Date: 4月 25th, 2024
Cate: アナログディスク再生, 世代

アナログディスク再生の一歩目(その6)

高二の時に手に入れたオルトフォンのMC20MKIIと、
オーディオクラフトのヘッドシェル、AS4PLの組合せは、
私にとっての本格的なアナログディスク再生の一歩目と、
いまふりかえってみても、そういえる。

とはいっても、この時、プレーヤーは国産のダイレクトドライヴの普及クラスのモノだった。
もちろん、その上、つまりグレードアップを考えてたりはしていても、
そうそう簡単に、はっきりとグレードアップというかたちとなると、
高校生のアルバイトとこづかいでどうにかできるわけではなかった。

あれこれ、次のステップは──、そんなことを毎日のように思っていた。
あの頃の、ひとつの目標はマイクロの糸ドライヴだった。
RX5000+RY5500に、トーンアームにはオーディオクラフトのAC3000MC、
この組合せが目標だった。

あくまでも目標であって、現実的には、その下のモデルあたりとなるわけだが、
それだってすぐに手が届くわけではなかった。

マイクロの糸ドライヴ型はたしかに目標げあったけれど、
同時に、いつかはEMTというおもいもずっと持っていた。

930stを、いつか手に入れる。
そんなことをおもっている日々が続いていた。
そこに登場したのが、トーレンスの“Reference”だった。

ステレオサウンド 56号の瀬川先生の文章に触れた者、
その時代に読んできた者にとっては、リファレンスは衝撃だったはずだ。

私には、そうとうに大きい衝撃だったし、
別項で触れているように、瀬川先生の熊本に来られた時に、
その音をかなりの時間を聴くことができた。

うちのめされた、とは、この時のことだった。

Date: 4月 24th, 2024
Cate: 老い

老いとオーディオ(音がわかるということ・その7)

その1)を書いたのは2015年だから、九年前。

音の違いがわかる、ということと、音がわかる、ということは決して同じではない、
と九年前はそう思っていた。

いまになって、もう一度考えてみると、同じことだともいえる──、
そうおもうようになってきている。

音の違いがわかる、といっても、それは深い意味での音の違いではなく、
音の差にすぎないからだ。
だから前に聴いた音や聴く順番によって、音の違いがかわってしまう。

そのことをわからずに、音の違いがわかると豪語している人もいる。
つまりは音がわからなければ、本当の意味での音の違いはわからないということだ。

Date: 4月 23rd, 2024
Cate: ディスク/ブック

Codex Glúteo

Codex Glúteo。
日本盤には、
「臀上の音楽 〜 スペイン・ルネッサンス時代のシリアスな尻作春歌集」というタイトルがつけられていた。
帯には、黒田先生の「このスペインの音楽家たちの悪戯は女の人にはきかせられない。」
というコピーがあった。

これだけで、おおよその想像がつくと思う。

1978年ごろのアルバムである。
ちょっと聴いてみたい、と思っても、高校生にとって、
ちょっと聴いてみたいアルバムにこづかいを使えはしなかった。

他にも聴きたい(買いたい)レコードが数多くあったからだ。
いつか聴ける日が来るだろう──、と思いつつも、
この手のレコードは積極的に聴こうとしない限り、
いつかそうなるということはほとんどない、といまでは思っている。

どこかで偶然耳にすることはあったとしても、
それが「臀上の音楽」とは知らずに通りすぎてしまうだけだ。

「臀上の音楽」のことはすっかり忘れていた。
それをたまたまTIDALで見つけた。
MQAで聴ける。

TIDALがなかったら、おそらく一生聴く機会はなかっただろう。

Date: 4月 22nd, 2024
Cate: ハイエンドオーディオ

ハイエンドオーディオ考(その12)

《あまりにも大がかりな装置を鳴らしていると、その仕掛けの大きさに空しさを感じる瞬間があるものだ》、
瀬川先生のことばだ。

空しさを感じない人だけがハイエンドオーディオの道を進んでいけるのか。
空しさを感じるからこそ、埋めよう埋めようと、さらに突き進んでいくのか。

Date: 4月 22nd, 2024
Cate: ショウ雑感

2024年ショウ雑感(その3)

ラ・フォル・ジュルネのウェブサイトを見ていたら、
逸品館が5月3日から5日までの三日間、
東京国際フォーラムのガラス棟G404で、
LFJで体験しよう! ハイエンド・オーディオの世界」というイベントを行うという。

どんな試聴イベントなのかは、
リンク先からさらに逸品館のサイトに行けばPDFでわかる。

応援したくなるような企画だ。

Date: 4月 21st, 2024
Cate: 四季

オーディオと四季

四季豊かな日本といわれていたのは、いつまでなのだろうか。
まだまだそうなのだろうと思うながらも、
四季が二季になりつつある意見も、目にするようになってきて、
そういえるけれど──、といったところもある。

