挑発するディスク(その1)

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黒田先生が、ステレオサウンドの58号(だったと思う)に、
カラヤン指揮のワーグナーのパルジファルのレコードを聴き、
そこにおさめられている音楽・録音に挑発され、
それまでお使いだったコントロールアンプ(ソニーのTA-E88)に対して力不足を感じられ、
マークレビンソンのML7Lに買い替えられたことを書かれている。

ディスクが、聴き手を挑発する。

あるディスクに挑発され、システムの一部、もしくは全体を買い替えることになったとか、
それまでの調整(チューニング)の方向をまるっきり変えてしまうことになったとか、
そういう経験はないだろうか。

私にとっての「挑発するディスク」は、
パブロ・カザルス指揮マールボロ音楽祭管弦楽団によるベートーヴェンの交響曲第7番。

1969年のマールボロ音楽祭のでのライヴ・レコーディングで、
発売はたしか1976年ごろ、
このディスクをはじめて聴いたのは、ステレオサウンドの試聴室で、1983年ごろだった。
サウンドボーイ編集長のO氏に教えてもらって、だ。

それまで使っていたスピーカーはロジャースのPM510。
とても気に入っていたし、手放したいまでも、ふと聴きたくなることもあるが、
カザルスのベートーヴェンに聴かれる、
つよい緊張感、音楽の生命力の漲る感じや尊さが、十分感じられるものの、
やはり基本的にグッド・リプロダクションのスピーカーであり、
ほんとうは、もっともっとヴァイタリティを終始持続した演奏のはずだという思いが、
拭いきれないまま聴いていた。

できれば、部屋に2組のスピーカーを置けるだけの余裕、
それと経済的な余裕があれば、PM510を手放さずにすんだのだが、
ハタチの若造には、どちらも無理なことだった。

そして選んだスピーカーは、シーメンスのコアキシャル・ユニットだ。
これを、サウンドボーイで製作した平面バッフル(縦1.8m×横0.9m)に取りつけ、
6畳弱の部屋に、聳え立たせていた。

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