は、604-8Hのネットワークのことだろう。
勘違いを批判したいわけではない。

この記事の問題は、その勘違いに誰も気がつかず、活字となって、事実であるかのように語られていることである。

この試聴記事に参加されている篠田氏は、エレクトリでアルテックの担当だった人だ。
アルテックについて、詳しいひとのはずだ。
604-8Gと604-8Hのネットワークについて、何も知らないというのはないはずだ。

本来なら、篠田氏は、杉井氏の勘違いを指摘する立場にあるべきだろうに、
むしろ「アルテックの〝あがき〟みたいなものがこの音に出ている」と、肯定ぎみの発言をされている。

首を傾げたくなる。

そして編集部は何をしていたんだろう。
誰も気がつかないというのは、専門誌の編集者としては失格ではないだろうか。
手もとに604-8Gがあるから、ネットワークの内部を見ることができる。
シャーシー内部には、鉄芯入りのコイルが2個、コンデンサーが3個、
あとはレベルコントロール用の巻線型のアッテネーターだけである。

12dB/oct.のハイカットフィルターには、コイルとコンデンサーがひとつずつ、
18dB/oct.のローカットには、コイルはひとつ、コンデンサーはふたついる。
ハイカット、ローカットあわせて2個のコイルと3個のコンデンサーは、最低でも必要である。

インピーダンス補正や周波数特性をいじるのであれば、さらにコンデンサーやコイルが必要になる。

604-8Gの専用ネットワークには、必要最小限の部品しか収められていない。
インピーダンス補正も周波数のイコライジングを行なう部品は、何ひとつない。

アルテックのサイトから、604-8Gのネットワークの回路図がダウンロードできる。
見れば一目瞭然である。どこにも杉井氏が指摘されるようなところは、ない。

杉井氏の「解析」とはどういうことなのだろうか。
604-8Gに関して、こんな記事が出ていたことがある。
管球王国 Vol.25において、604シリーズ6機種の試聴記事が載っている。

そこで、篠田寛一氏が、604-8Gに604EのネットワークN1500Aを使うと、
「604Eに限りなく近い音で鳴る」と発言されている。

これを受けて、杉井真人氏(どういう方なのかは知らない)が、
「8Gのネットワークを解析するとわかるのですが、かなりイコライジングしているんです。
音質補正回路みたいなものが入っていて、
ある帯域にピークやディップを持たせたりして独特の音作りをしています」と補足されている。

604-8Gのネットワークには型番はない。
クロスオーバー周波数は1.5kHzで、ウーファーのハイカットは12dB/oct.、
トゥイーターのローカットは18dB/oct. となっていて、レベルコントロールは連続可変で、ツマミはひとつ。

この専用ネットワークは、ほんとうに杉井氏の指摘のとおり、独特の音作りを行っているのだろうか。
同軸型ユニットを中心としたワイドレンジのスピーカーシステム構築を考えれば、
タンノイとアルテックの同軸型ユニットを、私と同世代、上の世代の方は、最初に思い浮かべるだろう。

タンノイにするかアルテックにするか......。
別に迷ってはいなかった。最初に手にしたほうを使おう、そういうつもりでいたからだ。

主体性のない、やや受け身のスピーカー選びだが、それでも、モノとも巡り合いがあるだろうから、
ひとつくらい、こんなふうにスピーカーを選ぶのもいいかもしれない。

タンノイには、五味先生の本でオーディオと出合っただけに、その想いは簡単には語れない。
アルテックは、ここに書いたことをきいて知っていただけに、
一度は、自分の手で鳴らしてみたいと、ここ数年想い続けてきた。

タンノイとアルテック、ふたつとも手に入れてシステムを組むというのは、いまは無理だ。

だから、最初に私のところに来てくれたほうを使おうと決めた。そしてアルテックが到着した。
JBLの4343について、これまで書いてきた。ワイドレンジについては、いまも書いている。
これらを書きながら考えていたのは、放射パターンを考慮したときの同軸型ユニットの優位性について、であり、
同軸型ユニットを中核としたスピーカーシステムの構想について、である。

アルテックの604シリーズ、タンノイのデュアルコンセントリック・シリーズ──、
両社の伝統的ユニットを使い、最低域と最高域を、ぞれぞれ別のユニットで補う。

すでに、実際の製品として、アルテックには6041があり、タンノイにはキングダム・シリーズがある。
にもかかわらず、自分で確認したいこと、試してみたいことが、いまもくすぶっている。
そのくすぶりが、書くことで次の段階へとうつろうとしている。

今日、604-8Gが届いた。
先に書いているが、Model 19と604-8Hから、アルテックは、システムは2ウェイ構成ながら、
多素子のネットワークによって3ウェイ的レベルコントロールを実現している。

BBCモニターのようにレベルコントロールはないものもあるが、この多素子のネットワークで、
スピーカーシステムのトータルの周波数特性をコントロールする(ヴォイシング)手法は、
イギリスのスピーカーが、以前から得意としているところである。
BBCモニターもそうだし、タンノイのスピーカーもかなり以前からそうである。

Model 19の、レベルコントロールをいじったときの周波数特性が発表されている。
中域のツマミを反時計回りにいっぱいにまわし、高域のツマミを時計回りにいっぱいにまわす、
この時の周波数特性は2kHzが約10dB近く下がる。その上の帯域は徐々にレベルが上がる。