今年も4月に夏日を記録している。
今夏もかなりの猛暑になるのだろうし、その夏が長いのだろう。
冬が短くなり、夏が長くなる。そんなふうになっていくのか。

そしてそれが加速していくのか、それともどこかで転換する時がくるのか。
しばらくは加速していきそうな感じなのだが、そうなったときにオーディオと四季、
音と四季について考えることも消えていってしまうのか。

別項で何度か書いているように、井上先生は四季の変化によって、
聴きたい音も変化していくことを、よくいわれていた。

真夏に、A級アンプや真空管アンプの音はあまり聴きたいと思わないし、
寒くなれば、そういう音を求めるようになるとも。

このことに同意する人もいれば、そんなこと関係ないという人もいる。
これには人それぞれということもあるけれど、
仕事柄ということも関係していたのかもしれない。

井上先生の仕事、オーディオ評論家として、
メーカーの試聴室やオーディオ雑誌の試聴室に行っては、
さまざまな音を聴く。

それは仕事であり、そこに季節感というものはなかったのかもしれない。
だからこそ、よけいにプライベートな音に、四季を感じさせる、
四季と連動していく音を求められていたのかもしれない。

「音楽性」とは(を考えていて思い出したこと・その6)」で書いたことも、
このことには関係してくるのかも──、とも思うようになってきた。
「味わい」と四季についてである。

Date: 4月 20th, 2024
Cate: 再生音

再生音に存在しないもの(その5)

音楽は自由だ──、
そんなことを目にしたり耳にしたりする。
ずっと以前から、いわれてることだ。

音楽は、確かに自由なのだろう。
それでも完全に自由なのか──、ともどこかで思ってしまう。

それでも音楽は自由だ、としよう。
では、その音は自由なのか。
そんなことを考えてしまう。

その音といっても、演奏の場での音、つまり楽器から発せられた音と、
再生の場での音、スピーカーから発せられた音とがある。

どちらの音も自由なのか。

Date: 4月 20th, 2024
Cate: ショウ雑感

2024年ショウ雑感(その2)

ハーベスの輸入元が、
エムプラスコンセプトからサエクコマースに4月1日づけで移管になった。

ハーベスの輸入元がかわる、というウワサは耳にしていたから、
サエクコマースなのか、という程度で驚きはないのだが、
エムプラスコンセプトは、どうなるのか……、とちょっと思ってしまう。

2003年からハーベスだけを取り扱ってきた会社だ。
会社を畳むのだろうか。
そんなことをおもったりするのだが、
サエクコーマスになったことで、OTOTENで聴けるようになるはずだ。

Date: 4月 19th, 2024
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) – 第四夜・Western Electric 757A(オリジナルとレプリカ・その3)

全生新舎の野口晋哉さんの新企画。
アルテックのA5C(マンタレーホーン)をメインスピーカーとする音楽鑑賞会、
“Listening Practice Friday”に行ってきた。

始まるまでの時間、
757Aのエンクロージュアと、そのレプリカのエンクロージュアを叩いてみた。
その音が近いことに、ちょっと驚く。

もちろんまったく同じというわけではないが、けっこう近い。
近いから同じ音、そっくりの音が鳴ってくる──、とは思わないし、
言わないけれど、期待は芽ばえてくる。

レプリカのユニット構成、
ウーファーは不明だが、JBLの2420+2397という中高域からすると、
なんとなくジャズを主に聴くためのシステムかのようにも思えなくもないが、
野口晴哉氏はクラシックが主で、ジャズはほとんど聴かれなかったとも聴いているから、
ジャズのためのシステムではなく、757Aの再現を目指してのシステムなのだろう。

2月、3月、4月のaudio wednesdayでは、
スピーカーシステムがコンデンサー型とリボン型ということで、
部屋を縦長で使っての音出しだったが、
今回は1月と同じように部屋を横長で使う予定でいる。

Date: 4月 18th, 2024
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) – 第四夜・Western Electric 757A(オリジナルとレプリカ・その2)

ウェスターン・エレクトリックの757A。

なぜ757Aが二台(ステレオペア)でないのか。
野口晴哉氏の時代、このスピーカーシステムを二台手に入れるのは、かなり困難だったはず。
1980年代に入ると、ウェスターン・エレクトリックを扱う業者も増え、
アメリカの倉庫や映画館などを捜してまわる人たちも出てきて、
お金さえ積めば二台手に入れることも可能になったことがある。

757Aのペアの音を聴いたことがあるのかときかれれば、一応ある、というふうに答えている。
あるところで聴いてはいる。
でも、757Aの真価をそこで聴いたとはまったく思っていない。

鳴っているのを聴いた、そのレベルであった。
757Aよりも、他のスピーカーユニット、たとえば594A、555を聴く機会のほうが多かった。

野口晴哉氏は、757Aをペアで揃えたかった──、
私は勝手にそう思っている。
でも叶わなかった。

だから757Aのレプリカを作られたのだろう。

野口晴哉氏の真意を知る人は、もう誰もいない。
その音を聴いて探っていくしかない。
探っていきたい。
探っていける音を出していきたい。

Date: 4月 17th, 2024
Cate: Jazz Spirit

月花舎・ハリ書房

2020年12月で閉店した四谷三丁目の喫茶茶会記。
その後、長野県茅野市に移転。
そしてこの4月、東京・神保町に月花舎・ハリ書房をオープン。

ブック・カフェである。
今日、東京駅方面に用事があったので行ってきた。

ビルの一階と二階で、なにかやれそうな、おもしろくなりそうな空間。

オーディオシステムは、JBLの4311がある。

Date: 4月 17th, 2024
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) – 第四夜・Western Electric 757A(オリジナルとレプリカ・その1)

ウェンターン・エレクトリックの2ウェイのスピーカーシステム、757A。
野口晴哉氏のリスニングルームに、一基ある。

その両脇には、JBLのユニットを用いてのレプリカといえる2ウェイのスピーカーシステム。
ホーンは2397、ドライバーは2420。
ウーファーが何かはエンクロージュアを開けてみないと確認できないので、
いまのところ型番は不明。

ネットワークはウーファー用にはオイルコンデンサー、
2420用にはフィルムコンデンサーがあてられていて、
コイルの取りつけ方法は、ウェスターン・エレクトリック的でもある。

5月1日のaudio wednesdayでは、このスピーカーシステムを鳴らす。
昨年5月28日に開催された野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会。
前半はウェスターン・エレクトリックの594Aを中心とした大型のシステムで、
後半は、このJBLの2ウェイ・システムが鳴っていた。

今回は、この2ウェイにスーパートゥイーターを加えて鳴らす予定だ。
エラックの4PI PLUS.2だけでなく、JBLのUT405もある。
どちらにするかは当日の音で判断する。

audio wednesdayでは、必ず最後にカザルスの無伴奏チェロ組曲をかける。
今回も、もちろんかける。
ただしJBLの2ウェイ+スーパートゥイーターではなく、
757Aのコンディション次第では、こちらで鳴らしたい。

バッハの無伴奏チェロ組曲だけでなく、
ルドルフ・ゼルキンとのベートーヴェンのチェロ・ソナタもかけてみたい。

このベートーヴェンのチェロ・ソナタもモノーラルだが、
マイクロフォンにはウェスターン・エレクトリック製が使われている。
録音における音の入り口、
再生における音の出口、
どちらもウェスターン・エレクトリックということになる。

757Aを鳴らしてみれば、
野口晴哉氏の、このスピーカーへのおもいがなにかしらつかめるかもしれない。

Date: 4月 16th, 2024
Cate: 音楽の理解, 音楽性

「音楽性」とは(を考えていて思い出したこと・その6)

レコード芸術の、1980年代後半の名曲名盤で、
ディーリアスの管弦楽曲集のところで、黒田先生が書かれていたことをおもいだす。

黒田先生は、ビーチャム、バルビローリ、マリナーの演奏(録音)に点を入れられていた。
手元に、もうその本はないので正確な引用ではないが、
ビーチャム、バルビローリ、マリナーの順に録音はよくなるが、
演奏の味わいは、録音がよくなっていくことと比例しない──、と。

1980年代はディーリアスの録音は少なかった。
そのなかで、ビーチャム、バルビローリ、マリナーは、
それぞれの時代の代表的な演奏といえたけれど、
黒田先生のいわれたことは、たしかにそうだ、と感じるところがある。

演奏の味わいとは、そのことについて、短いコメントのなかでは説明されていないが、
演奏の味わい、これだけで黒田先生がいわんとされたことは伝わってくる。

ここで、演奏の味わいは、音楽性と置き換えられるのか。

Date: 4月 16th, 2024
Cate: 「オーディオ」考

耳の記憶の集積こそが……(その8)

耳の記憶の集積こそが、音楽に対する「想像と解釈」に深くつながっていく。

Date: 4月 15th, 2024
Cate: 再生音

再生音に存在しないもの(その4)

再生音に存在しないものについて考えるのは、
再生音に必要なものについて考えることでもある。