瀬川先生が、6041、620Bのレベルコントロールをどのように調整されたかはわからないが、
かなり大胆にいじっておられたことは書かれていた。
上の周波数特性からもわかるように、おそらく中域をかなり絞り、高域はある程度あげることで、
瀬川先生が苦手だった中域の張りの抑えられるとともに、
BBCモニター的なヴォイシングに、自然とそういう音にもっていかれたのだろうか。

実は、604-8KS(604-8Hのフェライトモデル)がはいった612Cを、一本だけ所有している。
モノーラル専用なわけで、同じようにレベルコントロールをいじっている。

瀬川冬樹氏のこと(その9)」に書いたように、
瀬川先生は620Bに、アキュフェーズC240とマイケルソン&オースチンのTVA1を組み合わされている。
架空の話になってしまうが、瀬川先生がクレルのPAM2とKSA100のペアを聴かれていたら、
絶対アルテックの620Bか6041と組み合わされていたはずだ。
アルテックの6041のユニット構成は、604-8H同軸ユニットに、
サブウーファーとして416-8BSW(低f0の416-8B)に、トゥイーター6041STを組み合わせている。

瀬川先生も指摘されていたが、トゥイーターの質感に、やや残念なところがある。
詳しくは書かないが、6041STはアルテック純正のトゥイーターではなく、他社製のOEMである。

6041はその後、フェライト化された604-8KSと416-8CSWに変更された6041IIになるが、
JBLの4343が、4350をリファレンスとして、4341から確実な改良を施されて、
システムとしての完成度を高めているのから見ると、
6041はそのものが急拵えの感を拭えず、しかも地道な改良が施されたわけでもない。

同軸型ユニットにこだわりつづけているタンノイが、キングダムで高い完成度を実現したのを見ると、
もしアルテックが6041に本腰をいれていたら......、と思わずにいられない。
アルテック、はじめてのワイドレンジ設計のModel19について、瀬川先生はこう書かれている。
     ※
604Eをオリジナルの612Aエンクロージュアごと(あの銀色のメタリックのハンマートーン塗装は素敵だ)入手して聴いていたこともあるが、私にはアルテックの決して広いとはいえない周波数レンジや、独特の張りのある音質などが、どうも体質的に合わなかったと思う。私の昔からのワイドレンジ指向と、どちらかといえばスリムでクールな音の好きな体質が、アルテックのファットでウォームなナロウレンジを次第に嫌うようになってしまった。
しかし最近、モデル19を相当長時間聴く機会があって、周波数レンジが私としてもどうやら許容できる範囲まで広がってきたことを感じたが、それよりも、久々に聴く音の中に、暖かさに充ちた聴き手にやすらぎをおぼえさせる優しさを聴きとって、あ、俺の音にはいつのまにかこの暖かさが薄れていたのだな、と気がついた。確信に満ちた暖かさというのか、角を矯めるのでない厳しさの中の優しさ。そういう音から、私はほんの少し遠のいていて、しかし、それが私のいまとても欲しい音でもある。おもしろいことにJBLが4343になってから、そういう感じを少しずつ鳴らしはじめた。私が、4341よりも4343の方を好ましく思いはじめたのも、たぶんそのためだろう。もっと齢をとったら、もしかして私もアルテックの懐に飛び込めるのだろうか。それともやはり、私はいつまでも新しい音を追ってゆくのだろうか。
(ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ ALTEC」号より)
     ※
いま読むと、ひじょうに興味深いことを書かれている。
その瀬川先生が、6041をどう評価されていたかは、ステレオサウンド 53号をお読みいただきたい。
手元にその号がないので、引用したいところだが残念ながら無理。

記憶では、レベルコントロールを大胆にいじることが前提だが、かなり高い評価だったはず。

アルテックはModel19、マルチセルラホーンからマンタレーホーンになった604-8Hから、
2ウェイ構成ながら3ウェイ的なレベルコントロールが可能なネットワークになっている。
604-8Hを搭載した620Bに関しても、瀬川先生は、レベルコントロールを積極的にいじることで、
ご自身の音に仕上げられる可能性を感じた、という趣旨の記事を書かれている。
マルチウェイ化にともなう水平・垂直両方向の指向性の不整合に対する解答のひとつが、
同軸ユニットだと私は捉えている。
そして同軸ユニットをうまく使うことが、4ウェイのシステムへの、解答のひとつでもあろう。

4343が日本で爆発的に売れていた時期に、アルテックから6041が登場した。
型番から推測できるように、アルテックの代表的なユニット604を中心にまとめあげた、
同社としては初のワイドレンジ指向のスピーカーである。

JBLが積極的にユニットを開発し、それらを組み合わせて3ウェイ、4ウェイと、
多マルチウェイ・システムを構築しワイドレンジを実現していくのに対して、
アルテックは、小改良をユニットに施すことで、少しずつではあるが確実にレンジを広げてきた。

6041の数年前に登場したアルテックのコンシュマーモデルのModel19とModel15は、
やはりアルテック伝統の2ウェイ構成である。
どちらも、高域用ドライバーに、断面がミカンを輪切りにしたような形を持つフェイズプラグを採用、
さらにネットワークによる周波数コントロールも併せることで、
従来のアルテックの2ウェイ・システムがなだらかに高域が落ちていくのに対して、
20kHzまでほぼフラットを実現するとともに、アルテックならではの高能率もほとんど犠牲にしていない。

厳密に言えば、ネットワークで周波数コントロールを行なっている分、
同様のユニット構成のA7と比較すると、やはり能率は、少しだが下がっている。

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